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vol.462-1(2009年9月18日発行)

滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者

拠りどころを失ったヴェルディ

 サッカーJ2の東京ヴェルディが大変な事態に見舞われている。日本テレビ放送網がクラブの経営から撤退し、「東京ヴェルディホールディングス(HD)株式会社」という持ち株会社に株式が譲渡された。Jリーグ側はHDが示した来年度事業計画のスポンサー料収入5億4000万円の契約を11月16日(翌17日がJリーグ理事会)までに確定させなければ、Jリーグから退会してもらう方針を明らかにした。

 HDは旧・読売クラブのOBたちが設立した会社である。そのOBらが自力で資金調達をしなければならない。期限まであと2カ月しかなく、決して楽観はできないだろう。スポンサーが集まらない場合、クラブが消滅するか、下部リーグで再出発するかの選択を迫られる。

 ヴェルディは読売クラブとして発足した当初からメディア主導のクラブだった。93年のJリーグ発足に向けて読売新聞社、日本テレビ放送網、よみうりランドが出資して「読売日本サッカークラブ」という運営会社を立ち上げた。しかし、Jリーグ加盟をめぐっては、「企業名を名乗れるかどうか」でJリーグの川淵三郎チェアマンと読売新聞社の渡辺恒雄社長が真っ向から対立。結果的に「読売」をクラブ名に入れることはできなかった。

 「地域密着」というJリーグの考えとも隔たりがあった。東京にはJリーグの条件を満たすスタジアムがなかったため、本拠地を川崎市の等々力陸上競技場にすることを決め、川崎市がホームタウンとなった。クラブ名も「ヴェルディ川崎」としたが、2001年、東京都調布市に「東京スタジアム(現・味の素スタジアム)」が完成すると、あっさりとホームタウンを川崎から「東京」に移転した。

 98年シーズンの後は読売新聞社とよみうりランドが経営から退き、クラブ運営会社の名称は「日本テレビフットボールクラブ」となったが、それでも巨大メディアがバックについている点に変わりはなかった。だから、川崎の地元ファンを軽視するかのように本拠地移転が出来たのではないか。

 東京では客足が伸びず、チームの弱体化も進んだ。ここ数年はJ1とJ2を行ったり来たりしている。そして、ついに大きな支えだったメディア企業も退く時がやってきた。日テレを含む読売グループは、成績が上がらないヴェルディにメディア的な価値はなくなったと踏んだのだろう。これではサッカーを使い捨てにしたと言われても仕方がない。

 地域に根付かず、全面的に頼りにしていた企業も去っていった。拠りどころがなくなってしまったヴェルディは今後、だれに向けて自分たちの存在価値を示すのだろうか。「消滅危機」と書く新聞もあるが、カネが集まらないからやめるのではなく、残った「サッカー人」たちが自らの手でクラブを立て直さなければならない。頼るものはない。その気概を示せるかどうかだ。

 15日にJリーグが発表した2008年度のクラブ経営状況では、「J1・J2とも収益状況が悪化し、経常赤字のクラブが前年度の7クラブから13クラブに増加した」とされている。世界同時不況の影響を含め、複合的な要因が重なっている。ヴェルディだけでなく、危機感をJリーグの各クラブが共有するべきだろう。

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