8月末、日本ゴルフツアー機構(JGTO)が、社団法人となった。不安定な任意団体から、安定的な社団法人になったのは、大いに意味のあることだ。1999年に生まれたJGTOが、一歩前進したといえる。 JGTOとは、毎週のプロゴルフツアートーナメントに出場するトッププロの集団である。約200人。プロゴルファーは4000人ほどいるから、20分の1、きびしい勝負の世界に生きている男たちの集団である。 今、女子プロゴルフは宮里藍、横峯さくら、諸見里しのぶなど若手の抬頭で、人気は高まっている。逆に男子プロゴルフは、思うように若手が伸びてこず、しばしば外国人選手に優勝をさらわれて、テレビ中継の視聴率も低迷気味である。中学3年生の伊藤涼太選手の出現など、希望もないではないが、全般的にいえば、今はガマンの時期である。彗星のようにスーパースターが出てこないものか、と素人の私は願っている。 社団法人申請の設立趣意書には「・・・スポーツによる国際交流の担い手たる競技スポーツ団体として、スポーツのすばらしさとスポーツによる感動を広くわが国や世界の人々に提供するとの使命をもって、プロゴルフツアーに係る事業を通じて、ゴルフ競技に関する競技水準の向上と競技スポーツの振興に寄与するとともに、子供達をはじめ次代を担う青少年の健全な育成に寄与し、あわせてスポーツ文化の向上を目指して努力するパートナー団体との共生を図り、もって、スポーツ文化の振興と国際社会及び地域社会の繁栄に資することを基本理念として、国民の福祉の増進に貢献しようとするものであります」 長いセンテンスで、意味するところがパッと頭に入ってきにくいが、要するに、世界と交流し、地域の発展につくし、次世代の子供達によきものをバトンタッチしてゆきたい、ということだ。 JGTOの幹部の何人かと話したとき、JGTOはアジアにどのように貢献できるか、という話がでた。EUというヨーロッパ連合が着々と進行中で、たとえば東アジア共同体構想もとりざたされるようになった。しかし、かつて大東亜共栄圏、八紘一宇などのマイナスのイメージが重なってきて、日本に対する警戒心もあり、簡単には進展しない。 アメリカツアー、欧州ツアーに対抗するには、多分、日本ツアーだけでは十分でない。オーストラリア、インドまでを含めたアジアツアーをはっきりイメージしなければならない時代になったのではないか。 ゴルフでアジアの統合、世界の平和、という意識がこれから強まってくるとすれば、これはうれしいことだ。最近、中国の政府・党の要人たちのゴルフ熱は高まる一方だという。これも追い風だ。アジアはひとつ、とは簡単には言えない。アジアはまことに多様である。その多様なアジアをゴルフという世界共通のスポーツで、アジアはひとつ、という意識を耕やしていくのは、まことに魅力的なコンセプトだろう。 アジアのゴルフは捨てたものではない。技術レベルも相当に高い。政治の世界ではなかなか進展しない東アジア共同体構想にかわって、ゴルフというスポーツで、オーストラリアも含めたパン・パシフィック・アジア共同体が実現へのひとつのステップになればすばらしい。JGTOのプロゴルファーたちは、そんな“政治戦士”でもある、といっていいのではないか。そんな気宇壮大な夢を見たいものだ。 |