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100号記念メッセージ

■vol.106 (2002年7月31日発行)

【杉山 茂】 苦肉の「日本協会直属」代表選手
【早瀬利之】 全英オープン丸山茂樹、大漁を逃すもメジャー優勝は近い。
【谷口源太郎】 民主的ルールを軽視するスポーツ組織
【高山奈美】 選手が一番の犠牲者
【市川一夫】 早稲田大学とアディダスとの契約 〜日本で初の試み〜


◇苦肉の「日本協会直属」代表選手
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

男子バスケットボールの日本代表に高橋マイケルが“復帰”する模様だ。

高橋は、3年前のシドニー・オリンピック予選(福岡)で代表入りしたスター選手。

27歳。まだ老(ふ)けこむには早く、当然の“復帰”だが、その所属が「日本バスケットボール協会」(JABBA)というところに注目が集まる。

高橋はこれまで「いすゞ自動車」で活躍していたが、チームが解散したあと、移籍先が決まらないまま、フリーとなってアメリカに帰っていた。

彼の攻専力を欠いては、日本チームの威力は減り、7月28日まで国内で行われていたスペインとの国際試合も3連敗、改めて“高橋の存在”の大きさが問われ、9月韓国の釜山市のアジア大会代表へ加えよう、となったという。条件がまとまれば“GO”になる。

とは云え、組織内の登録資格を持たぬ選手をノミネートするわけにはいかない。そこで、“JABBA直属”という異例の手、苦肉の策が採られた。

企業チームの相次ぐ撤退で、一般クラブへの移籍やフリー転向を余儀なくされるトッププレイヤーが増え、高橋のケースとは異なるがハンドボール男子全日本の主力、田場裕也も最近の国際試合には「日本ハンドボール協会所属」を名乗って参戦している。

ラグビー全日本も、国際活動期間は、選手を所属チームから切り離して日本ラグビーフットボール協会が預かり、協会から休業補償を支払う新形式を試みている。

「協会直属競技者」など、数年前までは考えつかなかったが、トップレベルを長い間、企業依存、大学・高校だのみにしてきたツケがまわってきたといえる。

これを機会に、在野の逸材や有能タレントに腕を揮う場を与えるのは、中央組織のノン・アマチュアだけではなく、地方組織も、県や市町村単位の「協会直営チーム」を設けてはどうか。

地域密着というと、市民スポーツ系と思いがちだが、チャンピオンスポーツ系をトップに据えた「Jリーグ型」は大いに推進されるべきだ。

その時、カギになるのは協会の資金力。マーケティング、マネージメントの基盤が、どこまで整っているか、である。

充分な“戦略”がなく、目先の強化だけで濫(らん)用しては、協会なり、連盟なりが財政破綻する危うさもつきまとう。

課題の多い「スポーツ新時代」といえる―。

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◇全英オープン丸山茂樹、大漁を逃すもメジャー優勝は近い。
(早瀬利之/作家)

今年の全英オープンは、タイガーウッズの年間グランドスラムへの第3のハードルがかかった試合だった。

しかしながら、初日、2日の予選ラウンドでスコアが伸びず、また3日目の風と雨に自滅した。風のない初日と2日で10アンダーは出せたはずだが、同伴プレーヤーの丸山茂樹のスマイルにリズムを崩し、タイガーらしさのない全英だった。

丸山茂樹は初日、2日とも3アンダーの68、トータル6アンダーと伸ばしてトップタイに立った。しかし、3日目の風と雨と寒さで大崩れし、なんとか2アンダーに踏みとどまった。最終日は前半でこの日4アンダーの32、一時、トータル6アンダーまで伸ばしてトップに立った。

しかし、「これは優勝できるぞ」と思った10番ホールで3パットのボギーを叩く。この後、13番までリズムを崩し、スウィングをしてもなめらかさがなくなった。メジャー戦の怖さで、意識したとたんに、体が動かなくなった。それでも、16、17番で連続バーディーを決めて5アンダーと伸ばした。

だが、1打及ばず、プレーオフに加われなかった。丸山がプレーオフに加わっていたら、間違いなく勝っている。それぐらい実力をつけていた。

今回は日本選手9名が参戦。5人が本戦に進んだ。丸山の5位タイは、1982年の倉本昌弘の4位には及ばなかったが、内容的には丸山の5位タイが高く評価できる。優勝したアーニー・エルスらとはジュニア時代から戦った仲だっただけに、プレッシャーは少ないという環境が好材料だった。

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◇民主的ルールを軽視するスポーツ組織
(谷口源太郎/スポーツジャーナリスト)

サッカーワールドカップの総括さえ行われていないにもかかわらず、サッカー界は先走って日本サッカー協会やJリーグのトップ人事や次期日本代表監督を決めた。

ワールドカップ後の一連の動きでもっとも目立ったのは、サッカー協会にしろ、Jリーグにしろ、組織原則がまったくない、ということだ。

たとえ、組織のトップに抜きん出た実力者がいたとしても、その人物だけに組織運営を委ねてはならない。組織はあくまでも執行機関としての理事会や決議機関としての評議員会などによる民主的な討議を保証しなければならない。サッカー協会やJリーグでも、そうした機関を設けて組織としてのタテマエは整えている。しかし、それらを実際に機能させているとはとてもいえない。

たとえば、サッカー協会副会長の川淵三郎氏が岡野俊一郎会長を差し置いて、ジーコ氏を次期日本代表監督に決められるのか。岡野氏の後任としてサッカー協会の会長になるのは間違いなかったにしても川淵氏の行動は組織原則を明らかに踏み外している。「だれにも批判させない」といわんばかりの川淵氏の独断専行は、傲岸不遜といわざるを得まい。

