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100号記念メッセージ

■vol.108 (2002年8月14日発行)

【杉山 茂】 リポート/「障害者とスポーツ」シンポジウム
【糀 正勝】 ヨーロッパの移籍マーケット
【高山奈美】 ハンドボール女子が世界選手権切符逃す
【岡崎満義】 詩歌に表現されたワールドカップ


◇リポート「障害者とスポーツ」シンポジウム
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

障害者スポーツの環境は、日本スポーツそのものの縮図 ― 国際知的障害者スポーツ連盟(INAS-FID)によるサッカーの世界選手権日本大会(現在開催中:参加14カ国、オープン出場2カ国)を記念した国際シンポジウム(パネルディスカッション)が、8月10、11日、横浜で開かれた。

関係者によると、一般公開で2日間にわたるこの手の催しは、なかなか企画されないし、関心も集めにくいそうだ。今回も、参会者はインサイダー中心の感じだったが、障害者スポーツの現況の一面を初めて知った人も少なくなく、今後の拡がりに期待を抱かせた。

私が驚いたのは、パネラーの発言や、テーマ別分科会のリポートを聞いていると、日本のスポーツ界の課題が、そのまま横たわっていることだった。キーワードは「不足」、「欠乏」である。

施設、指導者、大会マネージメント力、トップレベル・愛好レベル両面での資金―。オリンピック強化のためのディスカッションでも、時には、それだけで終始するようなテーマが、ここでも、深刻に持ち出されたのだ。さらに、国内における障害者スポーツ全般への理解が不充分すぎる、という悩みが重なる。

一般のスポーツ施設を利用しようとすると「なにかある(起こる)といけないので」と、やんわり断られてしまうというパネラー(身体障害競技者)の発言は、会場のどよめきを誘った。

パラリンピックなどのたびに飛び交う「感動」「勇気」といった言葉は、その時だけのものなのだろうか。

「そうですよ。あとには、ほとんど何も残らない」。そのパネラーは、こうも言ったものだ。

3度のオリンピック、終ったばかりのワールドカップ‥‥スーパーイベントのたびに「何が残り、何を残せたか」が、空しく議論されるのと、これまた、そっくりである。日本のスポーツの基盤とは、所せん、その程度の薄さなのか。

障害者スポーツ独自の課題も少なくない。

特に、参加資格は、大会のたび、試合のたびに、物議をかもす。シドニー・パラリンピックの男子バスケットボールで、優勝チームが、資格違反の選手を並べていたことが分かり、金メダル返上となった事件は、記憶に新しい。INAS-FIDの幹部は、選手が予選などで、わざと実力を発揮せず、本来の参加クラスを避けて、他のクラスで入賞を狙うケースも、あとを断たない、と話した。

そうした議論の展開のなかで、今回、日本代表チーム監督として日本サッカー協会から派遣された大橋浩司さんが「レクリエーション的視点を捨て、負けて悔しがることを教えた。勝とう!それには、選手一人ひとりの"自立の心"が欠かせない。」と語り、拍手を呼んだ。印象的だった。

障害者スポーツも、やがて、総ての競技で高度化、大衆化の2本の道を敷くことになろう。「自立」とともに日本のスポーツが、いまだに明確さを打ち出せぬテーマだ。

暑さの中での熱い2日間だった―。

※大会公式ホームページはこちら

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◇ヨーロッパの移籍マーケット
(糀 正勝/インター・スポーツ代表)

2002年5月31日にワールドカップが開幕し、熱狂的な大会は6月30日に閉幕した。

中断したJリーグは7月13日に再開され、横浜・磐田が激しい首位争いを演じている。前期優勝は8月17日の最終節までもつれ込みそうである。J2もまた大分、新潟、セ大阪、川崎等が、シーズン44試合という長丁場の中でJ1以上の熾烈な昇格争いを演じている。

ヨーロッパではドイツ・ブンデスリーグ、フランスリーグ、ベルギーリーグ等が開幕した。

中村選手(セリエA)、鈴木選手(ベルギーリーグ)等が新たに海外移籍し、稲本選手(プレミアリーグ)もチームを移籍した。すでに活躍中の中田選手(セリエA)、小野選手(オランダリーグ)を含め、日本人選手の一挙手一投足がそれこそ毎日のスポーツ新聞に賑わいを見せている。

