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100号記念メッセージ

■vol.128 (2003年1月8日発行)

【杉山 茂】シーガルスよ、大都市型の「凄いクラブ」に
【早瀬利之】ゴルフ日本ツアーは相変わらず冬眠中
【市川一夫】箱根駅伝に見るスポーツブランドの戦略
【今城力夫】頭脳とスポーツの関係

★年始特集★日本のスポーツ総括2002/展望2003


◇シーガルスよ、大都市型の「凄いクラブ」に
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

サッカー天皇杯の京都パープルサンガの若々しい勝利で幕の開いた新年のスポーツ界。

この先どうなる、と気になったのがアメリカンフットボールだ。

ライスボウル(1月3日・東京ドーム)は立命館大学が初の王座について、新しいページを開いたが、社会人代表・シーガルスの試合ぶりは、エースQBの負傷というアクシデントに見舞われたとは云え、企業チームを前身とする「クラブチーム」の難しさを、改めて感じさせた。

かつては、シルバースターのような栄光の「クラブチーム」が、最上位に君臨した世界である。

だが、その当時から、情熱と研究心旺盛な集団とは云え、極めて高度で、反復の集積を欠かせぬアメリカンフットボールで、「クラブチーム」が活動するのは限界がある、と私は感じていた。

エキスパート、関係者、年季の入ったファンに云わせれば、シルバースターは、その困難を超越した人たちで"組織"されていた。学生チームの多くが、甲子園ボウル制覇を至上の目標に揚げていたこともあるだろう。

それでも、日本風の「クラブチーム」でいつまでも戦い続けられるスポーツではないハズだった。

アメリカンフットボールに限らず、企業のスポーツを見る目は、冷える一方だ。「好況に戻っても、チャンピオンスポーツへ再び手を貸すことはないだろう」と明言する経営トップは多い。

トップリーグ発足へこぎつけたラグビー界は、加入する12チームの背景を「ラグビーに理解ある企業・・・」と説明する。「理解ある・・・」とのニュアンスはなかなか微妙である。

話しを戻そう。シーガルスが、社会人アメリカンフットボールの総ての姿ではないにしろ、学生界で磨きこまれた知と技と力を、さらに発展、充実させるステージが狭まっていることは、この魅力あるスポーツの日本での今後に、影を落とすものだ。

地域密着という言葉のなじみにくい首都圏に本拠を置くシーガルスを、大都会型のお洒落で強い「クラブチーム」のモデルに育てあげられないものか。

選手やコーチングスタッフよりも、ドームのどこかに座るこのチームのマネージメント・マーケティングスタッフに期待の声を掛けたかった―。

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◇ゴルフ日本ツアーは相変わらず冬眠中
(早瀬利之/作家)

アメリカのゴルフ界は新年早々に、ハッピーニューイヤーと同時に開幕した。昨年のツアー(男子)最終戦が11月3日終了だから、2ヵ月後の開幕である。

アメリカは北から南と、気温の差もあり、フルシーズンどこかで「暖かいゴルフ」が可能である。フロリダもあればハワイもある。併合しながら軍事占領したハワイなどは合衆国のひとつの州にして、今では観光と軍事基地の島となったが、ここでは今年のツアー開幕戦のメルセデス選手権が1月9日から12日までの4日間、昨年の優勝者が集まって、ビッグな賞金を賭けた戦いが始まる。

次の週もハワイで、ソニーオープンが開幕。その後はアメリカ本土に戻ってきて、フェニックス、カリフォルニアとアメリカ西海岸周辺での試合が毎週続く。これを「西部ツアー」とも言う。

この西部ツアーが終ると、一気にフロリダとなる。フロリダツアーから、オーガスタのあるジョージア州、キャロライナ州へと上がるから、選手たちは、常に半袖シャツにベスト一枚というコンディションの中で戦う。マスターズが行われる4月10日頃には、全選手ともベストコンディションの状態。なかにはマスターズ優勝を狙って、その2週間前から試合を休み、コンディションを整えて挑む選手もいる。

ところが、日本ツアーときたら、なんと4月3日からの開幕。アメリカ、ヨーロッパツアーが1月早々からスタートしているのに、日本は「冬眠状態」。勿論、目覚めた状態で、マスターズに出てきても、アマチュアが練習なしでプレーするのと同じで、予選突破さえ難しい。

