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vol.267-1(2005年 9月 7日発行)
佐藤 次郎/スポーツライター

高校球界は危機感を持て


杉山 茂/スポーツプロデューサー
  〜長良川で流れた「世界記録」〜
岡崎満義/ジャーナリスト
  〜もう一度、高校野球の暴力問題〜
滝口 隆司/毎日新聞運動部
  〜NOMOクの優勝にみるクラブスポーツ〜
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高校球界は危機感を持て
佐藤 次郎/スポーツライター)

 高校野球が大揺れに揺れた夏の終わりに、こう思わずにはいられない。あの国民的人気にあぐらをかいて、高校球界は何もしてこなかったのではないか。

 高校野球、ことに甲子園大会の人気はいっこうに衰えない。アイドル的な選手でも出てくれば、テレビが放っておかず、注目度はさらに上がる。しかし、ひと皮むけば、夏の大会をはさんで、3年前の覇者と、夏連覇を果たしたばかりの優勝校でそろって不祥事が発覚するという体たらくだ。これはまさに危機的状況といわねばならない。

 今回は暴力の相変わらずの横行が指摘されたが、問題はもちろんそれだけではない。暴力にしろなんにしろ、それを生み出す体質そのもの、また、それをずっと放置してきたことが一番の問題であるのは考えないでもわかる。これを正すのはそれこそ容易ではないだろう。しかし、これまでと同じように何もしないままでいれば、あれほど隆盛を誇った甲子園大会も急速に色あせていきかねない。

 とにかく無理があるのだ。入学する前から有望な選手のスカウト合戦を繰り広げ、それでは足りずに他府県から大勢の選手を呼び寄せ、学生生活などそっちのけでプロのような強化をする。100人を超える大人数を野球部に抱えて競争をさせれば、トラブルも起きよう。卒業後の進路などをめぐって金銭授受があるという話もよく聞く状況だ。そうして勝つことだけを考えていれば、さまざまなゆがみが出てくるのは避けられない。当然、暴力も横行するだろう。また、そうした不祥事が頻発すれば、匿名の投書や電話という形での足の引っ張り合いも激しくなるだろう。有力校、強豪校の世界というものの体質は、そうして定まってしまったのである。

 それに対して、高野連をはじめとする高校球界は何をしてきたのか。人気の沸騰をいいことに、発覚した不祥事の処分をするだけで、問題の体質そのものはそのままにしてきたのではないか。

 もちろん、大半の指導者や選手たちは、そうした体質とは無縁だ。しかし、一般のファンが注目するのは、甲子園に出てくるような有力チームのことになる。ゆがんだ体質に、大なり小なりかかわりを持つチームである。今回のように不祥事が相次ぐようであれば、甲子園大会も高校野球そのものも、たちまちこれまでの人気を失ってしまうに違いない。

 いまこそ高校球界は危機感を持つべきだ。高校野球は、甲子園大会はこれでいいのか。変えていかねばならないのなら、どんな方向に進むべきか。そのためには、まず何から具体的に始めていくべきなのか。まずは関係者みなが声をあげ、問題点をオープンに論じることから、すべては始まる。その口火は当然のことながら高野連が切るべきだろう。高野連会長には、まず高野連なりのグランドデザインを示してもらいたい。

 もし、なんの論議も起きず、改革の具体策も出ず、いままでのままの状態が続くなら―。人気や注目度は遠からず落ちていく。衰退の道が始まる。今回のように何度も繰り返して裏の面を見せつけられれば、いくら熱心なファンでもそっぽを向く。

 多くの選手のまっすぐな情熱のことに、高校球界のリーダーたちは思いをいたすべきだ。そうすれば、遅まきながら自分たちの義務がなんであるかを悟るだろう。


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