昨夏のプロ野球騒動がもたらした副産物に硬式クラブの活性化があるような気がする。 76回目を迎える「都市対抗大会」地区予選の参加チームに、それと分かる名がいつもより多い。 プロの両リーグが、ようやく“地域密着”に本腰をいれ、球団としての自立に目覚める(これは?つきだが・・・)なかで、町のチームとして、硬式クラブへの興味が高まったのは面白い。 企業にすがりついていた社会人球界が、激しく揺れたのも見逃せないが、今さら、活動の休止や縮少を並べたところで意味はなかろう。簡単には復元しないのだ。 となると、クラブでも、東京ドームの屋根ぐらいはのぞけることになる。 高校チームが4000以上もひしめくのに卒業した3年生は、プロ・社会人・大学で硬球を握らないかぎり、ベースボールを楽しみたいと望めば軟式の世界。この流れを誰も不思議に感じなかった。 大衆的な硬式のステージが成年層に用意されなかったのは、高校を1区切りにして、芽を摘んでしまう日本のスポーツの典型ともいえる。 それが思わぬ事態で、硬式の“競技年令”を延ばした。新たな競技者層も生れた。 「四国リーグ」も、この風に乗った動きといえる。 プロであれ、ノンプロであれ「野球国」と胸を張るなら、とうに、この手の試みは、各地で展開されていてよかったのだ。 硬式クラブは、企業チームが乗り出してくるまでは、結構、地域のフアンをつかんでいた。函館オーシャン、新潟コンマーシャル、金港クラブ(横浜)などは、全国区の知名度を誇りにしていた。 企業チームに、郷土芸能を帯同させて“都市対抗色”を打ち出したところで、地元のスポーツどころか、地元のベースボール活動にさえ活気をもたらすものではなかった。 野球場は、ほかのスポーツ施設に比べれば地の利のよい所に建てられているケースが多い。 そこを本拠に、地域の硬式クラブを設け、オールドタイマーの軟式、女子チーム、少年チームなどを付属して多世代型クラブを目指せば、サッカーの背なかばかりを見ないですもう。 クラブの運営資金調達に、セ・パ両リーグ全球団が支援試合を組むようになれば、しめたものだ。アメリカ流興行ばかりを追うのではなく、ベースボールも、ヨーロッパ型の感覚を取り入れてみてはどうか―。
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