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vol.463-1(2009年9月28日発行)

滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者

「だれが」ではなく、「何を」語るかだ

 2016年夏季五輪の開催地を決める国際オリンピック委員会(IOC)の総会が、いよいよ10月2日に迫ってきた。1カ月前に発表されたIOC評価委員会の報告書を読む限り、南米初の五輪開催をアピールするリオデジャネイロの計画が「非常に質が高い」との高評価を受け、一歩リードという印象が強い。

 五輪招致レースの分析や情報提供を専門とするウェブサイト「GamesBids.com」が9月10日に掲載した「入札指数(Bid Index)」でも、リオがトップに躍り出て、2位はシカゴ。それまでトップだった東京が3位に下がり、4位マドリードというランクが付けられている。さまざまな要因を計算した上で数値化しているとのことだが、過去の招致レースをみても、指数に近い投票結果が導き出されている。

 決定まで1週間を切った今、各都市がだれをコペンハーゲンでのプレゼンテーションに送り込むかという点に関心が集まっているようだ。東京は、自民党が選挙で敗れて頼みにしていた麻生政権が倒れ、期待していた皇太子さまの出席もかなわず、最後の望みを鳩山由紀夫首相に託している状況だ。シカゴがオバマ大統領夫人を含む豪華派遣団を組んだ上、大統領本人の出席の可能性も残されているという。リオはルラ大統領に加え、サッカーの王様、ペレ氏。マドリードはカルロス国王が参加する予定で、各都市の「顔」ばかりに話題が集中している。

 だが、プレゼンテーションに何よりも求められるのは、話の中身だ。本命とみられたパリを破って12年五輪を勝ち取ったロンドンの決め手は、IOC総会があったシンガポールへのブレア首相(当時)の電撃訪問だったと評されることが多い。しかし、その一方で、本当にIOC委員の心を揺さぶったのは、招致委員会を率いた陸上競技の元五輪選手、セバスチャン・コー氏のプレゼンテーションだったとも言われている。コー氏は、さまざまな国の出身者が住むロンドンという都市で、スポーツが次世代を担う子どもたちを結びつけ、活力を与えるか、という話を訴えた。キーワードは「若者」だったとも言えるだろう。強調したのは開催計画書に書かれたスタジアムの規模や、交通の利便性、選手村の快適さではなかったのだ。

 東京はおそらく「環境五輪」を強くアピールするに違いない。鳩山首相が国連気候変動サミットで「2020年までに温室効果ガス25%削減」を表明し、大喝さいを浴びた直後である。それだけに、日本が五輪でも環境問題での先導役に、という論理を展開できる。ただし、そうしたテーマがIOC委員の琴線に触れるかどうか。招致委は太陽光発電や電気自動車など、あらゆる環境対策を立候補ファイルに盛り込んで「カーボンマイナス・オリンピック」と掲げているが、これと「スポーツ」をどういう形で結びつけるのか、まだインパクトに欠けている。

 各都市が「何を」語り、IOC委員がどう動くのか。開催地決定の報は、日本時間3日午前1時半すぎに届く見通しだ。

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