2001年3月にFIFAと密接な関係にあったスポーツ・マーケティング会社ISLが破綻した。更に、2002年4月にW杯のテレビ放映権を保有していたヨーロッパ最大のメディア・グループであるドイツのキルヒ・メディアが破産申請した。W杯開催そのものが危ぶまれたが、2002年W杯は何とか持ちこたえた。

今度はこれと連動した形でヨーロッパの各国リーグや各国クラブの経営に大きな影響が出始めた。放映権バブルがはじけたわけだ。数年前、フィーゴ(60億円)、ジダン(80億円)等の高額な移籍が、ヨーロッパのサッカー・マーケットの話題となった。こうした莫大な移籍金は放映権とチャンピオンズリーグによる高額な収入に支えられてきた。その移籍金の原資である放映権バブルがはじけて、ヨーロッパのクラブ経営は再び厳しい冬の時代を迎えようとしている。

W杯で活躍したイングランド代表のセンターバック、ファーディナンドがプレミアリーグのリーズからマンチェスター・ユナイテッドに56億円の高額で移籍した。多くの関係者は、ワールドカップ・イヤーに相応しい移籍活動がこれから始まると期待した。

しかし、その56億円は移籍マーケットにはほとんど還流しなかった。56億円は新しい選手の移籍には使われず、リーズのメインバンクの銀行口座に収まっただけで、全く動かなかった。通常、ヨーロッパの移籍マーケットは、まずヨーロッパの14ビッグクラブの大型移籍から始まり、続いて、ヨーロッパ各国リーグの上位クラブが連鎖して動き出す。それが終わると中堅クラブが補強に乗り出すという構図であった。

ロナウドの移籍は噂だけで終わった。もちろん、噂だけでも117億円の移籍金はすごい。リバウドは契約期間中にもかかわらず、無償でバルセロナからACミランに移籍した。バルセロナの新監督にオランダ人のファンハールが再就任したからだ。ファンハール監督とリバウドは犬猿の仲だった。この移籍で得をしたのはタダで買ったACミランか、タダで売ったバルセロナかは現時点では不明だ。間違いないのは、リバウドの高額年俸がクラブにとって大きな負担となっていたことだ。

放映権バブルがはじけて、次に放漫経営のクラブが破産する。サッカー界もまた一般社会の経済原則が貫徹されている。そのうちサッカークラブの格付けが必要になるだろう。

こうした状況は、今後の日本人選手の海外移籍をさらに困難にする可能性を示している。

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◇ハンドボール女子が世界選手権切符逃す
(高山奈美/スポーツライター)

7月25日から8月1日の8日間に渡って、2003年にクロアチアで開催されるハンドボール女子世界選手権のアジア予選がカザフスタンで行われた。

結果から言うと、日本は4大会連続で出場していた世界選手権出場を逃した。

韓国、中国、カザフスタン、ウズベキスタン、台湾、トルクメニスタン、そして日本の7カ国中、上位3カ国が出場できるという、決して厳しくはない条件をクリアすることができなかったわけだ。

まず、選手選考の段階で、「おや」と思わざるを得なかった。

シドニーオリンピック予選前に「もはや必要ない」と切り捨てたはずの選手を、今大会で再び呼び戻していたからだ。しかも、理由が情けない。その選手に替わる若手、中堅選手を育てられなかったのである。

育てるべき人材は、少なからずいたはずである。

昨年末にイタリアで行なわれた世界選手権で、日本は大学1年生の長身ポスト選手である谷口を思い切って起用してきた。その活躍は、まだまだスタッフの納得のいくものではなかったにしろ、183cmとヨーロッパ勢に引けを取らない体格を持つ新戦力を、「育てればものになる」と確信したはずだった。実際に「予想以上に動ける」と当時のスタッフの一人は話している。

それがである。このアジア予選では、「基礎がまだ出来ていない」ということで、メンバーに選ばなかったのだ。

では、一体、谷口にいつどうやって基礎を積ませるのか。ただ持っているだけでは谷口に基礎は身につくまい。

谷口はまだ原石である。多少の犠牲を払ってでも、スタッフは、日本ハンドボール界は経験の場を持たせ、実践を踏ませるべきではないのか。もちろん、これは彼女に限ったことではない。

