ラグビーの日本選手権に唯一のクラブチームが出場した。全国クラブ大会を制した「タマリバクラブ」である。チーム名の由来が面白い。発足当初、多摩川沿いのグラウンドで練習していたので「タマ・リバー」。さらにラグビー愛好者の「溜まり場」になりたい、との思いがある。1回戦で学生王者の早大に5―59で敗れたが、試合後の記者会見ではクラブチームの気概があふれ出た。
「私たちは、会社に勤めながらもラグビーをやりたいという仲間たちが本気で作ったチームです。企業チームがダメになってクラブ化したところもあるが、それとは違う。日本選手権にクラブが出る意義はあるのか、という声もあります、でも、私たちは本気で勝ちに行ったつもりです」
チームディレクターを務める中竹竜ニさん(31)は「本気」という言葉を繰り返した。設立は2000年。部員数は約80人で、メンバーは商社やテレビ局、建設会社、保険会社などに勤めるサラリーマンが中心だ。中にはフリーターや大学院生もいる。企業チームや強豪大学に比べれば、練習量はきわめて少ない。それでも中竹さんは「環境を言い訳にしないのが鉄則です」と言い切った。
ラグビー界では、クラブチームが日本選手権に参加することを疑問視する声がある。今回は出場8チーム。内訳は、トップリーグ上位4チームと来季からトップリーグに昇格するサニックス、全国大学選手権の決勝を争った早大と関東学院大、そしてタマリバクラブだ。リーグ5位だった神戸製鋼や8位に終わったかつての王者、サントリーは出場できなかった。実力差を考えると、クラブチームの参加是非論も出てくるわけだ。
しかし、と考えたくなる。クラブチームに門戸を閉ざすことは、草の根の愛好者からつながる底辺層とトップ層を切り離すことになりはしないか。
今、高校や大学を出た途端、多くの選手たちはそれまで親しんできたスポーツに別れを告げなければならない。企業スポーツの間口は狭くなり、スポーツを続けたくてもやる場がない。働きながら、本格的に競技も続けたい。そうした「中間層」の受け皿をどうするのか。議論は少ない。
昨年12月に全国5カ所で行われた野球の四国独立リーグのトライアウトには1100人を超える応募があり、11月に開幕するバスケットのbjリーグのトライアウトにも最終的に627人の選手が申し込んできたという。プロやトップの企業チームから誘いがかからない「中間層」の人たちといっていい。
底辺といえば、競技団体の目は子どもたちに行きがちだ。しかし、「溜まり場」を作ってスポーツに情熱を傾けたい青年や大人たちが大勢いる。タマリバクラブがそのことを教えてくれた気がする。 |