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100号記念メッセージ

■vol.124 (2002年12月4日発行)

【杉山 茂】さまざまな"騒ぎ"も先送りに 〜オリンピック競技除外問題〜
【谷口源太郎】自己改革できないIOCの体質
【早瀬利之】日本プロゴルフ協会の新役員に期待するもの


◇さまざまな"騒ぎ"も先送りに 
〜オリンピック競技除外問題〜

(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

ベースボールなどの夏季オリンピック「除外問題」は、かなり以前から「早くても2012年…」と、有力関係筋に聞いていたので、国際オリンピック委員会(IOC)総会〜11月29日・メキシコシティ〜が、この問題を2004年のアテネオリンピック以降の総会へ先送りしたことを、私は不思議とは思わなかった。"予想されていた範囲"のできごとだった。

だが、現実は、そのような悠長なものではなかったようだ。

「早くても…」の1つの"根拠"は、オリンピック憲章第52条1-1-3で、「競技がオリンピック競技大会のプログラムに加えられる承認は当該オリンピック競技大会の少なくとも7年前までとし、以後、この変更は認めないものとする」(訳・日本オリンピック委員会)にあった。

ところが、この「7年」は、競技の「追加」を指し、「除外」には適用されない、と法的に判断されていたのだ。北京大会(2008年)からの除外は、ありえることだったのである。

メキシコシティで、ベースボールやソフトボールの存続のため飛び廻っていた人たちと私は、11月30日に東京で話す機会があったが、「総会で投票になれば、間違いなく存続の支持を得られただろう」と、先送りを悔しがる声が多かった。周到な働きかけで確かな手応えがあったのだろう。「早くても…」の楽観をハナから信じていなかったものか…。

ジャック・ロゲ会長(ベルギー、1942年5月生まれ)が、コトを急ぎすぎたとは思わないし、この問題が表面化した時から、「競技団体の反発は当然おこる。しかし、やらねば…」との決意は、たのもしさを感じさせた。

しかし、11月に入って、理事会を通り越し、いきなり総会(今回の有効投票数は117と発表されていた)での決着に持ち込もうとするなど、各スポーツの"死活"をかける問題にしては、強引な面を覗かせすぎた。

その面でも「早くても2012年…」が、私は妥当だったような気がする。

先送りした落ち着きのなさは、この後、ベースボール、ソフトボール、近代五種、縮小の対象とされた各種目の関係団体による存続運動が、激しさを増すことを予想させる。ほかのスポーツも構えを固め直しはじめるだろう。

更に、ベースボールなどが削減された場合に限り、来年の総会で加入を審議することになっていたラグビー、ゴルフ、武術太極拳の3競技が「縁のなかった話」で済ませるとも思えない。

さまざまな"騒ぎ"も、その度合いを深めて先送りされる、ことになる―。

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◇自己改革できないIOCの体質
(谷口源太郎/スポーツジャーナリスト)

11月末にメキシコで開催された、IOC(国際オリンピック委員会)総会は、大山鳴動して鼠一匹のたとえどうりの結果に終わった。サマランチ前会長の推進したオリンピック大会の肥大化にブレーキをかけ、スリム化へ舵を切り替えることで自らの存在をアピールするというロゲ会長の思惑は惨めにもはずれてしまった。

野球、女子ソフトボール、近代五種の3競技をオリンピック競技から除外する、というプログラム委員会の提案には、納得できる根拠が示されていた。それに対して、提案に反対する方は、既得権益を守るというだけで存続すべき根拠を示し得なかった。

既得権を守ろうという勢力がIOC委員たちを取り込むために必死でロビー外交を繰り広げた、と報じられた。なんとも浅ましい光景ではないか。IOCは、スポーツを通しての教育的価値や平和的価値の実現などを盛り込んだオリンピズムに基づく運動、という根本原則を忘れ去り、単なる利権集団に成り下がってしまった。

