サッカー・J2チームを持つ「湘南ベルマーレ」に女子のソフトボールチームが加わった。まずは日本リーグのデンソーを退社した組島千登美監督、アトランタ、シドニー両五輪の日本代表である名遊撃手、安藤美佐子ら4選手が入り、3月6日に行うトライアウトで数名を加えてチームを結成するという。
総合型のクラブを目指す湘南ベルマーレは、サッカー以外にビーチバレー、トライアスロンのチームを持っており、ソフトボールは4競技目になる。ただし、組織はサッカーの「株式会社湘南ベルマーレフットボールクラブ」と、その他の「特定非営利活動(NPO)法人湘南ベルマーレスポーツクラブ」に分かれている。
サッカーでの収入はサッカーのみに使われ、ビーチバレーとトライアスロンにはスポーツ振興活動に対するJリーグの補助金と独自に獲得した賞金やスポンサー料があてられてきた。
「ソフトボールはザスパ草津方式にしたい」とクラブの真壁潔理事長が語っている。Jリーグ昇格を果たしたザスパ草津は、選手が地元の温泉などで働きながら、競技に取り組んできた。団体球技は経費がかかる。このため、湘南のソフトボールチームも神奈川県厚木市の企業とタイアップして選手を雇用してもらい、午後3時ごろまで仕事をした後、練習する予定だ。チームの運営費はNPO法人への補助金やスポンサー収入でまかなうという。
競技に専念できるわけではない。仕事との兼ね合い、十分とはいえない生活費……。競技環境は厳しくなるだろう。しかし、企業スポーツが衰退した今、この「ザスパ方式」はセミプロ的な社会人スポーツの一つのスタイルになっていくのかも知れない。
34歳。引退しても不思議ではない年齢に達した安藤は「このまま辞めるのも悔しかったし、何かもっとできるんじゃないかと思った」と話す。太陽誘電、松下電工、デンソーで計16年間プレーしてきた安藤は、さらなる新しい挑戦に意欲を見せている。
何かもっとできるんじゃないか。それは単に好成績を残すことだけではないはずだ。企業への依存から脱却したスポーツ界には、その知恵が求められている。
厚木市はソフトボール熱が高く、市内に約100チームが存在している。市もグラウンドの提供など支援に積極的だ。逆にチームは地元に対して何を還元できるのか。彼女たちの戦いは4月10日の全日本クラブ選手権神奈川県予選から始まる。湘南から新しい風を吹かせてほしいものだ。 |