右足の痛み、という大きな不安を抱えながらの高橋尚子選手だったが、東京国際女子マラソンで、みごとに優勝、復活ぶりを強く印象づけた。 小出義雄監督の指導をはなれ、チームQを結成して、新たな出発をした高橋選手は、文字通り自立の第1歩を踏み出した。当然、北京オリンピックも視野に入れているだろう。30代に入ったQちゃんが、どんな心身の充実ぶりを見せてくれるか、野口みずき選手とともに、これから大いに期待したい。それにしても、日本の女子マラソンの層の厚さは、スゴイの一言につきる。高橋や野口を追い抜くような新星が、これからも続々出てくるのではないか、と期待はふくらむ一方だ。 ところで、マラソンといえば、11月19日付けの朝日新聞のニュースには大いに驚いた。「フルマラソン走ったよ―園児11人、休み休みで7時間」という記事である。大阪府四条畷(しじょうなわて)市の星子(せいし)幼稚園の5〜6歳児13人が、今月上旬の市民マラソン大会に参加、11人が制限時間の8時間以内にゴールしたというのだ。 5キロごとに独自の給水ポイントをつくり、飲み物やバナナを補給、5〜10分休憩するという走り方で、7時間前後で走りきったそうだ。信じられないような出来事ではないか。 園長の鉄村和夫さん(68)は、もともと陸上の長距離ランナーだった。なんでもないところで転ぶ園児を見て、何とか体力をつけてやりたい、と思ったことから、「毎朝ランニング」が始まった。30年の歴史があるそうだ。鉄村さんは走ることのプロなのだろう。少しずつ距離を伸ばしながら、年長組になると約5キロを走るという。 その延長線上に、フルマラソンがある。'02年7人、'03年10人、'04年4人が制限時間内に完走、今年は11人が完走するという快挙をみせた。 子どもには何と大きな可能性、許容量、柔軟性があるのだろう。年少組から少しずつ「毎朝ランニング」を始めて3年たつと、42.195キロを8時間以内で走り切る子どもが、かなり出てくるのである。唖然とするような事実だ。 これは珍事だ、快挙だ、というだけでなく、医者や心理学者や保育士などでプロジェクトチームをつくり、子どもたちの心身をよく調べて子ども(人間)の可能性と限界についてレポートしてほしい、と思う。 フルマラソンは過重ではないのか。スパルタ教育すぎるのではないか。私にはそういう素朴な疑問がある。毎日走るのは5キロ、フルマラソンは1年に1回だろうが、それは子どもの成長を助けるものか、さまたげるものにならないのか。素人から見ると、やっぱり疑問がでてくる。鉄村園長を疑うのではない。「フルマラソン完走11人」という事実を、よりくわしく科学的にデータをとって、その意義をしっかりしたものにしてもらいたいのである。 |