同時に川淵氏の行動を組織内で議論しない(あるいは議論できない)理事会にも問題がある。組織のトップに不可欠なのは、組織において民主的ルールの原則を最大限生かすことである。民主主義とは、手間も時間もかかり、むだも多い。しかし、そのすべての過程を通して合意を形成していくところにこそ組織の存在意義があるのだ。

民主主義をタテマエだけの飾り物にして形骸化させてしまった組織は、かならず荒廃や腐敗を招く。サッカー協会は、財団法人としてサッカー選手の登録料をはじめ国からの補助金や企業から協賛金などを得ており社会的責任のあるのは明確だ。その責任を果たす意味からも民主的ルールによる組織運営の透明化を徹底しなければならない。

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◇選手が一番の犠牲者
(高山奈美/スポーツライター)

7月16日から19日まで、東京の代々木第二体育館を舞台にテコンドーのワールドカップが開催された。

日本は岡本依子がシドニーオリンピックの銅メダルに引き続き、今大会でも銀メダルを獲得する戦績をおさめるなど、ワールドクラスの選手を擁することを世界にアピールした。

本来ならば、今秋、釜山で開催されるアジア大会は、岡本が初の金メダルを狙うのに、最高の舞台となるはずである。

ところが、新聞各紙でも既に報じられている通り、現時点でテコンドーのアジア大会派遣は見送られている。

理由は日本テコンドー連盟の内紛だ。日本オリンピック委員会(JOC)関係者の話によると、連盟内で2つの派閥に完全分裂し、機能が麻痺してしまっているという。

対立は根深く、JOC側から再三「組織の一本化」を要請されながらも互いに一歩も譲らずここまで来ている。

アジア大会派遣は、内紛の解決、つまり組織の一本化によりJOCの許可が降りる。その最終のデッドラインが8月10日と迫っているが、一向に両派が歩み寄る気配はない。

連盟関係者には、一番の犠牲者となるのが選手たちであることをもう一度思い出してほしいものである。選手のための組織であるはずの連盟が、選手の足を引っ張ってどうするというのだ。

内紛の長期化は、有望な選手の将来をダメにするだけでなく、競技自体のイメージを悪くし、支持層の減少を招くことにもなるだろう。

岡本をはじめ、ワールドカップに出場した日本選手団は異口同音に連盟に対する不信感と怒りをあらわにしている。最終決定の期日が迫っているだけに、早急の和解が待たれる。

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◇早稲田大学とアディダスとの契約
〜日本で初の試み〜
(市川一夫/スポーツライター)

ナイキと世界各地でシェア競争を展開しているグローバル企業アディダスの日本法人であるアディダス・ジャパンは日本を代表する大学スポーツの雄、早稲田大学と包括的な契約を結んだと発表した。

流石、マスコミ、特に運動部に多くのOBを有する同大学だけに全国紙が記事にするほどの反響で、仕掛人の大学関係者と同社は思惑通りと喜んだと言われている。

欧米では古くから行われていて珍しい事では無いが、日本初、特に近年低迷気味の往年の覇者早稲田大学だけにニュースバリューがあったようだ。

契約金額は当然公表されていないが年間1億円程度と推測されている。
同社は契約金の代価として、運動部を活用し用品用具、ウエア等の商品開発協力を得て、各部が同社製ウエア、用具類を使用することによりブランドの効果的な露出を狙う。

大学は契約金を活用し有力選手の獲得、奨学金、競技力向上対策、優秀なコーチングスタッフのリクルート等、多方面に活用することが考えられる。

関係筋によれば、早稲田スポーツを代表するラグビー部関係者と同社が接近し、この契約を推進したと言われている。

早稲田の宿敵慶応義塾はラグビー重点で大学選手権を制し、組織的なマネージメントを導入、展開し、着実な成果を得ているが、早稲田は偉大なOBの声が強く、新しい手法を導入するに至らなかったが、大学全体が1社と独占的に契約するという試みは名門早稲田復活に賭ける関係者の熱い思いが強く感じられる。

勿論、実績が挙がらなければ、有力OB連から叱責が飛ぶであろうことは容易に想像が出来るが、総長自らが強い早稲田復活のリーダーシップを発揮しているので、低迷気味の大学スポーツに新たな刺激を与えることが期待される。

アディダス社は日本国内でのマーケットシェアはサッカーを除き、ミズノ、アシックス、ヨネックス、ナイキの後塵を拝しており、後発として思い切った手法で上位各社のシェア切り崩しを目論んでいるものと思われる。特に、マーケットリーダーである大学生の競技者層へのブランド浸透に効果を求めるであろう。

さて、カレッジスポーツの先進国米国ではどのような仕組みとなっているか、述べて見よう。

ナイキの創業者、フィル・ナイトの母校、州立オレゴン大は同社から年間20億円以上(関係者の話)の寄付を受け、ナイキ一色に塗りつぶされている。

大学のキャンパスを訪れた際、大学内のコープに一歩足を踏み入れれば、ナイキのあらゆる製品で埋め尽くされている光景に出くわすのである。

さらに、全ての大学が自分達のロゴ、マスコットをプリントした生活用品まで含めたマーチャンダイズを展開しているのは壮観である。

早稲田大学も同じような展開が出来れば、アディダス社にとって文字通り投資目的を達成したことになるだろう。また、その成否は大学スポーツ界へ少なからず影響を及ぼすことが予想される。

何れにせよスポーツ関係者や業界にとり、注目に価する契約発表であった。

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