韓国・釜山市で続いている第14回アジア競技大会のテレビ放送は、オリンピックやワールドカップに比べれば"小規模"だ。NHKも、この大会ばかりは「全部やる」のキャッチフレーズを引っ込める。 2大スーパーイベントと肩を並べるには、やはり「アジア」は、出場する各国の顔ぶれや、競技水準からも、バリューが下がる。しかも、多くの競技が、日本・韓国・中国の上位争いとなり、鮮度にも乏しい。 その一方で、ビジネスマネーはかなりのスピードで、駆け上がっている。 今回、日本(TBS系列とNHK)がアジア・オリンピック評議会(OCA)に支払う放送権料は800万ドル(10億円)前後と推定される。 2年後のアテネ・オリンピックの1億5,500万ドル(ジャパンコンソーシアム=JC)の足元にも及ばないが、かつては、アジア大会では放送権料はほとんど発生せず、1982年のニューデリー大会で、日本(NHK)が、当時の邦貨で3,000万円近くを負担した時は「アジア大会も商業化路線か」と騒がれたものだ。 ちなみに1984年のロサンゼルス・オリンピック時のJCの契約料は約5億円だった。 アジア大会の放送権料が、10万ドル以内で収まらなくなったのは、1986年のソウル大会からである。1990年北京大会、1994年広島大会と続いて、一気に上昇カーブを描いた。ソウル、北京両大会の日本放送界に対する強気な交渉はオリンピック並みであった。1998年バンコク大会(タイ)から、OCAはエージェントとマーケティング契約を結びビジネスカラーを一層濃くする。今回もそのハンドリングはエージェントだ。 その割に、大会への関心、興味が高まらないため、国内の"買い手"を探すのが難しい。 1958年の東京大会を、6年後の東京オリンピックへ向けての"テレビ・リハーサル"としたNHKは、その後もカバーを続けているが、民放は「NHKにおまかせ」ムードで来た。 1994年の広島大会は、JCでの制作、放送がまとまりかけたが、民放側が見合わせ、NHKとTBS系列の地元・中国放送(RCC)のコー・ホストに落ちついた。この時以降、NHKとTBS系の"接近"が見られ、今回もこのラインが保たれている。 サッカーの躍進、ベースボールの参加など、陸上競技、水泳、バレーボールに頼っていたこれまでより、テレビ的な品数(しなかず)が整ってはきたが、放送界挙げて、とはいかない。 規模の膨張に伴う経費増などで、OCAは、今後一層テレビ・マネーをあてにする戦略を進めるだろう。 OCAと放送界が互いの評価を近づける姿勢に欠けると、日本では「アジア大会の放送」が今より、量(時間)的に減ることはあっても、増えることはなさそうだ。 各国によってスポーツ人気度がばらばらなのもアジアの特徴で、競技別放送権料といった新たな手も、いずれは考えられるのではないか。 「釜山への関心」が、今後のカギを握っているとする国内放送関係者は少なくない―。 |