ア・リーグのペナントレースで、最後の最後まで、宿敵レッドソックスと激しいつばぜり合いを繰りひろげたNYヤンキースが、ついに東地区の優勝を手中にした。 レッドソックスに滅法強い松井秀喜の活躍もあって、まことに気分よく中継を見ることができた。 ところで終盤戦、トーリ監督の采配で目についたのは、しばしば打順をいれかえたことだ。変わらなかったのは、1番のジーターと3番のシェフィールドぐらいだったと思う。 とくに2番打者がよく変わったのが目立った。松井も何試合か2番を打ったが、驚いたのは不動の4番打者と思われたアレックス・ロドリゲスが、2番に起用されたことである。 ロドリゲスは今年、レッドソックスのオルティーズとホームラン王を争ったア・リーグきっての長距離砲である。打順は3番か4番がもっともふさわしいと素人の私は思うのだが、トーリ監督は終盤、首位を走るレッドソックスを追い上げる切り札として、ロドリゲスを2番にすえたのだ。 「調子のいい者を早い打順で使いたかった」と、トーリ監督は、そんなコメントを残している。たしかに、A・ロッドは足もあるから、ときに盗塁も期待される2番打者も、文句なくつとまる。しかし、これまでの2番打者のイメージからは、はるかに遠い。もったいない2番打者、という感じなのだ。 昭和30年代、日本では最強打者は3番か4番か、という論争があった。どちらかと言えば、「4番が最強打者」派が多かったように覚えている。「3番が最強打者」派の1人が、西鉄ライオンズの三原
脩監督であった。 あの頃の西鉄のオーダーは本当に魅力的だった。1番切り込み隊長の高倉から始って、豊田、大下、中西、関口、河野、仰木、和田と並ぶ打線は迫力満点であった。 と書いてきて、ハッと気付いた。日本にも2番豊田がいた。長打力を秘めた向う意気の強い、荒々しい感じの2番打者豊田には、何ともいえない異質の魅力があった。 2番打者はクリーンアップへのつなぎの役目、送りバントがうまく、右方向に上手に打てる打者、足もそこそこに速くなければならない。選球眼がよくて、四死球が多いこと−それが2番打者のイメージである。地味な存在。玄人好みの選手。 V9時代の巨人は、柴田、土井、王、長島、国松、高田、黒江、森という強力打線を組んだが、土井の2番打者のイメージがV9の実績とともに、フアンの脳裏に深く刻みつけられたようだ。すばしこく、小回りのきく巧打者、である。 土井型の2番打者に慣らされた私は、A・ロッドの2番には大いに驚いたが、2番豊田を思い出し、それのさらに進化した姿かと納得した。ジーター、A・ロッド、シェフィールド、ジオンビー、松井、ポサーダ、カノーと並ぶ打線は、たしかに凄みがある。投手のかわりに指名打者が打線に加わるとき、2番打者のイメージが変わるのは当たり前なのかもしれない。 力のある、調子のいい者を前に置く、という一見シンプルな打線は、ひょっとして21世紀型の打線の姿かもしれない。 最近、打率やホームラン数よりも、出塁率を重視するGMが出はじめたようだ。出塁率こそが勝利にもっとも貢献する、というデータがあるのか。 データに裏付けられた2番打者最強打者論を、誰か書いてくれないだろうか。ホワイトソックスの井口も、A・ロッド型の2番打者だと思う。そのあたりもふまえて、新鮮な日米2番打者論がでてくることを期待している。 |