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100号記念メッセージ

■vol.115 (2002年10月2日発行)

【杉山 茂】マネーが先行するアジア大会の「放送」
【大島裕史】北朝鮮が参加している釜山アジア大会
【早瀬利之】優勝したければ、0勝のプロコーチを


◇マネーが先行するアジア大会の「放送」
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

韓国・釜山市で続いている第14回アジア競技大会のテレビ放送は、オリンピックやワールドカップに比べれば"小規模"だ。NHKも、この大会ばかりは「全部やる」のキャッチフレーズを引っ込める。

2大スーパーイベントと肩を並べるには、やはり「アジア」は、出場する各国の顔ぶれや、競技水準からも、バリューが下がる。しかも、多くの競技が、日本・韓国・中国の上位争いとなり、鮮度にも乏しい。

その一方で、ビジネスマネーはかなりのスピードで、駆け上がっている。

今回、日本(TBS系列とNHK)がアジア・オリンピック評議会(OCA)に支払う放送権料は800万ドル(10億円)前後と推定される。

2年後のアテネ・オリンピックの1億5,500万ドル(ジャパンコンソーシアム=JC)の足元にも及ばないが、かつては、アジア大会では放送権料はほとんど発生せず、1982年のニューデリー大会で、日本(NHK)が、当時の邦貨で3,000万円近くを負担した時は「アジア大会も商業化路線か」と騒がれたものだ。

ちなみに1984年のロサンゼルス・オリンピック時のJCの契約料は約5億円だった。

アジア大会の放送権料が、10万ドル以内で収まらなくなったのは、1986年のソウル大会からである。1990年北京大会、1994年広島大会と続いて、一気に上昇カーブを描いた。ソウル、北京両大会の日本放送界に対する強気な交渉はオリンピック並みであった。1998年バンコク大会(タイ)から、OCAはエージェントとマーケティング契約を結びビジネスカラーを一層濃くする。今回もそのハンドリングはエージェントだ。

その割に、大会への関心、興味が高まらないため、国内の"買い手"を探すのが難しい。

1958年の東京大会を、6年後の東京オリンピックへ向けての"テレビ・リハーサル"としたNHKは、その後もカバーを続けているが、民放は「NHKにおまかせ」ムードで来た。

1994年の広島大会は、JCでの制作、放送がまとまりかけたが、民放側が見合わせ、NHKとTBS系列の地元・中国放送(RCC)のコー・ホストに落ちついた。この時以降、NHKとTBS系の"接近"が見られ、今回もこのラインが保たれている。

サッカーの躍進、ベースボールの参加など、陸上競技、水泳、バレーボールに頼っていたこれまでより、テレビ的な品数(しなかず)が整ってはきたが、放送界挙げて、とはいかない。

規模の膨張に伴う経費増などで、OCAは、今後一層テレビ・マネーをあてにする戦略を進めるだろう。

OCAと放送界が互いの評価を近づける姿勢に欠けると、日本では「アジア大会の放送」が今より、量(時間)的に減ることはあっても、増えることはなさそうだ。

各国によってスポーツ人気度がばらばらなのもアジアの特徴で、競技別放送権料といった新たな手も、いずれは考えられるのではないか。

「釜山への関心」が、今後のカギを握っているとする国内放送関係者は少なくない―。

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◇北朝鮮が参加している釜山アジア大会
(大島裕史/スポーツジャーナリスト)

9月29日に開幕した第14回アジア競技大会(釜山)の主役は、開催国の韓国よりも、8月になって出場が決まった北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)である。

北朝鮮は、今大会に向けて、選手だけでなく、300人もの大応援団も繰り出している。北朝鮮が出場する試合会場では、カメラマンが試合そっちのけで、美女ぞろいの応援団を撮影している光景をよく見かける。

釜山に来て1週間近くになるが、南北の激しい対立の時代を知っている私としては、今いる所が、本当に韓国なのかと疑問に思えるほど、世の中は変わったものだ。

開会式の前日に行われた香港と北朝鮮の男子サッカーの試合では、試合に先立って流された北朝鮮の国歌を、韓国の観衆が立ち上がって静かに聞き、終わると大きな拍手が起きた。試合会場では、表に出すと国家保安法違反になる北朝鮮の国旗が北朝鮮の応援団によって振られ、スタンドも一体となって北朝鮮を応援している。

南北の対立が激しかった1960、1970年代、スポーツは南北の代理戦争の様相を呈していた。韓国でナショナルトレーニングセンターやメダリストの生涯年金などが充実しているのも、元はと言えば、北に対する優位を示すため、スポーツに力を入れたからだ。北朝鮮も、1966年のサッカーワールドカップ・イングランド大会におけるベスト8入りは、社会主義国家のかっこうの宣伝になった。

それが、東西冷戦構造が終結した1980年代末から、南北の新しい関係の模索が始まり、1990年の南北サッカーや、1991年の世界卓球選手権などの南北統一チームが、その象徴的存在として喧伝された。

その後、北朝鮮の核問題などで南北関係が再び冷え込むと、スポーツ交流も途切れてしまった。今回、韓国で開催されるアジア大会に参加したのも、最近の北朝鮮の外交姿勢の変化に関連したものだ。

かつて、戦争まで起こし、軍事境界線ではいまだに緊張が続いている北朝鮮の参加に、韓国内でも複雑な感情がある。訪韓している北朝鮮のチームにも警備が厳しく、自由に交流ができるというわけではない。それに、韓国と北朝鮮の関係は、政治状況が変われば、またどうなるか分からないデリケートな関係でもある。

それだけに、スポーツだけでもしっかりとした人間関係を築いていくことが重要になってくる。

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◇優勝したければ、0勝のプロコーチを
(早瀬利之/作家)

ベルリン・マラソンで高橋尚子選手が2連勝を飾った。1年間、この大会に体調を合わせることがどれだけ大変なことか、素人の私にも、それとなく想像できそうだ。

体調を整えるには、1人で取り組むより、コーチと一緒に取り組むことがベターである。しかし、経済力からか、プロのコーチと2人3脚で取り組む人が少ないようである。

プロゴルフの世界ではレッドベターやブッチ・ハーモンといったプロコーチが、年契約で取り組んでいる。

タイガー・ウッズをまねて、若い選手が、瓜二つのスウィングをしている光景を何度も見た。もちろん、その人は絶対にタイガー・ウッズにはなれない。しかし、少なくとも、一歩のところまでは近づくとことができる。

日本でも、若い人で、ビデオ分析を兼ねてコーチになっている人がいる。トッププロによれば、「1勝もしたことのない素人がコーチしても、勝負の心の中までは見えない」と批判したが、必ずしもトッププロがいいコーチとは断言できない。なぜなら、「心の中の勝負」は心理学であり、また別の戦いだからである。

幸いビデオなるものがあり、その場で本人が自分の姿を見て原因を知ることができる。コーチと一緒に分析して、スウィングをチェックすれば、新しい展開が見えてくる。

アメリカのプロコーチは、成功報酬制で、優勝したら賞金の10%、5位以内は7%といったビジネス契約を結んでいる。その為、コーチも一生懸命になっている。

勝負に敗れた人ほどプロコーチに向いている、と言われるのは、敗れた原因を知っているからだろう。

そういえば、ブッチもレッドベターも、1勝もしたことがない。

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