東京・秩父宮で行われたラグビーのスーパーカップ。日本対カナダの決勝が行われた後、一人の外国人が記者会見場に現れた。かつて神戸製鋼のロックとして日本選手権7連覇に貢献したマーク・イーガン氏である。国際ラグビー機構(IRB)の役員として6年ぶりに来日したのだという。
「セカンド・ティアをどう強くするか。それを考えるのが私の役割です」とイーガン氏は話し始めた。ティア(tier)という言葉には層とか列という意味がある。
IRBでは第1、第2ティアといった具合に実力に応じて各国をグループ分けし、国際試合の組み方などを検討している。 第1ティアを形成するのは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、フランス、イタリアの北半球6カ国・地域と、南半球の豪州、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチンの4カ国。合わせて10カ国・地域となる
第2ティアは、今回のスーパーカップに出場した日本、カナダ、米国、ルーマニアに、フィジー、トンガ、サモアを加えた7カ国で構成される。
IRBで「ヘッド・オブ・ラグビー・サービス」の肩書きを持つイーガン氏の仕事は、第2ティアのレベルを引き上げ、第1ティアとの実力差を縮めることだ。目的はラグビーの世界的な発展にある。
日本の最大の問題は何か? その質問にイーガン氏はまず「それぞれの国にいろんな問題がある。たとえば、フィジー、トンガ、サモアは施設整備が遅れている。ルーマニアは多くのトップ選手がフランスに流出しているという点が挙げられるだろう」と答えた。そして、日本を次のように評した。
「日本には伝統があり、13万人の競技人口を有している。おカネもあるし、ファンも多い。しかし、あえて言うなら、高校、大学、社会人の連携ができていない。一貫して選手を強化・育成していく構造がない」
さらにこんな指摘をした。「豪州ではトップ選手が年間30試合をこなす。イングランドは35〜40試合、フランスは42試合だ。それに比べ、日本は20試合程度に過ぎない。十分とはいえないだろう。もっと競った試合で多くの経験を積む必要がある」
03−04年シーズンから始まったトップリーグは、こうした問題を意識して創設されたはずだった。それまで東日本、関西、西日本(九州)に分かれて行われていた社会人のリーグ戦を、全国リーグにすることで、トップ層の強化を目指した。しかし、それでも世界の強豪国に比べれば不十分というわけだ。
90年代後半から強豪国はテレビ放映権マネーをバックにプロ化に踏み切った。そうして選手は競技のみに専念できる環境の下でレベルアップしていったのだ。日本協会は「世界8強進出対策会議」という組織も発足させたが、トップリーグが実業団の域を出ない中で、いまだ世界トップとの差を埋めきれていない。
外国人が見た日本の指摘は興味深い。外国人コーチを招聘する競技団体も増えてきたが、強化のマネジメントにもそんな人材が入ってくれば、閉塞気味の日本のスポーツ界に一石を投じてくれるのでは、などと考えてしまう。 |