我が国は世界一の少子高齢化社会へ突入し、国家の存亡に関わる重大事であることは今や国民の間で共通認識となりつつある。 その大きなうねりを受け大学経営問題が大きくクローズアップされ、昨年来文部科学省及び私学振興事業団は、有識者による研究会の設置や経営困難と判断される大学に対する救済策について検討に着手したと報じられている。 こうした動きの中で、生き残りを図るため、大学は学部再編を活発化させており、一部スポーツ系学部、学科の急増という形で表面化している。 昨年11月末に開催された日本体育学会(筑波大)において関連する研究発表が行われたが、佐藤勝弘教授(新潟医療福祉大学)は発表の中で問題提起を行った。 急増の理由として大学の経営危機、少子化、大学急増を挙げており、設置手続きが認可から届出制になり安易となったこと、スポーツの好ましいイメージの利用、現在の教養体育人材、施設、研究を利用できるなどの背景を指摘している。 更に課題として、1.教員の質を確保する、2.関連資格取得、3.スポーツ産業向け進路開拓、4.体育・スポーツ分野の職域拡大などを提起した。 同氏の指摘を待つまでもなく、スポーツ関連学部、学科の急増は急ピッチで進んでおり、大学HPのフロントページで大々的にPRが行われているのが実情だ。 更に大学は今、単に学士資格を得るに留まらず、各種資格取得を看板にしていると言っても過言ではない有様だ。そして就職への最短距離であるがごとき表現が目に着く。
大学の専門学校現象である。 大学において学問としてスポーツ系がより注目を浴び、志望者が増えることは大いに歓迎すべきことであり、スポーツが生活必需品としてより身近な存在となっている証であろう。 長い間、競技スポーツ指導者としての教員養成がメインと位置づけられてきた我が国では、見るスポーツの振興や、生涯スポーツの普及が進むにつれて、単に指導者のみならず、スポーツ活動を創造する、企画する、運営することがクローズアップされ、人材が必要となっている。 また競技団体やチームの運営においてもマネジメント能力が必須とされ、旧来の人材ではついていけなくなっている。 佐藤氏が指摘されている安易な設置という危惧は感じるものの、社会の要請に応える人材の養成機関として大学がスポーツ系学問の領域を拡大し、必要な教育を施す意義は大きいものがある。 経営、法律、医科学などの基礎知識を学び、スポーツマインドが旺盛な大学生が活躍出来る場を拡大することを期待したい。 そして、それらの実現に際して大学として一定レベルの教育が保障されなければならないことは当然であり、更には経営が安定していることが何よりも求められるであろう。
関係者はそのことを強く認識して教育を実行して欲しい。 |