卓球の福原愛ちゃんが、NHKテレビ「中国語講座」に、ゲストとして出演した。12月26日につづいて、もう1度、1月9日にも出るようだ。今年から中国スーパーリーグの遼寧省チームに入り、シングルスや王楠(ワン・ナン)と組んだダブルスで大活躍し、試合後のインタビューでも、鮮やかな中国語で応対、日本の愛ちゃんファンをびっくりさせた。すばらしい中国語で、中国のマスメディアでも、モテモテだという。ご本人は「沈阻(瀋陽)なまりがある」と言うところが、また憎い。 その実力が認められて、堂々の語学番組の出演となったようだ。中国語講座のレギュラー慮思(ロ・シー)さんのインタビューに答えるかたちで、中国語とのつきあい方、勉強の仕方を、中国語で流暢に話していた。 ダブルスの相棒、シドニー五輪王者の王楠選手には、中国語できびしいことをびしびし言われる、と話していた。慮思さんが日本人はものの言い方が婉曲だが、中国人は直接的ですからね、と同情していた。 単語カードなどで、夜寝る前に中国語を勉強したのも力になったのだろうが、何よりもよかったのは、福原選手が「私は日本人、まちがった中国語を話しても当たり前、こわがらずに、どんどん中国語を喋ることだ」と気がついたことが、福原選手の中国語を大きく進歩させた理由のようだ。 一流の日本人スポーツ選手が、グローバルな顔を見せるとき、つまり、外国のチームで活躍する選手が、その国の言葉でインタビューを受けて、それに堂々その国の言葉で答えている姿はほんとうに気持ちがいい。うれしくなる。 イタリア語の中田英寿、女子ゴルフの岡本綾子、マリナーズの長谷川滋利の英語、そして朝青龍、琴欧州の日本語など、その実力はすごいものだな、と思う。スポーツ選手はリズム感がいいのだろうか。 昭和49年に「なんで英語やるの?」という著書で大宅ノンフィクション賞を受賞した中津燎子さんが、今度「英語と運命」(三五館)という本を出版した。中津さんは30年にわたって、全国に英語教育のための「未来塾」をつくり、英語を指導してきた。まず日本語でキチンと自己表現できること、その上で、子音の息のボリュームを十分に確保する発音から英語を学んでいく、という独得の英語教育メソッドをつくった人である。格闘技のような英語教育だ。中津さんは、英語の早期教育に賛成ではない。たとえば、2分間できちんと自己紹介できる日本語を叩き込むことが、まず必要だ、という。 福原、中田、岡本、長谷川を見ていると、その外国語のうまさは、早期教育とは関係ないように思う。2年後には小学校3年生から英語を必修にするというが、はたしてそういう英語早期教育は必要なのか。 上にあげたスポーツ選手たちは、スポーツをするために必要にかられて、外国語をマスターしていったのである。国際化時代だから、英語を小学校から必修にする、というのは、いかにも説得力がありそうだが、必要なことは、スポーツをする自分のアイデンティティを確立することが先で、外国語はその次でいいのではないか。必要に応じて、ゆっくりやればいいのではないか。スポーツ選手でなくても、そうだろう。 そして、スポーツをするならば、最高のレベルの選手のいる国の言葉を、しっかり身につけることが、たとえばオリンピックなどには有利に働くのではないか、とも思う。もちろん、プロの世界も同様であろう。 城島捕手のマリナーズ入りにあたって、ロッテのバレンタイン監督は、特別に英語の勉強をすることはない、と言う。野球は日米でかわりはないから、ということだ。福原愛選手がいうように「こわがらずに、どんどん喋る」という方法を城島選手はとれるかどうか、であろう。 |