パラリンピック8日目。アルペンスキーの女子大回転座位に出場した大日方邦子選手がついに、パラリンピックでは長野大会以来で表彰台の一番高いところにあがった。「長野のときはよくわからないうちに金メダルを取っていたという状況でしたが、今回は練習を重ね、いろいろやってきた中で取れた金メダルなので、重みは全然違います」と金メダルの喜びをかみしめた。また男子でも、森井大輝選手が自身初のパラリンピックでの銀メダルを獲得。健常者のアルペンレースを参考にするなど、4年間、練習や合宿を繰り返しながらこのパラリンピックを迎えた日本勢には嬉しい1日となった。 そんなアルペンスキー会場のセストリエールで、一人の南米障害者スキーヤーが歴史を刻んだ。アルペンスキー男子大回転座位1本目、トップの選手が58秒19で滑ったコースを2分56秒68かけて滑り終えた選手。彼こそが、冬季パラリンピックにメキシコ選手としては初めて出場したルイズ・アルマンド選手(43)である。普段は弁護士として働いている彼が障害者スキーと出会ったのは4年前。アメリカ・ワシントンD.C.にいる親戚を訪ねたときだった。メキシコではスキーをする人もいなければ練習できる場所もないため、彼は今もアメリカで練習を行っている。 オリンピック同様パラリンピックも、「参加することに意義がある」から、各国選手ともメダル獲得のために練習をつみ、競技としてのレベルがあがってきている。メダルをかけた熾烈な争い。しのぎを削るレースが続く中、臆することなくゆっくりゆっくり、確かめるように滑り終えてきたその姿は堂々として、誇りと喜びに満ちていた。 「冬季パラリンピックでのメキシコの国としての記録というものがありません。私がメキシコとしては初めての冬のパラリンピック代表ですから、私の目標はとにかく完走し、滑り終えることでタイムを残すこと。メキシコとしての冬のパラリンピックの歴史を作り始めることが、今回の私の目的です」。そんなルイズ選手、2本目はタイムを上げ2分46秒77でゴール。レース参加者は58名いたが、タイムは最下位であるもののコースアウトした選手などもいるため結果は41位。きっちりメキシコの「記録」を刻んだ。 選手としてはもう若くはないルイズ選手だが、次のバンクーバー・パラリンピックを目指すかどうか聞いてみた。「もちろん目指します。今回はあくまでも冬のパラリンピックがどういうものかを知るために来たのであって、本番は4年後。本当のゴールは4年後にあります」。 |