年末にセブン&アイ・ホールディングとミレニアムリテイリングとの経営統合による巨大流通グループの誕生というビッグな経済ニュースが飛び出した。 このグループ巨大化は、消費者を根こそぎに獲得して流通業界で「勝ち組」になるのが狙いだ。 なぜ、こんな話を持ち出すのかというと、その経営統合を主導したセブン&アイの会長・鈴木敏文氏が中央大学の理事長に就任し、スポーツ強化を大学経営戦略の一つの柱にすることを打ち出したからだ。 鈴木氏のことだから、競技力ばかりでなくスポーツビジネス(マーケティング、マネージメント)にいたるまでのスポーツ分野について思い切った強化を断行するのは間違いなかろう。 学生獲得の激しい競争を繰り広げるなかで、多くの大学が差別化・個性化を狙ってスポーツを重要な戦略に位置付けている。その意味で鈴木氏が中央大学のスポーツ戦略をどのように展開するのか注視する必要がある。 正月早々に行われる東京・箱根大学駅伝で連覇記録を伸ばしている駒沢大学の強さの背景には、有力な高校生ランナーを根こそぎ獲得していることがある。その獲得の裏には、授業料、合宿費の免除はもとより、毎月10万単位の小遣いまで与える、と噂されるほどの別格の待遇が条件とされているといわれる。 また、大学ラグビー選手権で圧倒的な強さを見せているのが早稲田大学だ。同大は、2007年の創立125周を目標に有力選手を無試験に近いかたちで入学させ異常とさえ言えるスポーツ強化を行っている。根こそぎに有力選手を獲得すれば強くなるのは当たり前で、「誰が監督でも勝てる」と言われるラグビー部はその象徴だろう。そのラグビー部はアディダスとマーケティング契約している。まさに大学スポーツは、「企業スポーツ化」しているといっても過言ではない。それゆえに、「学生である前に選手であれ」と、指導者は学生に諭すのだ。 産業の利益優先思想の浸透を食い止めてきた大学の自治は、今や無惨に壊され大学スポーツの商品化が当たり前のようになってきた。 商品価値を高めるために勝利至上主義しかたたき込まれない選手たちは、大学で得るべき知性も無く、結局、使い捨てにされるしかない。そうした大学スポーツの荒廃は、下の高校や中学にまで悪しき影響をもたらしている。 |