ネオ・リベラリズムの世界観が日本にも侵略し、政治、経済、文化など広範囲な分野で影響力を強めている。 プロ野球界でも、オリックス・宮内義彦社長、ソフトバンク・孫正義社長、楽天・三木谷浩史社長などは、その思想を経営理念としている。 また、三木谷氏と新規参入を争ったライブドア・堀江貴文社長や阪神電鉄の大株主になった村上世彰氏(村上ファンド)らも同様である。 村上氏は阪神電鉄の株を大量に買い占めたうえで、「球団の上場」を提案するとともに球団の上場についてファンに是非を問え、と提案し物議をかもした。 「改革か否かを国民に問う」というデマゴギーで衆議院選挙に持ち込んだ小泉純一郎首相と同じ発想、同じやり口を村上氏は狙ったに違いない。メディアも「ファンに問う」という村上氏のデマゴギーに乗っけられているという印象だ。 野球評論家をはじめスポーツマーケティングなどを売り物にしている学者たちのなかには、球団経営の改革や刷新につながるとして、村上提案に賛同する人たちがいる。 愚か、というより、あくどい人たちというしかない。ファンを誤魔化し、操り、マネーゲームに利用しようという魂胆が丸見えだ。 村上氏の「ファンが株主になれば球団との一体感が強まる」というのはまったくの戯れ言だ。株主の利益のために球団を利用する村上氏の発想とファンの心情とは相容れない。 「一体感」などという誤魔化しにファンはだまされない。 球団を上場すれば、暴力団をはじめ得体の知れないマネーが儲けを狙って流れ込み、球団に影響力を持つことは目に見えている。 「野球という産業を伸ばす」と大仰な言い方までしているが、村上氏の狙いはあくまで金儲けでしかない。 一方、三木谷氏は、TBSの株を買い占め筆頭株主になり、「経営統合」を突きつけた。経営統合すれば、三木谷氏は楽天イーグルスに加えて横浜ベイスターズのオーナーにもなりうる。 野球協約上、2チームの所有は禁止されており、三木谷氏は横浜ベイスターズを売却することを考えている、とも報じられた。 いずれにしても、三木谷氏も金儲けしか考えていない。チームが90敗を超す不甲斐ない成績で、ペナントレースの興味を半減させるという多大な損害を与えたことは棚に上げて、球団は何千万円かの黒字だ、と得意げに発表するところなど、マネーゲームの真の堕落を象徴している。球界改革どころか、マネーゲームに食い荒らされないよう防御できるかどうかが、球界存亡をかけた緊急課題になってきた。
★著書:巨人帝国の崩壊 http://www.sportsnetwork.co.jp/shinkansyo/index.html#24
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