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100号記念メッセージ

■vol.117 (2002年10月16日発行)

【杉山 茂】深刻さに欠ける国内トップゾーン指導者
【井原 敦】統一旗が揺れたアジア大会
【早瀬利之】スーパージュニア、宮里藍の金メダル


◇深刻さに欠ける国内トップゾーン指導者
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

日本スポーツ界のトップゾーンは、明らかに崩壊しはじめた。

第14回アジア競技大会(釜山)を終えて、金メダルの数がどうのこうの、という以前に、各スポーツ団体がよほど腰の座った"再建プラン"を打ち出さなければ、行き先は暗くなるばかりだ。

日本オリンピック委員会(JOC)を始めとするスポーツ団体関係者は、厳しい状況を知りながら、一向に危機感がない。

金メダル至上の姿勢から、スポーツ・フォア・オールをより強く揚げることに理念を大変換させよう、というのなら、それはそれで結構だが、そのような気配はほとんどない。

遅ればせながら、国立スポーツ科学センター(東京都北区)も完成し、スポーツ振興基本計画には、強化の一貫指導の促進が謳いこまれるなど、トップゾーンの"環境"は整い始められてきたが、肝心の最前線に緊張感が乏しくては、これからもJOCなどの幹部は「深く反省」の弁を繰り返すことになる。

多くのスポーツ関係者は、低迷の要因に少子化と企業のスポーツ路線撤退をあげる。

学生(大学)スポーツが退潮し始めた時も、「学生の興味が多様、多彩になった」と一般論を振りかざすばかりで、インターカレッジや地域学生リーグの運営に魅力ある新しい方向を見つける努力を示さなかった。少子化も企業のスポーツ路線撤退も、このまま通り過ぎ、ひたすら幹部の頭の下げかたの角度が深まるばかりではないか。

トップゾーンの再建・拡充を最大、緊急のテーマとして、スポーツ界あげて取り組むことをためらってはなるまい。

国際基準に合わせた年代別競技会への切り替え、各地の施設を拠点としたトップレベルのコーチング体制の促進と、そこから生まれる競技志向型クラブ(チーム)の助成、国体の活用など、手は充分に残っている。

これは、ボールゲーム系団体の関係者に多い傾向なのだが、1988年のソウルオリンピックを目指し、その余勢で強さを保ってきた韓国の力は2000年台には萎え、そうなれば、日本はアジアの中で再浮上のチャンスを掴めるとしていた。

ところが、2008年にオリンピックを迎える中国が、早くも凄まじい力を示し、この淡い望みも吹き飛ばされた。韓国は釜山市で2016年あるいは2020年にオリンピックを開きたい、という。

アジア諸国の競技力は、着実に伸びている。このままでは、日本は21世紀の半ば近くまで、復活を成し遂げられない。

各スポーツ団体が、競い合うように練り上げた「ビジョン21」も、このままでは、「それだけの話」で終わるだろう。

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◇統一旗が揺れたアジア大会
(井原 敦/読売新聞運動部)

初めは笑ってしまったが、思い出すと笑えない話をまず。

韓国第2の都市、釜山で開かれていた第14回アジア競技大会のソフトボール会場でのことだ。予選リーグ初戦は日本対北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)。客席には、女性がほとんどの北朝鮮応援団が詰めかけていた。

北朝鮮ピッチャーの投球はストライク。応援団の大歓声が起こった。次は残念ながらボール。応援団からはまた同じように大歓声がわき上がった。ルールをご存じないのか、これが彼女たち流の声援なのか。

鳴り物を使い、踊りも交えた応援は試合中絶えることなく続き、1 - 0で辛勝した日本のベテラン選手からは「こういう応援は初めて。打てない投手ではなかったのに」とぼやきも聞かれた。相手打線のリズムを崩したという意味では、この応援は大きな後押しになったと言えそうだ。

応援団の一行は、朝鮮労働党の下部組織、金日成社会主義青年同盟のブラスバンド「青年吹奏楽団」や劇団「万寿台芸術団」「血の海歌劇団」から選抜された女性が中心だ。

釜山大会組織委員会では、「北の参加」を大会目標に掲げてきた。実現すれば、韓国国内で開かれる国際スポーツ大会に北朝鮮が初めて参加することになる。「アジアを一つに 釜山を世界に」が大会スローガンである。

民族融和の悲願を象徴する統一旗は、開会式の合同行進に始まって大会期間中に各会場で振られ続けた。緊張関係にある朝鮮半島情勢を注視する世界の目は、釜山における北朝鮮選手団と応援団の動向に関心を寄せた。スローガン通りの展開となった。

一糸乱れぬ応援を映像でご覧になった人は多いだろう。しかし、テレビ画面の枠に映らない応援団の周囲には、肩を寄せるようにして立ち並んだ警察官の厳重警備の壁があった。この風景はスポーツに合わない。

五輪では、組織委員会やIOCによる会見がメインプレスセンターでほぼ連日開かれ、大会運営やドーピング問題などについて質疑応答を受けることが常だ。しかし、釜山では閉会式前日に組織委会長が一度、会見を開いただけに終わった。

その代わりなのだろうか。大会の中盤に、ソウルから訪れた統一省や外務省幹部が、南北交流を掲げる「太陽政策」の現況や朝鮮半島情勢についての会見を行った。釜山アジア大会を運営する側の人々が、スポーツ大会を通して何を発信したかったのかが透けて見える。

過去に何度も取りざたされたスポーツと政治の関係を改めて考えさせられた。そして、「政治ショー」に利用された不快感が残った。

ただ、最後の競技、男子マラソンで期待にこたえる力走を見せた李鳳柱(韓国)への沿道の声援、大会MVPに輝いて閉会式の旗手を務めた北島康介(水泳)の晴れやかな笑顔が、大きな救いだった。

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◇スーパージュニア、宮里藍の金メダル
(早瀬利之/作家)

釜山アジア大会が終わった。

ゴルフでは、女子の宮里藍(東北高校2年生、17才)が風が激しい中を最終日70で回り、逆転優勝して金メダルに輝き、女子の団体戦も宮里の健闘で2位の銀メダルに輝いた。

下馬評では、ジュニアゴルフに力を入れている地元韓国が、個人、団体とも優勝するだろうと言われていた。韓国にはプロ顔負けの金珠美、朴元美らがいて、実力面では宮里や上原彩子(ともに沖縄出身ジュニア)を上回っている。

やはり、パットになると地元勢に歩があったようだが、風対策では、島育ちの宮里や上原の方が慣れていて、力まずにショットできたことが健闘の要因だろう。

宮里は同じ週に、箱根CCで日本女子オープンがあり、どちらに出場しようかな、と迷ったという。

しかし、国際試合を積み重ねて慣れたいという気持ちがあり、そして、アジア大会は最後になるかもしれないが、日本女子オープンは来年もあるという判断で、釜山のアジア大会出場となった。日の丸を揚げる喜びもまたひとつの大きな成長である、という父親のアドバイスもあった。

今大会は兄の優作も男子の部で出場し、優作は男子個人戦でトップに8打差で2位に、団体では3位に終わった。プロを目指す優作には、今回のアジア大会が最後になるだろう。

来年の大学卒業後にプロ転向を考えている兄の優作と、高校卒業後には女子プロツアーに転向する予定の妹の藍。

宮里家はまだまだ忙しい。

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