スポーツデザイン研究所
topページへ
topページへ
講演情報へ
オリジナルコラムへ
SPORTS ADVANTAGE
   「批評性」「評論性」「文化性」の視点からスポーツの核心に迫る
最新GALLARY

第20回オリンピック冬季競技大会(2006/トリノ) フィギュアスケート会場 ショートトラック会場


(C)photo kishimoto


第20回オリンピック
冬季競技大会(2006/トリノ)
フィギュアスケート会場
ショートトラック会場

SPORTS IMPACT
  オリジナルGALLERY
(C)photo kishimoto
vol.277-1(2005年11月16日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

鮮やかな「ゼロからの出発」を!!

谷口 源太郎/スポーツジャーナリスト
   〜マネーゲームでプロ野球を喰う人たち〜
筆者プロフィール
バックナンバーリスト
SPORTS ADVANTAGE
無料購読お申し込み
オリジナルコラムを中心に当サイトの更新情報、スポーツ関連講座やシンポジウム開催情報などを無料配信しています。今すぐご登録下さい。
申し込みはこちらから
ホームよりエントリー
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

鮮やかな「ゼロからの出発」を!!
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 最近、「ゼロからの出発」を誓った2人のスポーツ選手―プロゴルフの尾崎将司と、モーグルの里谷多英である。

 尾崎は「ジャンボ」の愛称で親しまれ、男子ツアー最多94勝、55歳7ヶ月の最年長優勝、12回の賞金王・・・と数々のタイトルホルダーだが、今年も6月にマンダムルシードよみうりオープンで、プロ通算1000試合出場という、とてつもない記録を達成している。

 里谷は長野オリンピックでモーグル金メダルをとり、以後、W杯の上位常連となっている美人選手である。

 それがなぜ、2人とも「ゼロからの出発」と言ったのか。大きく報道されたように、尾崎は不動産、ゴルフ事業に失敗、16億円の借金でにっちもさっちも行かなくなり、民事再生手続を裁判所に申請した。

 里谷は今年2月、六本木のクラブで泥酔して男性客と暴れ、店員に暴力をふるい、物を壊したりして警察に連行された。(8月に書類送検)週刊誌で「公然わいせつ」のあばずれ女と報じられ、強化指定A選手も辞退していた。

 ジャンボ尾崎については、1回だけ取材したことがある。デビューしたばかりの昭和46年か47年頃だったと思う。ゴルフ好きの作家・柴田錬三郎さんと尾崎の対談を企画した。

 対談場所の銀座の料亭Mで待っていたが、なかなか姿をあらわさない。外に出てしばらくすると、しかめっ面でやってきた尾崎は、なんてわかりにくい場所なんだ、もう、帰ろうかと思ったよ、とふくれっ面だった。しばらく文句を言いつづけた。ふてぶてしく、怖いもの知らず、傲慢とも思えるほど、声を荒げた。

 しかし、飛ぶ鳥を落とす勢いで勝ちはじめた尾崎は、若さと勢いが全身から溢れていた。オーラが感じられた。向うところ敵なしになりつつあった若者の傲慢は、あっけらかんとして、いっそ気持ちがいいほどのものだった。滅多に出会えるシロモノではない。プロ野球で挫折した若者が、ゴルフという新世界で、新しい栄光をつかもうとしている。この程度の傲慢は、許されるものかもしれない。

 その後のジャンボの快進撃は誰もが知っている。途中いちど、大スランプの時期があったが、それもみごとに克服して、賞金王の座にすわりつづけた。

 ミニゴルフ場つきの豪邸をつくり、尾崎をしたう若いゴルファーたちと、シーズンオフにキャンプを張った。親分肌。しかし、アメリカのトーナメントには弱かった。日本食でなければ力がでない。英語が強くない。英語に強い夫人を持った青木功とは、そこが違った。

 プレー中のくわえ煙草など、マナーの悪さを、しばしば指摘されもした。常勝ジャンボには誰も注意できないようであった。カゲでは非難しても、首に鈴をつける人はなかった。それは尾崎にとって、不幸なことだったであろう。

 ゴルフ規則第1章は「エチケット」である。中の「ゴルフ精神」の一節に、「プレーヤーはみな、どのように競い合っているときでも、そのようなことに関係なく、礼儀正しさとスポーツマンシップを常に示しながら洗練されたマナーで立ちふるまうべきである。これこそが正に、ゴルフ精神である」と書かれている。最強のゴルファーには、最上のゴルフ精神を見たい、と、ファンは思っている。その点がやや欠けていたか。

 「ゼロからのスタートにはなれている。早く(民事再生手続きを)決着して、ゴルフオンリーの人生を歩みたい」「これで純真な気持ちでゴルフに取り組める。強烈なダメージを食らうこともない。これも人生だよ」(11月11日付日刊スポーツ)―その言やよし。ゴルフは紳士がするというより、ゴルフを通して紳士になるスポーツだ、ともいう。「ゴルフの精神」もひっくるめての、「ゼロからの出発」であってほしい。しっかり立ち直るプロセスを見せることも、名選手のつとめかもしれない。尾崎、里谷とも、おみごと!と言わせるような鮮やかな「ゼロからの出発」をみせてほしい。


Copyright (C) Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。 →ご利用条件