この時期、帰省ラッシュで交通機関はどこもマヒ状態である。田舎がクローズアップされる数少ない行事である。昔のように重たい荷物をかかえた風景はさすがに少なくなった。反面、親に孫を見せに行く子供連れの家族が目立つ。田舎では親戚や友人との挨拶に終止し、慌ただしいつかの間の正月休みになる。田舎は高齢化が進み、過疎になり空き家が増えている。高齢の親を都会に呼んで共同で住む例も増えている。ますます田舎はさびしくなる。
今年、内閣府の調査で地域再生問題をアンケートしていた。その中で「自分が住んでいる地域は元気があるかないか」で元気がないと感じた人は44%で「ある」と感じた人より圧倒的に多かった。地方でなぜ元気がなくなったかの理由に、1.子供、若者が減少した(59%)、2.中心街がさびれた(51%)、3.地場産業が衰退した(39%)であった。このままではますますさびしい田舎になっていく。
都会では少子化で子供が少なくなる。わざわざラッシュのなか田舎に帰る必要性が少なくなる。10年から20年後の12月の暮れの帰省の風景も変わるのではないだろうか。一方このところ田舎に住みたい人が増えている。絶対数は少ないが徐々に話題が広がっている。連合が今年調査した資料に「ふるさとで暮らしたいか」の質問で田舎で暮らしたい40.3%、(思わない33.8%)と多く、特に50代では42%の人が希望している。この田舎で暮らしたい現象は過去からいくつかの変遷をみた。
・都会の消耗型の激しい文化に背をむけた芸術家が田舎に新しい価値を求めた時期
・都市の地価高騰に対して田舎で家を持ち暮らしたいという住宅事情に動いた時期
・バブル経済の崩壊後、リストラなどの影響で田舎に戻らざるを得ないなどの事情
・女性や弱者の方が食の安全の問題や環境の問題で体に気をつかいクリーンな場所を求めて田舎へ住む
などの社会背景が中心で田舎へ移動した人たちがいた。しかし現在の動向はちょっと違う。上記の文化性の違い、経済設計の都合ではなく、新しいライフスタイルとしていくつかの課題を抱合した統合的な動きである。特徴的には自分だけの欲求を達成するのではなく、その地域の人と共に働き、共に生きる、自分の持っている何かを地元へ役立てたい、地域の人と交流をしたい、そして自分も食材をつくり、子供の教育を考え、趣味を活かし、環境や健康に気を配るスローな生活を志向していく。
先の内閣府の地域再生の調査でもこれからの地域再生の主役は誰かの質問に対して、住民自身である48%、地域の自治体である38%、国である18%。特に都会から来た人たちはこの意識が高い。これらの新田舎ぐらしの人たちは定住ではなく、都会にも家をもち、いったりきたりの往来型を希望する人も多く、季節や自分の事情にあわせて選択するパターンである。
2007年から団塊世代が定年をむかえる。2020年には4人に1人、2050年には3人に1人の本格的高齢社会になる。元気のなくなった地方自治と気力があり元気が残っている団塊世代定年組とを合体することにより、双方が活性化し、ハッピーになる図が描けないだろうか。
経済産業省は平成18年度の予算編成の中に、新産業創造戦略としてサービス政策(サービス産業創出支援事業)を提案し、概算要求をおこなった。この支援事業は2003年に経済財政諮問会議で政策が決定したのを受け、2004年に7分野の事業支援を行った。地域サービス産業の革新として、地域再生のための健康サービス分野、集客交流分野に独自の魅力をもった付加価値の高い事業を求めた。この支援事業は、複数の事業主が連携・協働する「コンソーシアム」型の体制組織に委託事業があてられる。
2005年は総額35.5億円が支援された。応募は健康サービス分野142件。採用は基盤整備事業(1億〜2億)8件、機能強化事業(3000万)8件、調査事業(500万)19件だった。
また集客交流サービス分野は応募232件、採用は基盤整備事業(1億〜2億)8件、機能強化事業(3000万)7件、調査事業(500万)31件だった。2006年は総額41.4億円が概算要求されている。
やがてくる高齢化時代の高齢者の生きがい働きがいと衰退一途の地方地域、これを合体した健康、集客交流の事業を促進するため、関連の事業主やこれから起業したい人など、ぜひこの機会に応募し挑戦していただきたい。
明るい元気なニッポンづくりのために。
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