10月15日に、'98年W杯サッカー日本代表監督の岡田武史さんと、早稲田大学で同級生だったレスリング五輪メダリストの太田章さんの対談を聞いた。気のおけない友人同士のトークショーは、まさに花も実もある内容充実した2時間だった。(日本スポーツ学会の「スポーツを語り合う会」) 中心はもちろんサッカー、それも日本代表やコンサドーレ札幌の内幕がフランクに語られ、オフレコの秘話満載、聞きごたえがあった。それは勝手に公開できないので、話の中でサッカー周辺の話題を2つ紹介しておきたい。 【その1】
岡田さんは大学生時代に恩師の堀江先生が「自分は人類愛のために学問している」と言ったことがずっと頭にあって、自分が関わっているサッカーも、人類愛につながらないだろうか、と考えてきた、という。 ローマクラブの地球環境や資源に対する警告の書を読んでから、地球環境の問題は最大の関心事の1つになったようだ。 太田章さんによれば「彼の環境問題へののめりこみ方はなまじのものではない。最近もヨハネスブルクで開かれた環境サミットへ、自腹を切って参加したほどだ」とのこと。 岡田さんは、「危機的状況にある地球環境を少しでもいい方向にもっていくには、日本人も今のライフスタイルを変えなければならないのではないか。Jリーグはライフスタイルを変える拠点になりうる、と確信している。Jリーグを成功させなければならない意味はそこにある。そして、Jリーグ発展のためには、日本代表が強くなって、どんどんW杯で勝つ必要がある」というのだ。 サッカーが環境問題につながることを、これだけ明快に発言した人を、少なくとも私は岡田さんのほかに知らない。こういう人がスポーツ界の中に現れてきたのは、まことに喜ばしいことだ。 【その2】
スポーツ報道がどんどん芸能化していくことをどう思いますか、と私は質問した。 岡田さんもそのことを強く危惧している一人だと言った。そして、「体育という明治以来の、どこか神聖視されるものと、芸能の間にはさまっているのが日本のスポーツ。テレビはそのスポーツをどんどん芸能の方に押しやっている」とも言う。 体育とは何か、スポーツとは何か、をしっかり考えないと、スポーツは文化だ、と言えば言うほど、スポーツは芸能化していくように思える。 スポーツの芸能化を進めるディレクターの言い分としては、「例えば、モーニング娘。がバレーボールの会場に来て、応援団的レポーターの役目を果たせば、モー娘。を見に来た少女たちの何人かが、バレーボールの面白さをはじめて知ることだってある」というのを聞いたことがある。ファンの新規開拓、というわけだ。 「そんなやり方から、真のスポーツファンは生まれるはずがない」と、岡田さんははっきり言い切った。 |