メディアもことの本質をとらえられず、単に賛否の渦に巻き込まれて現象を追うだけで終わってしまった、という印象だった。たとえば、IOC総会で賛否両論による議論がなされたのはかつてないことで、民主化への兆しが見えた、といったようなメディアの評価もあった。IOCの非民主的な体質の裏には委員たちの利害打算があり、今回の議論も単に利害が衝突したにすぎない。それを「議論したから民主化だ」などと勘違いしてしまうメディアの資質の低さには愕然としてしまう。

今さら言うまでもないことだが、もともと世界的に見て限られた地域にしか普及していない野球や女子ソフトボールをオリンピック種目に加えたことに問題があった。その他にも同様の問題を抱えた競技はかなりある。オリンピック大会をスリム化するためには、そうした競技もどんどん除外すべきである。また、長い歴史があるとはいえ、もはや競技人口が極端に限られた近代五種を除外するのは当然であろう。

とは言っても、いったん正式種目に加えられた競技が削減されることは今後もないだろう。IOCには、自己改革する理念も能力もないのだから。理想を掲げたオリンピック運動はとっくの昔に終焉しており、今やテレビ主導のスポーツ・スペクタクルでしかなくなった。テレビ中継に適し、視聴率を稼ぐ競技に重点が置かれ、テレビ中継に合わせて競技スケジュールや競技ルールまで決められる。更に、テレビ中継の時間の長短で国際競技連盟への分配金が決められる。

もし、競技削減があり得るとしたらテレビが「いらない」と判断し、一切中継しなくなる時であろう。

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◇日本プロゴルフ協会の新役員に期待するもの
(早瀬利之/作家)

日本プロゴルフ協会(PGA)の新役員が決まった。会長に長田力氏(福岡)、副会長に倉本昌弘氏(東京在住)、石井秀夫氏(東京在住)という三役である。

長田氏は福岡にいるため、事実上の活動の中心は、倉本昌弘氏といわれる。今後は、彼が中心になって、PGAをまとめ、スポンサーへの広報活動に走り回ることになる。

倉本氏はPGAからゴルフツアー部門を切り離した一人というより、主役だった。PGAはこのために2つに分断され、新しくトーナメントセクションである日本ツアー機構(JGTO)が設立され、トーナメント運営の権利をPGAから取り上げた。

こう書くと、切り離した張本人が、今さらなぜPGAの副会長になったのだ?という素朴な疑問をもたれる人が少なくない。古巣に戻ったわけだから、JGTOの会員たちからは裏切りだ、という声も聞いた。

ところが、倉本構想は、不況下のツアーを、何とか元のPGAの下に置き、独立運営において、日本プロゴルフ界を一本化しようというものであると聞く。

もともと、JGTOの切り離しは、選手たちのPGAからの拘束への反発から起きた。

ツアーで戦う選手たちに対して、PGAの会員(約3,000人)の発言が強く、総会においてはPGA会員の決定に従う、という辛い事情があった。そこには、選手たちの会である選手会が強く反発したが、同じPGA総会の決定には従わざるを得ないため、ツアーで骨身を削って戦う選手たちには不満の声が高まっていた。

そこに、PGAからの独立運営ということで、別法人であるJGTOがスタートし、PGAの干渉を振り払った。

そこまではいいが、逆風が吹く中で、PGAとJGTOとの対立、いがみ合いは根強く、スポンサー離れは年々増えていった。聞くところでは、2003年も5試合がなくなるといわれる。

これではツアーで生活する選手たちの多くが失業状態になりかねない。そこで、「やはりPGAは一本化すべきだ」との声が持ち上がった。

しかし、互いに血を流した者は、「覆水盆に返らず」で、簡単には合流できない。

倉本氏らの新体制は、その点、融合できる環境にある。

PGAの一本化に向けて、どういうビジョンを打ち出すのか、新構想を打ち上げる必要がある。できれば、PGAツアーに一本化し、同時に運営は独立したまま、という状況が生まれるのかどうか。

全てアメリカ流のやり方がベストとはいえない。日本の文化に合った新しい構造と手段を見せてほしい。

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