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国際グランプリ陸上大阪大会2005 女子走幅跳 池田久美子


(C)photo kishimoto


国際グランプリ陸上
大阪大会2005
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池田久美子

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vol.250-1(2005年 5月11日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

「性的連想を与える」応援動作禁止法案

杉山 茂/スポーツプロデューサー
  〜ビーチスポーツは日本に向いている〜

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「性的連想を与える」応援動作禁止法案
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 5月6日の東京新聞夕刊に、面白い外電が載っていた。
 
 「米テキサス州下院は3日、学校のスポーツ大会に際し、チアリーダーとなった女子生徒が『性的連想を与える』応援動作を披露することを規制する法案を、賛成多数で可決した。
 
 法案は、チアリーダーの『刺激的な体の動き』を学校内でどこまで許容するかに関して、州教育当局の基準づくりを認める内容。法案を提出した民主党議員は『12〜18歳の少女による性的に過剰なパフォーマンスを称賛することは尋常ではない』と法案への理解を求めた」
 
 性の解放がもっとも進んでいる国のひとつであるアメリカで、このような抑制策が飛び出してくるところが何とも面白い。何でも規制緩和のお国柄だが、“動くピンナップ”はダメ、というわけだ。
 
 性的なものとファッションは密接に関係している。スポーツの世界もその流れの中にあるのは確かである。
 
 ゴルフの宮里藍選手はショットするたびにヘソが出る、いわゆる“ヘソ出しルック”が有名になったが、これは大方のファンが「かわいい!」と認めて、非難のヤリ玉にあがることはなかった。テニスのシャラポワ選手の“乳首パット”にも、非難は出てこなかった。
 
 このようなスポーツファッションに、ファンが寛容になっているのは、たとえば、女子陸上選手の大半が、ヘソ出しユニフォームを身につけて競技することに、すっかり慣らされて、もはや違和感がなくなったからであろう。従来のふつうのユニフォームと、ヘソ出しユニフォームと、機能的には殆んど差はないと思われるが、むしろこれは選手のファッション感覚の問題だろう。見られることを意識したファッション感覚が、深層心理として働いているのではないか。
 
 ところで、今回の外電を面白いと思ったのは、実は規制の対象になったのが服装、ファッションではなく、チアリーダーの「刺激的な体の動き」であることだ。しかし、これはむずかしい規制だ。服装ならば、露出度は全体の何パーセントにせよ、とかヒザ上何センチまでのミニスカート、というふうに規制することは可能だろうが、「体の動き」が刺激的であるかないかの判断は、見る者の立場、考え方、大げさに言えば人生観によって大いに異なる。45度のお辞儀をせよ、などというものとは質が違うのだ。基準ができたら、ぜひ見てみたいものだ。
 
 「刺激的な」というのは、不自然に、わざとらしい性的な表出、劣情を催させる動き、ということだろうが、では、自然で健康的な性的な表現とは何であろうか。やわらかい体を目一杯に伸ばし、曲げ、開き、縮め、跳ぶ…といった一連の動きは少女たちの特権であり、それを、過剰に性的なパフォーマンスかどうか、という大人の視点で批判することは、殆んど不可能であろう。
 
 そんなことは、法案提案者は百も承知の上で、大人の常識にてらして、ともすれば過激になりがちな女生徒たちの性的パフォーマンスに牽制球を投げた、ということだろう。
 
 反対派の別の民主党議員は、法案が成立すれば「テキサス州市民にとって性的なものとは何か、を警察が決めるような結果になる」と言い、人権団体の代表は「まるでタリバンの発想だ」と強く批判している、とその外電は伝えている。
 
 法律が成立してもしなくても、少女たちの若いパワーはそんなものを吹っ飛ばすだろう。
 
 それにしても、こういう法案を提出することによって、結果的にスポーツと性的なものとの微妙な関係について、多くの人に問題を投げかけるアメリカという国は、やっぱり面白い。せっぱつまった大人の悪あがき、というより大人も含めて若々しい国民性を感じるのだ。


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