サッカーの日本代表、岡田武史監督にじっくりとインタビューしたのは11年前になる。1998年フランス・ワールドカップ(W杯)に初出場を果たしたが、3戦全敗に終わり、帰国後、辞意を表明。その翌年からコンサドーレ札幌の監督に就任した。取材を申し込んだのは、99年2月、高知・春野で行われた春季キャンプの時だった。
岡田監督は北海道という土地でどんなサッカーをしたいのか、サッカー文化をどう広げていきたいか、といった話を熱心にしてくれた。そして、世界のサッカーを分かりやすい言葉で表現した。 「サッカーのスタイルには国民性が出るんです。たとえば、南米のサッカーは楽しくてリズミカル。ドイツは堅実なサッカーをやるし、(日照時間の少ない)北欧のチームのサッカーはどこか暗いんです」 そんな話だったように記憶している。岡田監督は今回、「日本らしさ」を出そうとしているという。そんなニュースに触れていて、ふと、あの時のインタビューを思い出した。では、「日本らしさ」とは一体何なのか。また、日本人の国民性とは何なのか。 2002年日韓W杯の時、トルシエ監督が求めたのは規律や組織戦術だった。4年後のドイツ大会ではジーコ監督が選手に自由度を与え、選手の自立を求めた。だが、うまくはいかなかった。そして、次のオシム監督は「日本代表を日本化する」という表現を使い、岡田監督もその路線をほぼ継承している。だが、「日本化」した姿が分かりにくい。 21世紀に入って、日本の団体球技で常に言われてきたことは「個の強化」だった。いくら組織で対抗しようとしても、外国勢の技術レベルや戦術研究の精度は上がり、組織だけでは通用しなくなってきたからだ。だが、今回のサッカー日本代表が「個の強化」を重視したチームにはとても見えず、岡田監督が「ハエがたかるように」という言葉を使ったように、群れ、チーム、組織といった部分を大切にしているように映る。 日本代表の組織戦術は、相手に走り勝つ「持久力」をバックボーンとしているそうだ。確かに陸上競技では短距離よりも長距離で日本選手が好成績を収めており、持久力で勝負する、というのは面白い発想かも知れない。しかも酸素の薄い高地で行われる今大会である。ところが、肝心の選手たちの動きを見ていても、とても走り勝つチームには思えない。まして、ボールにたかっていく「ハエ」にも見えない。 彼らは「個の強化が必要」「1対1の局面で勝て」と言われて育ちながら、試合になると組織的な戦い方を植え付けられる。それでは、何が「日本らしさ」なのか分からないのも無理はないだろう。 現代日本の悩みも同様だ。政権が変わり、首相が毎年のように交代する。日本という国はどういう分野を伸ばし、世界の中でどういう役割を果たすのか、しっかりした方向性が見えず、国家が右往左往している。かつての高度経済成長時代、日本の産業界は外国にない独自の技術を世界に向けて発信した。当時、バレーボールや体操で日本が次々と新技を編み出したのと、どこか重なる気もする。そんな独創性こそ、今の日本のスポーツ界が「日本らしさ」として追求すべきことではないか。 |