王者の伝統を引き継ぐのも至難だが、新たに王座へ就くのは、さらに厳しい。 新春を彩る各スポーツのチャンピョンシップで一際輝くのが、全日本女子バスケットボール選手権を制した日本航空(JALラビッツ/1月9日・東京)だ。 シャンソン化粧品、共同石油(日鉱共石―ジャパンエナジーを経て現JOMO)の2強時代が14年間もつづいた。 女子バスケットボール、と言えば、この2チーム以外の名を思い出すことがないままに流れた年月である。 両者は、今年も準決勝へ進出、星をつぶし合い、勝ち上がったシャンソンを日本航空が破った。 2強と他チームの差を、関係者もファンも、長い間、「選手補強の差」と割り切っていた。 日本航空は、25年前から、「ラビッツ」のニックネームを付け、強化へ乗り出したが、トップゾーンに立つには、質量ともに充分ではなく、下部リーグへ転落したこともある。 仕事とスポーツの“両立”という古典的な理念が競技だけの社員を迎えることを拒んだのだ。 フルタイムの環境がなければ、とするチームスポーツの風潮のなかで、この優勝は、問いかけるものが多い。 見逃せないのは、会社(企業)の中枢の理解と支持を得てチームが活動している点だ。 チームを持つからには強くなければ、勝たなくては、とする流れは、不況のたびにいわゆる「実業団スポーツ」の底を、揺るがした。 会社にとって、スポーツチームを持つ意義さえ確立されていれば、勝敗や順位などは二の次になる。不況に見舞われ整理の対象にもならない。 優勝メンバーのうち何人かは、国内線の客室乗務員、と言うのも話題性があるが、今、女子のチームスポーツの有力選手は、スパーマーケットの売り場に立ったり、工場のローテーションに加わったりしている人は少なくない。 世界的にも、女子の本格的なプロは、けして多くない。個人系スポーツとは異なる面でもある。 社員選手という日本の「実業団」は、ヨーロッパなどで関心が持たれはじめている。 日本航空が、このあと内外で、どのような評価を得るのか、興味深いテーマではないだろうか―。 |