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100号記念メッセージ

■vol.118 (2002年10月23日発行)

【杉山 茂】皮肉な注目集める「高知国体」
【岡崎満義】人類愛とサッカー 〜岡田武史さんの場合〜
【早瀬利之】日本人プロの実力は落ちたのか


◇皮肉な注目集める「高知国体」
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

久々に、国体がマスコミの注目を集めている。

オリンピック中間年、各競技にズラリと国際級の選手が並んで、というのなら嬉しいが、"常識化"していた開催県の「天皇杯(男女総合得点)獲得」がどうやら今年の高知県(秋季大会10月26日〜31日)でストップしそうだとへの関心からである。

都道府県対抗、を打ち出しながら、開催県の上位進出と総合優勝があたりまえという風潮はもう40年近くも続いている。1964年、東京オリンピックの年の新潟大会で、それまで、同県でなじみの薄かった競技の体裁を整えるため、県外から激しいばかりの補強を行い、天皇杯を手にしたのが、きっかけ、といわれる。

例えば、手薄だったあるボールゲームは、関東の企業チームの助力を得て出張所を県内にわざわざ設立してもらい、有力選手が転勤の形で参入、上位へ勝ちあがって、天皇杯獲得へ貢献した。

このようなケースは、その後、絶えることなく、その度に「普及面で絶大な効果がある」と、批判の風を受け流してきた。

効果をあげた好サンプルがないとは云わない。だが、それは極めて、まれだ。

40年近くの"実績"が地についていたなら、日本は、素晴らしい「スポーツ国」に成熟し、オリンピックやアジア大会のたびに、細々とメダルを数えることもなかった。

一流の施設も、一流の競技者も、一流の指導者も、地元の盛り上げも、国体本番をゴールにして、その先を見通していなかったツケが、あらゆる面で露われている。

何もこれは、国体に限ったことではない。日本のスポーツは"長期戦略""将来展望"のプランニングが、下手なのだ。

中・高校3年、大学は4年という枠組みの学校スポーツが活動の中心となり、しかも、1年ごとに結果をとやかく問う風潮。いつしか、スポーツ全般の設計にも"その場"主義がしみついてしまったのだ。

大会の瞬間だけ熱く通り過ぎれば、という歴代国体開催地の姿勢が、ナンバーワンの競技会でもなく、祭りでもなく、ローカルの催しにしてしまった。スポーツ界側に「それでよし」とするムードがあったのも情けない。

高知国体の結果がどうあれ、スポーツ界が国体の存在を見つめなおし、現実に即して目覚めなければ、マスコミは「皮肉な注目」をこの先、幾度となく繰り返すだけだろう。

何とか、国体の再生、新生の道を探り出したいのだが―。

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◇人類愛とサッカー 〜岡田武史さんの場合〜
(岡崎 満義/ジャーナリスト)

10月15日に、'98年W杯サッカー日本代表監督の岡田武史さんと、早稲田大学で同級生だったレスリング五輪メダリストの太田章さんの対談を聞いた。気のおけない友人同士のトークショーは、まさに花も実もある内容充実した2時間だった。(日本スポーツ学会の「スポーツを語り合う会」)

中心はもちろんサッカー、それも日本代表やコンサドーレ札幌の内幕がフランクに語られ、オフレコの秘話満載、聞きごたえがあった。それは勝手に公開できないので、話の中でサッカー周辺の話題を2つ紹介しておきたい。

【その1】
岡田さんは大学生時代に恩師の堀江先生が「自分は人類愛のために学問している」と言ったことがずっと頭にあって、自分が関わっているサッカーも、人類愛につながらないだろうか、と考えてきた、という。

ローマクラブの地球環境や資源に対する警告の書を読んでから、地球環境の問題は最大の関心事の1つになったようだ。

太田章さんによれば「彼の環境問題へののめりこみ方はなまじのものではない。最近もヨハネスブルクで開かれた環境サミットへ、自腹を切って参加したほどだ」とのこと。

岡田さんは、「危機的状況にある地球環境を少しでもいい方向にもっていくには、日本人も今のライフスタイルを変えなければならないのではないか。Jリーグはライフスタイルを変える拠点になりうる、と確信している。Jリーグを成功させなければならない意味はそこにある。そして、Jリーグ発展のためには、日本代表が強くなって、どんどんW杯で勝つ必要がある」というのだ。

サッカーが環境問題につながることを、これだけ明快に発言した人を、少なくとも私は岡田さんのほかに知らない。こういう人がスポーツ界の中に現れてきたのは、まことに喜ばしいことだ。

【その2】
スポーツ報道がどんどん芸能化していくことをどう思いますか、と私は質問した。

岡田さんもそのことを強く危惧している一人だと言った。そして、「体育という明治以来の、どこか神聖視されるものと、芸能の間にはさまっているのが日本のスポーツ。テレビはそのスポーツをどんどん芸能の方に押しやっている」とも言う。

体育とは何か、スポーツとは何か、をしっかり考えないと、スポーツは文化だ、と言えば言うほど、スポーツは芸能化していくように思える。

スポーツの芸能化を進めるディレクターの言い分としては、「例えば、モーニング娘。がバレーボールの会場に来て、応援団的レポーターの役目を果たせば、モー娘。を見に来た少女たちの何人かが、バレーボールの面白さをはじめて知ることだってある」というのを聞いたことがある。ファンの新規開拓、というわけだ。

「そんなやり方から、真のスポーツファンは生まれるはずがない」と、岡田さんははっきり言い切った。

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◇日本人プロの実力は落ちたのか
〜ゴルフ・日本オープンにスメイルが愛妻のアドバイスで初優勝〜

(早瀬利之/作家)

今年の日本オープンは2日目、コース内に倒木があったり、3日目には親切にも教えたピンポジションの位置が間違っていたり、また最終日はテレビリポーター(元日本オープン優勝)がトンマなことをやって、選手がワンペナルティをとられたりと、パプニングだらけの大会だった。

日本オープンは日本一伝統のあるナショナルオープン。全英オープン・全米オープンに次ぐ伝統のあるオープントーナメント。この大会で優勝することで他のトーナメントへの出場資格が与えられる意味でも、最も評価の高いイベントである。

優勝したのはニュージーランド出身プロのデビット・スメイルで2位の選手に4打差をつけて、初優勝した。2年間日本ツアーに出て初めての優勝で、いきなり日本一の選手になった。

スメイルの奥さんは日本女子ツアーで1勝したことのあるシェリーさん。この人はパットの名人。高麗グリーンやベントグリーンのクセを見抜き、夫のデビットにアドバイスしている。

キャディのジョン・ベネットもプロゴルファー。プロ3人が協力して日本オープンに勝ったわけで、その意味では、勝つべくして勝ったようなものだった。

しかし、それにしても日本人選手は弱くなった。上位に入ったのは予選界から資格をとって出場した中川勝弥と桑原克典、尾崎将司だった。2位は韓国出身プロの金鐘徳。初日62(−8)を出してトップに立った佐藤信人は最終日72(+2)とくずれて5位タイに終った。

アマでは宮里優作(東北福祉大4年)がプロ顔負けの2オーバーで18位タイに入り、2年連続ローアマに輝いた。

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