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2005世界フィギュアスケート選手権 女子公式練習 荒川静香(JPN)


(C)photo kishimoto


2005
世界フィギュアスケート選手権
女子公式練習
荒川静香(JPN)

SPORTS IMPACT
  オリジナルGALLERY
(C)photo kishimoto
vol.242-1(2005年 3月16日発行)
賀茂 美則/スポーツライター
  (ルイジアナ発) 

プロ選手にするなら4月生まれ?




岡崎満義/ジャーナリスト
  〜大相撲に期待すること〜
滝口 隆司/毎日新聞運動部
  〜「実業団リーグ」と外国人監督の不満〜
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プロ選手にするなら4月生まれ?
賀茂 美則/スポーツラーター/ルイジアナ発)

 8月、10月、8月、9月、11月・・・去年、次男の野球チームを著者が住むルイジアナ州のリーグに登録していたら、面白いことに気がついた。選手の誕生日を記入するのだが、筆者の次男が1月生まれ、他に3月と6月生まれが一人ずついる以外は、13人中10人が8月から12月生まれなのだ。少しでも高いレベルの野球チームを監督したことがあれば、誰でも気がつくことだという。
 
この問題については以前から、「相対的年齢(relative age)」という概念を用いてスポーツ社会学の研究がなされている。日本風に言えば、「月齢」である。その結果によれば、大リーグの選手も8、9、10 月生まれが圧倒的に多い。同じような傾向は、カナダのホッケーリーグの選手やオーストラリアのサッカー選手にも見られるという。
 
成人した選手に月齢による体力差があるとは思われないので、これは子ども時代の影響によることが明らかである。アメリカの学校は8、9月始まりなの で、8−10月生まれは月齢が高い。さらに全米にいくつかある少年野球組織や少年サッカーの組織は、これまですべて7月31日の誕生日で年齢を制限して きた。つまり、8−10月生まれの子どもたちは、学校においても、野球のリーグにおいても、月齢の点で有利なのだ。
 
月齢の高い子どもたちは小さい頃から「同級生」より身体が大きく、運動能力も平均的に優れている。サッカーにしろ、野球にしろ、他の子どもたちより 上手にできれば自信もつくし、楽しくもなる。周りの大人とて同様で、月齢が違っていることを忘れて、日本の場合で言えば4月生まれの子どもたちを「スポーツが良くできる」とレッテルを貼ることもあるだろう。その反対に「早生まれ」の子どもたちは身体の発達が遅いことで不利を被り、自信をなくし、ス ポーツから離れる、ということが多い。
  
先日、Jリーグに所属する日本人選手たちの誕生日を調べたが、全433選手中、1月から12月までの誕生日の分布は、以下のようであった。1月 =29、以下、19、18、48、54、51、38、37、50、36、30、23の順である。誕生月による分布の偏りは明らかである。2、3月生まれ の選手が37人しかいないのに、4、5月生まれの選手は102人もいる。約3倍である。しかしながら、2003年、日本サッカー協会はナショナルトレセ ンの年齢区分をこれまでの4月1日から国際標準の12月31日とすることにした。この措置によって、1月から3月生まれの選手たちが、一学年下の選手たちと競争することになり、これまで教育の現場で被っていた不利が緩和されることになる。何年か後には1−3月生まれのJリーガーが増えるはずだ。
  
さて、この1月、アメリカの少年野球界に大きなニュースが流れた。アメリカの少年野球はリトルリーグを始めとするいくつかの組織に分かれているが、 これらを統括する組織であるBaseball USAが、年齢区分をこれまで60年近く不文律となっていた7月31日から4月30日に変更する決定を下したのである。大規模な少年野球組織の一つであるUSSSAは抵抗を試み、4月25日に正式決定を下すことになっているが、リトルリーグを始め、変更を決定している他の組織に追随せざるを得まい。年 齢区分の違う組織のトーナメントに出ようとすると、チームメンバーの何人かが資格外となる、ということが起きては困るからだ。
  
年齢区分の変更は、野球のシーズンが4月か5月に始まるので、ここに区切りをもうければ選手の年齢がだいたい同じになる、という理由らしいが、子ど ものことを考えるのなら、1月31日にすべきであった。なぜなら、教育現場の学年区分が7月31日である限り、8−10月生まれの子どもは有利なのだから、そのハンディを帳消しにするのには、半年ずらすのが最良だからである。
  
どんなシステムを作っても、有利な子ども、不利な子どもが生まれるのが世の中の仕組みかも知れない。それでも、スポーツに親しむ子どもたちには、できるだけ平等なシステムを作ってやりたいと思うのである。


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