アテネ・オリンピック前からの“女子全盛”のムードが、いっそうの高まりを示した。 全日本レスリング選手権(12月21〜23日、東京)も、マスコミの視線は、女子各クラスに注がれ、伝統の男子はすっかり脇役に廻った。 勢いを加えるかのような全日本フィギュアスケート選手権(12月23〜25日、東京)。女子主体で煽ったテレビの録画放送は、ライバル局が次々とニュースで順位決定やトリノ・オリンピック代表内定を速報する“対抗策”をはね飛ばし高視聴率をマークしてみせた。 いずれの競技も女子という興味本位から完全に脱して、国際的な実力による戦いが、支持を集めているのは素晴しい。 ジュニア層のコーチたちの話では、女子選手は、厳しいトレーニングにも耐えるだけのハートがある、と口を揃え、今どきの男子はとなるのも“共通”している。トップゾーンでの男子に執着心や向上心が乏しくなったとは考えにくいが、勢い、たくましさを感じるチーム、選手が少ないのは確かだ。 全日本スキー連盟会長がジャンプ陣の歯がゆさを叱って「トリノ・オリンピック代表枠の返上もあり得る」としたのも、こうした流れのなかの一駒である。 このムード、困ったことになかなか新展開を望めそうもない。 だが、低迷の背景を、若者の現代気質だけに押しつけてよいものかどうか。 コーチ(指導者層)側の、特にジュニアやユース年代への対応に問題がありはしないか。 かつて、学校スポーツを支えた教員たちは校務が多く充分な指導時間をとれず、外部指導者はどこか遠慮がち、フルタイムコーチは“実績至上”に走る。 地域のスポーツクラブが、本来、これらの問題点もカバーしてよいハズだが、いわゆる「市民スポーツ型」のイメージが濃すぎ、競技力型の路線は定まりにくい。 競技団体(とくにチームスポーツ)は、90年代後半、企業のスポーツ活動撤退や縮少の荒波を受けながら、相変らずの依存度で、国内リーグの事業化も、とうてい新時代の軌道へ乗ったとはいえない。 プロチームを志向したクラブで報酬の遅配といった厳しい現実も表面化している。 マイナスの要素ばかりで北京オリンピック(2008年8月)へ突き進むことはないだろうが、日本スポーツ界の前途は“危険域”が近くなるばかりだ。 「女子ジャンプがあればトリノ・オリンピックも盛り上るだろうに・・・」。テレビディレクターの嘆きを無知と笑えない寂しさで、今年が暮れてしまった―。 |