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vol.543-2(2011年11月16日発行)

滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者

残念な結果に終わった北朝鮮戦

 平壌で行われたサッカーのワールドカップ(W杯)アジア3次予選、北朝鮮−日本戦は残念な結果になった。0−1で日本が敗れたことだけではない。日本の報道陣の平壌入りが大幅に制限されたからだ。近年のサッカー日本代表戦で、これほどメディアが関われなかった試合はない。

 テレビ放映権を持つTBS系列のスタッフを除き、北朝鮮当局に入国が認められた報道陣は共同通信、サッカー専門2誌、Jリーグフォト、フリーランスの計10人(記者6人、カメラマン4人)だけだ。新聞社は、一般紙もスポーツ紙もだれ一人として取材できなかったのである。

 朝日新聞は15日付朝刊スポーツ面に次のような「おことわり」を入れた。
 「15日に平壌で行われる予定のサッカーW杯3次予選、北朝鮮−日本戦で、北朝鮮当局からは日本の報道機関に対し、ごく一部しか取材許可が下りませんでした。これについて、日本新聞協会は国際サッカー連盟などに強く抗議しています。14日に日本代表が平壌入りした後の記事は共同通信の配信ですが、東京運動記者クラブでの合意のもと、記事のクレジットは『日本代表取材団』、写真は『代表撮影』となります」

 われわれ毎日新聞も16日付で「日本代表の平壌入り後の共同通信社による配信記事は、東京運動記者クラブの合意により、クレジットを原則として『日本代表取材団』とします」と掲載した。原則的に、客観的な事実を伝える記事には「日本代表取材団」、主観的な読み物には「共同」のクレジットが入ることになった。

 国交のない国での取材であり、当初から取材許可が下りるかどうかは難題だった。通常、海外での日本代表の試合には100〜200人程度の報道陣が取材に携わるものだが、今回取材申請したのは51人。だが、それさえも大半が拒否された。

 交渉は、当然ながら簡単にはいかなかっただろう。だが、こんな時こそ、「スポーツ外交」の力を発揮できなかったものか、と困難を承知で思う。たとえ国交がなくとも、サッカー界で日本と北朝鮮は国際サッカー連盟(FIFA)に加盟する仲間のはずだ。日本は幅広い視点からの報道がサッカー界の発展につながると強く主張すべきだったし、これほどまでに取材が制限されるのなら、別の国での開催を求めても良かった。FIFAも、北朝鮮で大会を開催するのなら、メディアの受け入れも条件として加えるべきだったのではないか。

 テレビが伝えるスタンドの異様な雰囲気を見ながら、報道すべきことは多々あっただろうに、と感じずにはいられなかった。いろんなジャーナリストがそれぞれの視点、さまざまな角度から北朝鮮戦を現地から伝えていたら・・・。試合から一夜明け、共同通信の配信記事で埋まった紙面を見ながら、その思いを強くする。

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