日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が、再び五輪を日本に招致したいという意向を明らかにした。4月から3期目に入る竹田会長は、評議員会で「国際総合競技会の招致を積極的に進めたい」と今後の方針を述べ、五輪の招致か、と尋ねる報道陣の質問にこう答えたのだ。
「夏季五輪は最短なら2016年大会となるが、最近は1回の立候補で招致に成功する例は少ない。20年大会で招致を勝ち取れればと考えている。それが現実的だろう」
08年大会は北京、12年大会はニューヨーク、パリ、ロンドン、モスクワ、マドリードの世界に名だたる5都市が立候補しており、日本が名乗りを挙げられるのは16年大会以降となる。そこで、20年をターゲットにしているというわけだ。
以前、国際オリンピック委員会(IOC)の関係者を取材した時、「そろそろ日本も手を挙げていいのではないか。東京五輪から40年も経っているんだから」と言われたことがある。12年の立候補都市を見れば分かるように、現在の夏季五輪は巨大都市でなければ招致できないほどの規模になっている。
国内では20年に向けてすでに動き出しているところもある。北海道の自民党議員が招致を求め、「20年五輪招致研究会」という組織を結成しているという。だが、その「狙い」を聞くといささかがっかりとさせられる。
地元の報道によると、15年度末に新青森と新函館を結ぶ北海道新幹線が完成する予定。これを札幌まで延伸させるための切り札として夏季五輪を招致したいのだという。
言葉は悪いが、またも「土建屋」発想の五輪招致なのだろうか。98年長野冬季五輪でも長野新幹線や志賀高原へとつながる幹線道路の整備が進められた。それが当時のJOC名誉会長、堤義明氏のビジネスと密接な関係があったことは周知の通りだ。
もちろん、インフラ整備は地元に大きなメリットをもたらすが、五輪の開催にはやはりスポーツの発展を中心に置いた理念がなければならない。自民党北海道支部連合会の会長は橋本聖子さんなのだから、本気で招致に乗り出すのなら「スポーツ色」を前面に押し出してほしいものだ。72年の札幌冬季五輪は、日本に冬季スポーツが根づく基盤を作った。しかし、長野五輪で何が残ったか、と聞かれて胸を張って誇れるものはない。
招致に失敗すれば、それは自治体に大きな負担を残す。08年大阪五輪招致のために、どれだけの税金が費やされたか。行政側も慎重に考えなければならない。 |