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ワールドカップバイアスロン2005 女子15Km個人追い抜き 田中珠美


(C)photo kishimoto


ワールドカップ
バイアスロン2005
女子15Km個人追い抜き
田中珠美

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vol.281-1(2005年12月14日発行)
岡 邦行/ルポライター

もうひとりの“ミスター・サブマリン”

杉山 茂/スポーツプロデューサー
   〜孤独の強さが描く影〜
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岡崎 満義/ジャーナリスト
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もうひとりの“ミスター・サブマリン”
岡 邦行/ルポライター)

 12月9日、来春3月初旬から開催される野球の国別対抗戦である「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」に参戦する“王ジャパン”、日本代表チームのメンバー29選手が発表された。メンバーの内訳は投手13人、捕手3人、内野手8人、外野手5人の29選手。ホワイトソックスの井口資仁とマリナーズのイチローが選ばれているため、近いうちにヤンキースの松井秀喜もメンバー入りすると思われる。できれば来季からマリナーズでプレーする捕手の城島健司もメンバー入りして欲しい。

 メンバー29選手を見て腑に落ちないのは、阪神の赤星憲広と今岡誠、オリックスの谷佳知、中日の岩瀬仁紀と川上憲伸、福留孝介、井端弘和たちが外れていることだ。早い話が、在籍する球団側のエゴでもって主力選手を推薦しなかったのだろう。

 “球界構造改革”がキーワードの今年は、“野球維新元年”といわれた。それなのに、日本プロ野球界のコミッショナーを筆頭としたお偉方は何を考えているのか。チームの優勝のみを考え、ファンを無視している。オリンピックの正式種目から野球が外された今、国際大会で上位入賞を狙うにはベストメンバーで臨むべきではないか。

 そんな怒りを覚える中で唯一、ファンを納得させたのは日本一のロッテの姿勢だろう。なにせ太っ腹にもエースの清水直行と渡辺俊介、小林宏之たち投手5人と捕手の里崎智也、内野手の西岡剛と今江敏晃の計8選手を日本代表メンバーに送り出しているからだ。

 そして、私がもっとも注目したのは、日本代表チームを率いる王貞治監督の発言だった。

 「日本的な野球の特長を出せる選手、足とか特長を持った選手を中心に選考した」といい、日本代表チームのエースにロッテのサブマリン投手である渡辺俊介を指名したからだ。王監督同様に私も、海外のチームにはほとんどいないと思われる地上約10センチの高さから投球するサブマリンの渡辺俊介が“秘密兵器”になると考えている。

 今年の5月末。渡辺俊介が活躍し、スポーツ紙を賑わしている頃だった。私は“サブマリン”という言葉で遠い日を思いだした。それというのも私の頭の中には、昭和34年10月の日本シリーズで巨人を相手に4連投4連勝の離れ技を演じた南海のサブマリン投手・杉浦忠の勇姿が刻み込まれていたからだ。ブラウン管を通して杉浦の投法を観たとき、思わず私は叫んだ。

 「ソフトボールとは違う野球なのに、なんで下から投げるんだ!」

 あの日から46年の星霜を経ている。しかし、少年時代の憧憬からだろう。私は、渡辺俊介の活躍が報じられるにつれて「ミスター・サブマリン!」のタイトルで書いてみたいと考えた。

 さっそく取材を開始した。そこで出会ったのが、社会人野球の名門・日産自動車のエースの宮田仁さんだった。宮田さんこそがアマチュア界の「ミスター・サブマリン!」だった。さらに私を驚かせたのは、宮田さんと渡辺俊介は、同じ國學院大学野球部出身であり、2年先輩である宮田さんをお手本に渡辺俊介は大学時代にサブマリン投法をマスターしていたのだ。

 宮田仁。野球ファンなら、この名前を知っているだろう。神奈川県横浜市立の桜丘高校から國學院大学に入学。東都大学野球では2部リーグながらエースとして26勝21敗の成績を残し、97年春に日産自動車に入社した。

 そんな宮田さんが、野球ファンにその名を知らしめたのはルーキーイヤーの97年夏だった。日本代表チームに選出された宮田さんは、松下電器の建山義紀(現・日本ハム)や明治大の川上憲伸(現・中日)、大阪体育大の上原浩治(現・巨人)たちとともにスペインのバルセロナで開催された第13回インターコンチネンタルカップ野球大会に出場。強国キューバの8連覇を阻止し、73年イタリアでの第1回大会以来、2度目のインターコンチネンタルカップを制する活躍をみせたのだった。

 横浜市旭区市沢町にある日産自動車野球部グラウンド。隣接する合宿所で練習後に宮田さんは、私の取材に応じた。

 「当時、日本が優勝するには国際大会負け知らずの143連勝中のキューバに勝たなければならない。そのために私が“キューバ対策”として代表選手に選ばれたと思う。下手投げのサブマリン投手は海外にはほとんどいませんからね。予選リーグではキューバ打線に打ち込まれましたが、決勝では抑えることができました。キューバとの決勝戦では巨人の上原君が先発し、5回まで3安打に抑え8対0とリードしていたんですが、6回でしたね。リナレスに本塁打を打たれ、さらにワンアウト一、二塁のピンチのときに私に登板がまわってきた。結果的に最後まで投げきって抑えることができた。当時は金属バットだったため甘い球は絶対に打たれますからね。1球1球、丁寧にコースをついて投げた・・・」

 終始、宮田さんは、柔和な表情を崩さずに語ってくれた。そして、つづけていった。

 「今でも俊介とはときおり電話で話している。俊介が注目されれば、サブマリンで投げたいという野球少年も出てくる。正直、俊介の活躍は嬉しい。私は、現役を引退したら指導者になりたいという思いもあるしね。そのときにサブマリンのアンダースロー投手がいなければ指導したくともできない・・・」

 この夏。私は宮田さんのピッチングに魅せられた。

 オーバーハンド投手と比べてアンダーハンド投手は、球速もないうえに球種が少ないためリズムよく投球することが鉄則だ。もちろん、コントロールのよさも求められる。打者をピッチングカウントに追い込み、決め球を投げなければならない。宮田さんは、渡辺俊介と同様に地上すれすれの地点でボールをリリース。真っ直ぐを主体にスライダー、シンカーを巧みに投げ分けていた。

 来春の3月初旬にWBCは開催される。プロ野球界の「ミスター・サブマリン!」である渡辺俊介は、日本代表チームのエースとして王監督に指名された。そのことを一番喜んでいるのは「もうひとりのミスター・サブマリン!」の宮田仁さんだ、と。そう私は思う。


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