日本ツアーの立ち遅れは長引く不況下のため、一試合に3億円(総経費)を出す企業がないからだ。しかし、新しい企画を持ち込めば、スポンサーも動くと思うのだが、PGAとJGTOが睨み合った状態ではスポンサーもテレビ局もついてこないのが現実。何よりも、丸山茂樹、田中秀道に逃げられては、イベントは成り立たない状態である。

今年はこの2人の他に、久保谷健一もアメリカツアーに参戦する。合計5人の若手プロがアメリカツアーに出てしまう。来年は、宮里優作が、アメリカツアーに出る予定だから、日本ツアーは完全に中年プロと愛嬌のない新人プロのみになる。

果たして、PGA、JGTOは次なる手を考えているのか。モタレ合っていては前に進まない。

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◇箱根駅伝に見るスポーツブランドの戦略
(市川一夫/スポーツライター)

正月恒例の箱根駅伝は今年も関東圏では30%を越す高視聴率を記録した。スポーツイベント目白押しの年初を飾るこの怪物イベントを独占で生中継する日本テレビや後援の読売新聞社は得意満面だろう。

その一方では、TBS中継の元旦の全日本実業団駅伝も行われ、ランナーのレベルはこちらの方が遥かに高いのだが、世間の注目度や視聴率、イベントパワーは何と言っても箱根駅伝に軍配が上がる。何れにせよ駅伝王国日本を代表する二大駅伝が正月三が日、お茶の間を占領する格好だ。

さて、この怪物イベントのテレビ視聴率の高さに着目するのは報道関係者だけではない。主役の選手が着用するウエア、シューズ等を供給するスポーツブランド各社もまた然りである。

79回の歴史を有する箱根駅伝であるが、スポーツブランド各社が積極的に参入したのは、往復全区間テレビ中継化されてからだ。

それ以前は各大学が長年付き合っていたスポーツブランドがそれぞれをカバーしていたに過ぎず、そのシェアも分散していた。その中でも、陸上競技の世界で長年の実績を培ってきたアシックスがマジョリティを占めていた。

しかし、テレビ中継の視聴率が上がるに伴い、陸上では後発のミズノが、トップ自らの陣頭指揮により、豊富な人・物・金を惜しげもなく注ぎ、瞬く間に出場各大学に食い込み、今やミズノ一色の様相を呈している。今年も総合優勝の駒大、3位日大、5位中央大と上位を制圧した。

余談ではあるが、各チームが襷と同様に重要視するユニホームの選定についても、有力OBや監督との長年にわたる人間関係、大学出入りのスポーツ用品店との関係、商品販売、提供の条件、商品の開発力(素材、デザイン、機能)、選手の希望などの背景がある。そのため、シード校は勿論の事、予選会で出場権を得る大学への不断の地道な人的活動も不可欠となっている。

高視聴率番組である箱根駅伝で、自社のブランドを身につけた選手が長時間お茶の間に飛び込んで来ることで、視聴者の脳裏にブランドが認識され、ブランド力評価に繋がり、最終的には商品購買に至ると目論むのはスポーツブランド各社にとって当然である。

ミズノの経営戦略を読んでも、陸上競技を制することが全てのチャンピオンスポーツにおける覇権に繋がると考えていることが理解でき、事実、ミズノトラッククラブ運営、日本陸連オフィシャルサプライヤー、箱根駅伝協賛など、目ぼしいものは全てと言って良いほど触手を伸ばし、手中に収めている。経営資源の重点活用により、高い宣伝広報効果を獲得し、販売成績に繋げるという戦略である。

しかし、長期間の投資継続に対し、市場において、それに見合う販売成績を得ているかについては、ブランド露出に必ずしも比例しておらず、関係者の悩みは尽きない。シェアを握っている箱根駅伝においても、レースを見た視聴者がブランドをどのように認知し、その後、ブランドの商品を購入したか、などのマーケット調査が行われたということも聞いた事がない。

陸上競技用品の最大需要は市民ランナー層であり、毎日曜日全国各地で開催される市民マラソンには老若男女多数の参加があるが、ミズノはこの市場では、依然として他ブランドに名を成さしめているのが実情である。

競技の頂点を制圧することは勿論重要な戦略である、しかし、本当の成功は市場占有率においてNo1になることである。それが実現して初めて戦略が完結することになるのではないか。

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◇頭脳とスポーツの関係
(今城力夫/フォトジャーナリスト)

解剖学者の養老孟司氏が、1月5日の朝日新聞に、「脳と運動は関係がないとよく誤解されます。でも、話すのも文字を書くのも運動。筋力を動かすしかない。見る、聞くなど五感で入力して、脳の中でプログラムを組みたて、運動で出力するんですよ」と書かれていた。

