去る8月1日アシックスの第1四半期決算が発表されたが、好業績を反映し2日、市場は投資家からの買いが殺到668円ストップ高となり出来高35万株を記録した。
株式市場関係ニュースはストップ高を一斉に報じ、長い業績不振に苦しんだ同社の復活にエールを送った。 過去の業績推移を資料によりトレースしてみた。確かに1996年頃300円台をピークに2003年まで100円台付近を推移し、最悪期は80円を切り業界関係筋では危機説も取沙汰される有様であった。 その後2003年より上昇基調になり、年度決算ではミズノを上回る利益をあげ、株式市場が注目、今期は4月より値を上げ続け1日発表の翌日ストップ高を記録したのだ。 同社の発表によれば主力のランニングシューズ販売が昨年より引き続き好調に推移、特に海外市場において大幅な増加となったことなどを挙げている。 「オニツカ・タイガー」ブランドは海外市場においてブランドイメージが高く、特に巨大市場のランニングシューズにおいてはアディダス、ナイキに次ぐ勢いである。
販売ネットも整備されており、今までの市場開拓、投資効果が漸く安定した業績に繋がったものと思われる。 ミズノ対オニツカの競争の歴史を振り返ると、美津濃(当時)絶対優位が続く中で、オニツカは美津濃追撃を目的として毛利元就の3本の矢にヒントを得て同業3社合併を以って新生アシックスとなった。
そして業績拡大路線をひた走った同社であるが、無理な拡大が原因で業績悪化に陥り、目標のミズノからは大きく水を空けられた。その後数次に渉るリストラ、事業統廃合で何とか生き延び息を吹き返し、このところ元気そのものである。 一方のミズノはダウンサイジングからの脱却が未だに果たせず、遂にアシックスに名を成さしめることになった。次に示す指標は今年6月に発表された前期の連結決算内容である。
比較すれば如何に両社の業績が逆転したかを示す公式の数字であることが判る。
| 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期
純利益 | 1株当り 当期純利益 | 売上高
経常利益率 | ミズノ | 143,659 | 5.569 | 5,701 | 3,010 | 23円73銭 | 4.0% |
アシックス | 146,678 | 9,895 | 10,963 | 7,006 | 34円39銭 | 7.5% |
(売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は単位百万円) |
勿論一会計年度だけで判断することは些か早計ではある。 日本のスポーツ用品産業の歴史そのものと言われるミズノが創業100年に及ぶ歴史の中で、売り上げ、利益共他社に追い抜かれたことは過去にデサント全盛の1980年代に数回、そして今回のアシックスと極めて異例の出来事と言えるであろう。 40頁を超える両社の決算報告書を具に読み解くと、経営戦略において様々な特徴が浮き彫りにされており興味が尽きない。
アシックスが市場において独壇場のマラソンシューズのように、このまま快走を続け独走態勢を固めるか?一方ミズノが堅い経営基盤を基に追い上げて首位を奪い、再びアシックスを押さえ込むか?注目されるもう一つの終わりの無いレースは、投資家をも巻き込みながらの展開となりそうである。 |