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vol.241-1(2005年 3月 9日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部

石毛宏典さんの野球教室


杉山 茂/スポーツプロデューサー
   〜「福原愛プロ」の高校総体出場承認が描くもの〜
岡崎 満義/ジャーナリスト
   〜宮里藍選手の大活躍を見て〜
 ―逆に、男子選手はなぜ振るわないのか―

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石毛宏典さんの野球教室
滝口 隆司/毎日新聞運動部)

 日曜日の夜、仕事を終えて帰宅すると、少年野球チームに入っている小学校5年生の息子が「きょう、石毛という人に野球を教えてもらったよ」と声を弾ませてきた。「どんな人だか知ってるのか」と聞くと「オリックスの監督だった人なんでしょ」。ティーバッティングの指導をしてもらったという息子の興奮はしばらくおさまらなかった。
 
 石毛宏典さんをインタビューしたのは、昨年の秋だった。四国の独立リーグ旗揚げを発表した少し後のことだ。四国と東京を行き来する多忙な日々。そのわずかな時間を割いてもらった。
 
 独立リーグ発想の原点は、米国コーチ留学時代にある。西武で現役を終えた翌年の98年、渡米した石毛さんは、米国の独立リーグでプレーする日本人選手に出会ったのだという。日本ではプロにも社会人にも大学にも行けなかった選手だった。「バットとグラブとスパイクだけ持ってね。日本にもこんなリーグがあれば、若者が救われると思ったんですよ」と振り返った。
 
 独立リーグの名称も「四国アイランドリーグ」と決まり、4月29日開幕に向けて、着々と準備が進んでいる。トライアウトもすでに終了した。選手の年齢制限を17歳から24歳までと定め、あくまで若手育成の場という位置付けだ。もちろんビジネスとして成立させなければならない。しかし、石毛さんは「プロ退団者を受け入れないのは、客寄せパンダにしたくないからです」と話してくれた。
 
 野球は企業チームの撤退が際立って多い。1960年代に200を超えた企業チームは今、約80チームにまで減っている。スポーツ界全体の底辺のやせ細りを心配する声は少なくない。しかし、実際に行動を起こす人はそうはいない。競技団体に設けられている普及委員会とて、全国をまたにかけて活動するのは簡単ではないだろう。予算もかかる。最も地道で大変な作業なのだ。
 
 独立リーグ開幕まで2カ月を切り、準備作業は佳境を迎えているはずだ。私は千葉県に住んでいるのだが、そんな石毛さんが、四国以外の地方にも出向き、小学生に野球を教えているのがうれしい。
 
 息子がもらってきたビニールのバッグには「NTTドコモ野球教室」とあった。NTTドコモ四国が独立リーグのスポンサーという縁なのだろう。バブル崩壊後、社会貢献を口にする企業もめっきり減った。が、NTTドコモは社会貢献活動の一環として、少年向けの野球やサッカー教室を続けている。息子によると、NTTの野球部員たちも石毛さんとともに野球教室の指導に加わっていたそうだ。
 
 バットとグラブとスパイクだけ―。石毛さんは米国で野球の純粋精神に触れ、それを今、行動に移している。「石毛さんの投げた球をこうやって打ち返したら、よし、いいぞと言ってもらって握手してくれたんだよ」。スイングのまねをしながら語る息子にとっても、きっと忘れられない一日になるに違いない。


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