日本ハムを自由契約になった入来裕作投手がMLBのニューヨーク・メッツに入団することになった。彼の祈願成就はご同慶の至りと申し上げたい。 入来選手については、拙書「プロ野球は崩壊する!」(朝日新聞社、2004年4月発行)で取り上げた。彼は、2003年末、読売ジャイアンツ(巨人)から日本ハムファイターズにトレードされた。彼が巨人との契約交渉を代理人に委ねることを希望したことと、かねてよりポスティング制度を利用してMLB入りを希望していたことが、トレードの背景にあると噂された。 入来選手は1997年に巨人に入団した。2003年までの7年間の通算記録を見ると、登板試合数173、579イニング3分の1、27勝24敗3セーブ、打たれた安打512本、奪った三振213個、自責点229、防御率3.56、実績から判断する限り、他を圧倒するような格別な力や技があるとは思えないが、入来は入団早々からMLB入りに対する強い思いがあった。MLBに対する憧れがポスティング希望になり、巨人がそれを忌避したのだ。 巨人在籍中、2003年は登板機会が無く、日本ハムに移った後も、入来は華々しい活躍を見せていない。入来にとってフリーエージェント(FA)の資格を取るまでにはまだ相当長い期間を必要としており、MLBに挑戦するにはポスティングの制度を利用せざるを得ないのだ。だが、今回、入来は日本ハムから自由契約選手になり、その上で、MLB球団と交渉を重ねた結果がメッツ入りに繋がった。 *
ポスティング制度: 日米間にポスティング・システム(入札制度)が設けられたのは1998年。 イチローのメジャー移籍前に改革された。入札によって移籍球団が決定するので、希望通りの球団が選手に保証されないが、MLB入りをFA資格取得以前に叶えることができる。FA移籍と異なり、日本の球団はMLB球団から移籍金を取得できる。 入来の執念恐るべし。彼がメッツで活躍することを期待したい。彼が活躍すれば、イチローや松井秀喜レベルは難しいとしても、入来に出来ることが俺に出来ないわけがないと、日本人選手のMLB行きが更に増えるだろう。入来に関するニュースは小さな扱いだったが、入来のメッツ入団は日本のプロ野球に強烈なボディ・ブローを打ち込んだ気がしてならない。ごく普通の選手までもがMLB行きを表明することになるだろうし、新人選手もポスティングによるMLB行きを入団条件にしかねないからだ。 もしかしたら、プロ野球構造改革が入来のメッツ入団で推進されるかも知れない。そうなれば良いのだが。 |