ワールドシリーズ(アメリカ)のテレビ画面に新しいアングルが考案され、話題をよんでいる。 バッターボックス(ホームプレート)とピッチャーズマウンドのグラウンドレベルに超小型カメラを埋めこみ、投球と打撃の“一瞬”を下からあおるように映し出そうとする狙いだ。 シリーズの映像を制作するアメリカのネットワーク「FOX」が登場させたもので、内野フィールドにちなんで「ダイヤモンド・カム」と洒落た愛称がつけられている。 初めてこのカメラが用いられたのは昨年7月のオールスター・ゲーム。 この試合は、今回、第3戦からの舞台となったヒューストンのミニッツメイド・パークで行われており、「ダイヤモンド・カム」は、ヒューストン・アストロズとともに、シカゴを廻って“がい旋”してきたことになる。 テレビのスポーツ中継は、ベースボール(ワールドシリーズ)に限らず、オリンピック、ワールドカップ、スーパーボウルといった世界最高イベントのたびに、担当するテレビ局が満を持して、“新兵器”を持ち出してくる。 スタンドからの平面的な映像に、いかに立体感を折りこむかのアイデアなのだが、そのポジション(カメラ位置)は、空間か地面、あるいは競技者への装着というあたりに現時点では限られてくる。 カメラそのものの小型化、無線送信化によって、アーチェリーの的の中央部分に挿しこんだり、アテネ・オリンピック(04年8月)では、競泳のコースロープに小型自動カメラを付け、レースを追う迫力あるシーンの制作が試みられた。 「ダイヤモンド・カム」は、今回は3台(3ヶ所)が備えられているが、日本でも、ベースの下に埋めて、ランナーの“足”を見せようとしたことがある。 もっとも、これらの映像は、競技自体の展開からすれば、一種のアクセサリーで、多用は難しい。 むしろ、送り手側の意図をはかりかねるような映像も多い。 今回も(第3戦までで)、目を奪われるようなシーンには乏しく、このあと、ベースボール中継の新しいポイントに重用されるかどうかは、首をひねらせる。 この手法で、リピート演出として評価が高いのは、アイスホッケーのゴール内部に据えた小型カメラ映像だ。ゴールキーパーの動きが加わると、テレビならではの“情報”にふくらむ。 アクセサリーは、本体の印象を薄めてはいけない。地味で渋い輝きが身上だ。 一連のカメラワークも同じことが言えるが、どのようなアクセサリーに出会えるかも、大きな楽しみだ。 ビッグイベントのテレビ中継は、勝負以外の興味も、また多い―。
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