私は以前、優秀なスポーツ選手は、頭の方は大したことなくても、頑丈な体で腕っ節の強い連中が多いのだと思っていた。しかし、どうもそうではないことにある時期気づいた。スポーツの世界だけではなく、先天的に優れた能力やセンスを持っていることは当然恵まれたことだが、頭の良さというか、優れた脳の働きはスポーツ選手を非常に大きく左右しているようだ。

まるで動物の触角のように瞬時に相手やボールの動きを感知して、それに素早く的確に反応したり、体力の極限状態の中を長時間必要なスピードを保ちながら走り続けるなど、彼らの頭脳コンピューターはどのように稼働しているのか不思議でならない。

特に近年はスポーツの中に科学的な方策を多く取り入れるようになったが、頭を使った練習方法なども非常に重要視されており、腕ずく一本やりだけでは試合に勝ち続けることは難しいようだ。

どんな競技においても、最近の優秀なスポーツ選手を見ていると、特にそう感じざるを得ない。優れた棋士は何百手先まで頭の中でよみながら将棋を指してゆくそうだが、試合中のスポーツ選手の頭脳でも同じようなことが起こっているのであろう。

日本もオリンピックやその他の国際大会に出て行くような選手の養成には、もっと頭を使った予算配分をして、将来のある若者を育てることを考えたらどうか。最近はオリンピックに大規模な選手団を送り込むようになったが、どうでもよいような役員の多さに私は非常に疑問を感じている。

そんな余裕があるのなら期待の出来そうな若者を優れたノウハウを持っている外国の大学に留学させてやった方がましではないのだろうか。

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☆年始特集☆
日本のスポーツ総括2002/展望2003


2003年の展望(山本 篤/NHKチーフプロデューサー)

2003年が幕をあけた。

スポーツ界はアテネオリンピックに向けて大きく動き出すが、なぜか今年は大相撲界が気になる。右ヒザの故障で満足な相撲がとれない横綱貴乃花が、初場所の土俵に立てるのか、もし立つことになれば引退をかける土俵になるのではないだろうか。心配がつきない。

もし貴乃花関が引退することになれば、昭和と平成の大相撲がひとつの区切りになるような気がする。かつて大相撲は、栃若に象徴されるようなスピードと技で勝負を争い観客を魅了してきた。しかし、体重200キロを超える力士が増え、幕内の平均体重が150キロを超えるようになると、スピードや技を競う大相撲ではなく、寄りきりや押し出しといったパワーの相撲になってきた。

貴乃花関もかつて、史上最年少記録を塗りかえながら昇進していた時代は、父の相撲を彷彿とさせるしなやかさとスピードに溢れていた。本人には大変失礼だがハラハラドキドキして大変楽しい相撲であった。その貴乃花関も大型化の中で、体重を増やし、常に優勝が求められる横綱の宿命から相撲のスタイルが変わっていった。

しかし、一方で、初場所に綱とりをかける大関朝青龍のようにスピードと技の切れがある力士が現れ始めているのは嬉しいことでもある。祖国のモンゴルは大相撲が大変な人気で、角界入りはイチロー選手や松井選手が大リーグに挑戦するような憧れの的だという。現在の大相撲界は、外国人力士の枠が一部屋一人であるが、ヨーロッパからも新弟子が入るようになった今、再び国際化・多国籍化などが論じられるようになるのかもしれない。

ドーピングやコマーシャリズムの問題も含め、大相撲界が変わっていく空気が感じられる中、2003年は平成の偉大な横綱貴乃花の土俵に心から声援を送りたい。

ドーピング問題に考える(師岡亮子/スポーツライター)

年明け早々、大相撲のドーピング検査導入が話題となっている。クロスカントリースキー界でも今季の話題の中心はドーピングだ。

こちらはいわゆる血液ドーピングだが、一昨年の世界選手権、昨年の五輪とも複数の選手がメダルを剥奪される事態となった。

今季も、10年も遡っての「驚愕の新事実」報道などが相次いで現れ、国際スキー連盟は、連盟の懸命の取り組みを評価して欲しい、メディアが不確実な情報に振り回されるのは遺憾、と異例のステートメントを開幕から1ヶ月の間に二度も出している。

