国が打ち出した国立大学の統合及び独立法人化が静かに、しかし、粛々と進められている。 中でも、教員養成を目的とした教育学部は少子化時代を迎え、資格を取得しても教員採用無し、特に体育専修は就職先に事欠き、フリーターも多いと言われており、地方国立大学レベルは統合されるようだ。 人間を物に例える事は些か気が引けるが、供給過剰、つまり、市場の変化への対応の遅れ、需要が減少しているのに、依然として量産体制を維持した為の在庫過剰と言える。消費財ならば廃棄処分、在庫処分で済むだろう、しかし、人間であるから物扱いは出来ない。 よって、当事者である学生は勿論のこと、学資を投資した保護者、税金を負担する納税者は大いに頭を悩ますのである。向学心に燃え、教師を目指す若者の夢が無残にも粉々に砕け散るのである。 戦後から高度成長期まで、教育学部体育専攻者は教員や企業スポーツ部を中心に安定的な就職先を確保し、一般的には恵まれていたと言えよう。 しかし、先に述べた少子化による教員採用激減、長引く経済不況から、企業スポーツ廃部等、一転して厳しい現実に直面している。その間、学科の廃止、ニーズに合った学科新設等に一切対策を講じて来なかったことも加わり、今や事態は相当に深刻である。 このままでは、明日を担う子供たちのスポーツ指導、教育水準が低下することとなり、スポーツに打ち込み、世界で戦える競技力を身に付けるべき選手が、身分不安定を理由に就職に有利な学科へ進む事など、スポーツ振興、競技力向上にもマイナス要素が多い。 しかし、既得権を主張し、手をこまねいている大学が多い中で、このような冬の時代においても積極的にニーズを先取りし、新たな活路を見出している地方大学もある。 スポーツ振興基本計画を見事に読み切り、大学を動かし、地域におけるスポーツのシンクタンクとして地方自治体の健康増進、スポーツ振興のパートナーを目指しているのである。彼らは社会的背景を読み取り、積極的に動いており、頼もしい限りである。 都道府県に設置される広域スポーツセンター、市町村に誕生する総合型地域スポーツクラブの育成や普及にはこのような大学からの人材が不可欠であろう。 今は未だ小さな芽であるが5年後、10年後には大きく成長することを期待したい。 |