いよいよ、トリノパラリンピックが開幕した。中世のコスチュームに身を包んだイタリア伝統のフラッグの舞から始まった開会式は、イタリアらしい華やかさをともないつつ、最後はディスコミュージックで会場全体がノリノリとなるようなセレモニーとなった。 先に行われたトリノオリンピックでは、メダル5個を目標としながら、女子フィギュアスケートの荒川静香選手の金メダル1つで終わった日本。パラリンピックでは、過去のパラリンピックやワールドカップでもメダル常連の、アルペン女子シッティングの大日方選手や青木選手、男子では東海選手など、実績からみてもメダル有望な日本選手が多い。一方、今大会の注目はなんといっても、初めてメダルを狙える位置にあるアイススレッジホッケー日本代表である。 トリノオリンピックでは、企業の撤退に自らスポンサー集めに動いたスピードスケートの今井選手や、選手自身がかなりの金銭負担を強いられながら海外遠征を行っている競技など、冬季スポーツの選手たちに対する支援体制の厳しさも浮き彫りになった。ところが今回のパラリンピックでは、ノルディックやアイススレッジホッケーなど、企業に全面的にバックアップされて望む、初めての大会となる。 特にアイススレッジホッケーは、中北監督が勤める日立製作所に自ら働きかけ、“HITACHI”のロゴの入ったユニフォームをはじめ、遠征費用など活動費を全面支援。自身もアイスホッケー選手を目指し、カナダ留学などの経験もある中北監督が言う「障害者スポーツを教えにきたんじゃなく『アイスホッケー』を教えにきた」の言葉通り、練習内容や全日本合宿などの練習回数を大幅増加するなど大きな環境変化の中で、かつては21対1で負けるほどの強豪国・スウェーデンに勝てるまでの実力を身につけてきた。 さらに、メディカルトレーナーやメンタルトレーナーも帯同(注・一緒に連れて行くこと)。これまで、中北監督や選手たちが口にしてきた「金メダルを狙う」という言葉は誇張でも何でもなく、ソルトレーク大会後の4年間、企業のバックアップを受けながら監督・選手自らが築いてきたものに対する確かな実績と自信から生まれた「素直」な言葉なのだ。 冬季競技は、オリンピックもそうだが「お金のかかる」スポーツが多い。メダルを獲れないから支援が減るのか、支援がないからメダルが獲れないのか。「厳しい」話題ばかりが多かったトリノオリンピックの一方で、トリノパラリンピックでは障害者スポーツが大きな支援を受け、その成果を見せる初めての舞台となる。 |