一流の競技者で勝利を目標としない者はいない。薬物依存をなくすには、勝利へのインセンティブが変わるしかない。もしかしたらそれは、大きな栄光ではなく、身近な人々に心から喜んでもらい、自分が真に満足することに他ならないのかもしれない。

昔の精神論に戻れというのではない。冗談ではなくサイボーグの競争にしないためには、結局は人間の幸福とは何かと考えることに行き着く、ということだ。

総括2002/展望2003の大リーグ(松原 明/東京中日スポーツ報道部)

2002年の大リーグは大きな転換の年になった。

新たな労働協約は8月30日の期限ギリギリで、初めてストなしの交渉が妥結。ファンには、ほっとする結末になった。選手会は大幅に譲歩し、オーナー側は懸案の年俸抑制へ一歩を踏み出す解決になったのは大きい。

チーム年俸超過額に対する課税ワクを超える年俸上位球団は、オフに高額選手を放出し、若手に切り替える方針を打ち出す結果へつながった。アメリカの4大プロスポーツで選手の年俸制限枠を、何らかの形で導入していないのは、大リーグだけであり、「サラリー・キャップ」は選手会の反対で実現しなかったにせよ、オーナー側の交渉成功が、今後は天井知らずの大金スター時代は終わるのを暗示している。

2002年のプレーオフは、チーム年俸15位のエンゼルスが王座に着き、負けたジャイアンツは9位。リーグ優勝を争ったツインズは27位。年俸上位球団はことごとく敗れた。近来続いていた「大金を掛けないと優勝は来ない」図式は、もう、過去のものになりつつある、のは2003年のペナントレースにも反映されるだろう。

大金を投資してFAスターを集めるのではなく、マイナーから育てて熟成したチームで挑む、新たなチーム作りは、これまでとは違う魅力と、思わぬ波乱を生むに違いない。

総括2002/展望2003(今城力夫/フォトジャーナリスト)

何といっても2002年は日韓共同開催のワールドカップサッカーに尽きる。

世界の強豪の試合を身近に観戦出来たことは素晴らしかったし、それ以上に日韓両国がお互いに好意的で、特に若者達の友好的な交流を通じて理解し合えた部分は、両国の将来に向かって一歩前進したように思う。ただ、韓国が自国での開催能力が無く日本との共同開催という形で割り込んだにも拘わらず、我国の外交能力の低さから大会名表記など不快な思いをしたのは残念だった。

2003年はアテネ五輪に向かって素早いスタートをしなければならない。

せめてスポーツ界は若く優秀な指導者を採用し、選手選考に始まり、その後の活動や運営には時代に相応しいやり方でなければならない。水泳の千葉すずを使いこなす能力がないようでは思いやられる。

しかし、野球のナショナル・チームの監督が長島茂雄氏だそうで、どうも日本のスポーツ界にはフレッシュな風が吹かない。古い構造をぶち破って発展してほしいものだ。

総括2002/展望2003(市川一夫/スポーツライター)

2002年サッカーワールドカップは多くの国民にスポーツの素晴らしさを強く印象付けてくれたが、スポーツ用品市場全体の活性化や需要創出には至らなかった。

しかし、少子化のなかで幼児、小学生達のスクール、クラブ入会増加が目立ち『ワールドカップに出たい』と言わしめる効果が出ており将来に期待が持てる。

特にサッカーを主体にした総合型地域スポーツクラブが各地に誕生したことは、『Jリーグ百年構想』が漸く具体化しつつある証拠であろう。

一方で、高齢化時代におけるスポーツ、余暇活動も多彩になり、プログラム開発、指導等も着実に行われ生涯スポーツ時代が開花する兆しが高まっている。

スポーツ産業はソフト開発、提供と手を組まない限り、市場活性化は達成できないことを強く認識し、マーケティング戦略を見直す事が急務である。

総括2002/展望2003(高山奈美/スポーツライター)

ソルトレークシティー冬季オリンピックや日韓共催のワールドカップといったビッグイベントが目白押しだった2002年は、審判員によるミスジャッジや、買収疑惑が、ようやく、本当にようやっと世界中に大きく取りだたされた年でもあった。

ミスジャッジに抗議するコーチや選手の姿は、確実に観衆を興ざめさせる。年々レベルアップしていくアスリートたちのパフォーマンスもこれでは台無しだ。

アスリートたちの敵が審判員や金であってはならない。スポーツ振興の命取りになりかねないこの大問題を早急に解決し、真の世界一、日本一だけが表彰台へ上がる権利を得られる公正な2003年を期待したい。

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