近代5種競技(Modern Pentathlon)のオリンピック残留が決まった(7月8日、国際オリンピック委員会〜IOC〜総会)。 ベースボール、ソフトボールとともに、3年前、ジャック・ロゲIOC会長が2008年の北京オリンピックから除外を提案していた競技である。 日本ではなじみが薄く、1964年の東京オリンピックでは、日本の組織委員会が、当初は実施競技(プログラム)からはずしていたが、IOC総会で追加された。 今回も、日本のスポーツ関係者は、あまり強い関心を払っていないような気がしたが、6月下旬来日していたヨーロッパ放送界の1人は、「ベースボール、ソフトボールに比べれば、近代5種競技の継続は、はるかに可能性が高い。」と言っていた。 余談になるが、別の1人は「12年の開催地にニューヨークが選ばれてもベースボールとソフトボールは楽観できない」と現行28競技安泰の情報に首をかしげていたものだ。 それは、ヨーロッパにおけるオリンピック競技を見る目、でもあった。 5種競技は古代オリンピックからの歴史を継ぐ。当時は走り幅とび、やり投げ、200ヤード競争、円盤投げ、レスリング(格闘技)の5種目で、勝者は最強のアスリートと呼ばれる。 近代オリンピックでは、1912年のストックホルム大会から実施された。思いついたのはピエール・ド・クーベルタン(近代オリンピックの創始者)で、ストックホルム大会から採用するため、スウェーデンの軍隊スポーツ連盟に実施案を依頼している。 それが、現代の射撃(エアピストル)、フェンシング(エペ)、競泳(200m自由形)、馬術(障害飛越)、ランニング(3000m)の原型で、エリート色が濃いとも、軍隊カラーが強すぎるとも言われてきた。 除外候補とされる理由は、別にもあった。なかでも、1日1種目、5日間をかける日程は、トライアスロン(水泳と自転車、ランニングのロードレース)の半日に比べれば、悠長すぎたし、何よりテレビ中継に手間がかかりすぎたのだ。 国際近代5種連合(UIPM、1948年創立)は、敏感に対応、アトランタオリンピックからは、ランニング以外の4種目を1日でこなし、チーム(3名)戦も撤廃、順位の決定もテレビを見ていて分かり易く変えた。 それでも、存続を揺さぶられたのだが、大衆化を狙った「チャレンジ近代5種」などのニューイベントの開発や、競泳・ランニングだけの短縮種目にも力を入れて、"新生"を打ち出した。 女子競技を加えたシドニーオリンピックでは、同じ会場を使ったベースボールの決勝戦よりも観衆が多かったとか、アテネオリンピックでは2日間とも満員、だのとプラス要素を、現代的にアピールし、その合い間に「クーベルタン発想のスポーツ・・・」とさりげなく伝統を掲げた。 ヨーロッパ勢が力を持つIOCで、この展開は、充分に継続へ手応えがあったとみていい。 UIPMは今、「5つの輪、5つの大陸、5つの種目・・・近代5種こそオリンピックのシンボルというべきスポーツだ」と誇らしげである―。 |