3月、7月、8月と決算期が異なるが、スポーツ用品各社の業績は軒並み減少し、8期連続減収を記録した。 スポーツ衣料ではトレーニングウエアの落ち込みが著しい。いわゆる低価格カジュアル衣料に完全に遅れを取り、スポーツといえばジャージスタイルと言われた面影は全く無い。 この点、外国ブランドのナイキ、アディダス等は、いち早くカジュアルテイストを取り込み、頭の先からつま先までブランドで固める若者のハートを捕らえていて、ストリートファッションでもリード役をはたしている。 これに対し、純競技指向をマーケティングの主軸においているミズノ、アシックスは苦戦を強いられている。少子化の影響もあり、純競技者は一部を除き年々減少しているからである。コアビジネスユニットであるゴルフ、スキー用品が長い不振にあえぎ、業績の足を引っ張っていることに加え、比較的堅調であったスポーツ衣料(ジャージ類)も急速に売上が落ち込んでいるのが大きい。 高度成長期から、スポーツ用品需要をリードしてきた3大アイテムは、今や逆に経営の屋台骨を揺るがすほどの凋落振りである。 国内スポーツメーカー各社は、希望退職制度の実施による人件費削減や、宣伝費削減に懸命に取り組んではいるが、売上減少に歯止めが掛からないので、苦しい状況が続く。しかし、それ以外のアクションがなかなか見えて来ない。 かつては、東京五輪や札幌五輪の開催に合わせて、業界をあげて市場創造を図り、様々なプロモーションが展開された。よく知られているものとして、東北・上信越の自治体や国鉄(当時)などとタイアップして、山映画会などのアトラクションを開催し、スキー列車、スキーバス等を増発して、お客を送り込んだ企画などがある。 時代は変わり、長野五輪、日韓共催ワールドカップのような大きなイベントが相次いで国内開催された。にも関わらず、業界全体がこうした盛り上げに加わり、スポーツ参加者を増やす活動はほとんど見受けられていない。個々の企業の優位性を求める余り、このようなビックチャンスを充分に活用する機会を逃した印象が強い。 もちろん、ライフスタイルの変化により、過去の成功体験が現在でも通用するかは判断が難しい。しかしながら、異業種や、関連産業、行政等と横断的な企画を打ち出し、前向きに努力する考え方が、もはやしぼんでしまっていることだけは確かなようである。 これではいけない。 米国ではSGMA(スポーツ用品工業協会)が各種調査の中で、スポーツ参加率という指標を重要視し、毎年、市場調査を実施し、分析、対策を打ち出している。しかし、日本での同じ組織からは、残念ながら、そのような発表・提言は一度として聞いたことが無い。 スポーツ参加率は、その国のスポーツ動向を見る上で最適な指標である。我が国でも、『スポーツ振興基本計画』の中で、政策目標として2010年までに『国民の2人に1人が週1回スポーツ活動を行うこと(参加率50%)』と数値を示している。 スポーツ関連産業が、目先の業績に右往左往するのではなく、スポーツ参加率を上げることに積極的に取り組み、それをもとに行政への提言や協力を打ち出せば、自ずと道も拓けてくるのではないだろうか。 |