自宅でCS放送を見ていたら、興味深いことに気がついた。画面では欧州サッカーの試合が流れ、その片隅にチームのロゴのようなものが映し出されている。よく見ると「CHELSEA TV」とある。イングランドのプレミアリーグ、チェルシーが所有するテレビ局のマークなのだ。 放送しているのは、日本のスポーツ専門局「J
SPORTS」。同局ではチェルシーのほか、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナルのイングランド勢に加え、今夏からはスペインの名門、FCバルセロナ(通称バルサ)が独自に所有するテレビ局から放映権を買い、放送を開始している。 昨年、スペインでバルサを取材する機会があった。「バルサTV」というテレビ局をスタートさせるという話が出たばかりだったので、この話題を広報担当者に尋ねてみた。 「すでにマンチェスター・ユナイテッドが始めているし、スペインではレアルマドリードとウチがテレビ局を持つようになった。これからのビジネス戦略の一つだ」と広報担当者は言った。それにしても、バルサの話だけで1日中、番組を作れるのだろうか? という私の問いにはこんな答えが返ってきた。 「テレビで流すのはトップチームの試合だけではない。ユースやジュニアユースの試合だって放送する。特に子どもの試合を放送すると、親が喜んで見るし、相手チームの親や親戚もテレビを見るようになるんだ」 底辺層からつながる育成システムを持ち、多くの競技を包括する総合型スポーツクラブとして知られるFCバルセロナである。サッカー以外にもバスケットやハンドボールなど多くのスポーツチームを抱えているので、番組作りには事欠かないのだという。 ただし、地元密着のテレビ局というわけでもなかった。開局時から海外での放送を視野に入れており、その通り、1年余りで日本のお茶の間にも“上陸”したというわけだ。 7月から始まった日本でのバルサTVではシーズンオフということもあって、今のところ数年前のリーガ・エスパニョーラや欧州チャンピオンズリーグの試合を流している。しかし、たとえ生放送でなくても、コンテンツの拡充に躍起となっているCS放送には魅力的なのだろう。クラブが自らのテレビ局を持ち、豊富な映像コンテンツを海外に売る。そんな手法が欧州サッカーの新たなビジネスになりつつあるのは確かだ。 海外戦略という点でいえば、今夏は欧州サッカークラブの来日が目白押しだった。疲れなのか、手を抜いたのか、レアルマドリードが東京ヴェルディに0−3で完敗するという試合もあったが、勝敗よりもビジネスが優先されるのがシーズンオフの海外遠征。世界をまたにかけながら、彼らは休む間もなく、どん欲に商売を続ける。 |