世界選手権の切符がどうしてもほしかったのは分かる。しかし、目先の利益にばかりとらわれて、その先のこと、つまりアテネオリンピックがまったく視野に入らない日本スタッフの度量の小ささには言葉もない。しかも、出場権を逃してしまったのでは、元も子もないだろう。

敗北と反省を繰り返してばかりで、少しも前へ進もうとしない日本ハンドボール女子界には、失望するばかりだ。

8月13日、日本協会が発表した釜山アジア大会の代表者リストにも谷口の名や新進の名は"当然のように"無かった―。

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◇詩歌に表現されたワールドカップ
(岡崎満義/ジャーナリスト)

ワールドカップの熱狂が過ぎ去って40日。草の根歌人・俳人たちはそれをどう表現したのだろうか。新聞各紙(朝日・毎日・読売・産経・日本経済・東京)で目についたものを拾い出してみた。

・キーパーはゴールの柱に寄りかかり 空を仰ぎてやがて崩るる

・サッカーの俄かファンになりたれば 予定番組飛ばし視てゐる

・鬼の顔になりたるごとく睨みつけ グランドに立つゴールキーパー

・一球を奪うプレーのあざやかさ そこだけ磁場が狂ったように

・大試合待ちゐるさいたま競技場 長き庇はそらを区切れり

・ダヴィデいま甦るごとイタリアの 若きがボール蹴る跳ぶ走る

・店に煎る珈琲(まめ)の産地国あまた出る ワールドカップは楽しからずや

・W杯互いの国歌流るるとき 胸じんとして敵味方なし

・これ程に世界を沸かすサッカー戦 世界平和へ一つになろう

・歓声は如何にとどかむ燃えつきて ボールにもたれし「カーン」のこころ

・セネガルの歓喜ゆったりと映しける 敗者フランス報道の真(ヴェリテ)

・ロシア戦勝利したるを分かち合う 知己なき町に夕陽見ており

・帰り来て「日本はどうした」子の訊くは 平和なりけり蹴球のこと

・大音響のニッポン・ニッポン一億が 愛国心の権化となって

・身を捨つるほどの祖国は知らねども 「ニッポン・ニッポン」の叫ぶ輪に入る

・ユニホームぬぎて交換する時に まざまざと見つ骨格の違い

・ドイツでは忿怒で選ぶ仁王立ち ゴールキーパーオリバー・カーン

・決勝進出に湧けるそのとき ドレン数本繋がれ夫はICUに

・W杯に南北統一応援団 われの子二人父祖の地を踏む

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・美しき青芝 うつくしきベッカム

・七変化サッカーボールとなる朝(あした)

・サッカーの芝叩きゆく白雨かな

・逃げ水の逃げ込むサッカースタジアム

・サッカーの観覧席に大西日

・キーパーはポストに凭れ六月逝く

・サッカーと鮎解禁の月明くる

・サポーターの頬の旗まで玉の汗

この4月から、私は漢詩実作教室に月2回通い、七言絶句を作って添削をうけている。クラスメートは20名、平均年齢は70歳前後か。私にはまだできないが、大ベテラン2人がワールドカップをテーマに詩を作っていた。

     観世界足球大会有感 市川泰

     観客如狂耳欲聾     (観客狂うが如く耳ろうせんと欲す)
     唱歌打鼓響天穹     (歌をうたい鼓を打ち天穹に響く)
     国旗翻処彩衣満     (国旗のひるがえるところ彩衣満つ)
     四海平和崩此中     (四海平和このうちにきざさん)

     世界足球杯 江水武夫

     輸贏決処盈電子     (勝ち負けを決するところテレビにみつ)
     攻防自在皆屈指     (攻防自在みな屈指のもの)
     掌中欲獲世界杯     (掌中にW杯をとらんと欲す)
     応知選手心与技     (まさに知るべし選手の心と技)
     奮戦巴西為冠軍     (奮戦したブラジル優勝をなす)
     寰宇祭典終如是     (地球の祭典ついにかくのごとし)

以上の諸作品を読みながらあらためて感ずるのは、テレビの力、ということである。ドイツ代表のゴールキーパーがこれだけ歌われるのは、テレビ中継のクローズアップが再三再四流されたからだろう。

それにしても、得点王のロナウドではなく、ゴールキーパーのカーンに視線が集中しているのは、いかにも専守防衛の日本らしい、と言えるかもしれない。

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