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vol.256-1(2005年 6月22日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部

楽観できない野球の五輪存続


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 〜野茂英雄、日米通算200勝を喜ぶ〜

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楽観できない野球の五輪存続
滝口 隆司/毎日新聞運動部)

 五輪実施競技の見直しが行われる国際オリンピック委員会(IOC)のシンガポール総会が迫ってきた。総会は7月6日から4日間の日程で行われ、競技見直しの投票は8日に予定されている。

 手続きからおさらいしたい。まずは現在の28競技に対する投票が行われ、過半数を得ると存続、達しない場合は除外が決まる。投票結果は他競技の投票行動に影響を与えないため、全競技が終了後に公表される。

 除外競技が決まると、次は空いた枠分の追加競技の手続きに入る。今回、新採用候補に挙がっているのがゴルフ、ラグビー、空手、スカッシュ、ローラースケートの5競技。その中から、理事会が投票にかける競技を選び、総会で3分の2以上の得票があれば採用となる。

 2年前のメキシコ総会では、野球、ソフトボール、近代五種の3競技が除外の対象となったが、結論は見送られた。今回はIOCが「現行28競技は過半数を得れば存続」との方針を示したことで、存続派には楽観論が広がっている。果たしてそうか。

 今月13日、IOCのプログラム委員会が、28競技と新採用候補の5競技に関する報告書を発表した。そこで気になるのは、野球への記述である。

 「IBAF(国際野球連盟)はMLB(米大リーグ機構)とMLBPA(選手会か)との間で、トッププレーヤーを五輪、五輪予選に出場させる合意を確保できなかった」と報告書は指摘している。IBAFは08年北京五輪で準決勝と決勝に限って大リーガーを出場させ、MLBもその期間はシーズンを中断するという方針を打ち出し、報告書もそうした点に触れている。

 しかし、2試合だけトッププレーヤーを出場させるという方法でIOC委員の理解を得られるだろうか。そうなれば、全体の出場登録選手数を増やさなければならない。それは五輪の肥大化を抑制する今回の見直し論議に反することになるだろう。

 その他の野球への記述でも「会場コストは高く、最近の五輪では2会場が使われている。それが遺産として残るのは、野球に関心のある限られた国に過ぎない」「202のNOC(国内オリンピック委員会)のうち、野球連盟があるのは110」と世界的普及度が低いことも暗にほのめかしている。

 こうした指摘を読んでいくと、「本当に野球は五輪に残るのか」という疑念は消えない。MLBがトッププロ選手による国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック」を来年3月に開催すると発表したばかり。それが五輪以上に価値を持つ野球界最大の大会になることは明らかだ。

 2012年夏季五輪の招致レースでは、パリやロンドンに比べ、ニューヨークが形勢不利にも見える。さまざまな状況を総合して考えると、まだ野球が存続の「安全圏」にいるとは思えない。秘密投票というのも、結論を見えなくさせている。


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