自治体が所有管理するスポーツ施設が今軋みをあげている。収入に対する支出が大幅超過、過大な赤字を生むからである。 90年代から、世界規模の国際競技大会を開催する為、国際規格の大規模競技施設が各地に誕生した。W杯開催自治体である、北から札幌、宮城、新潟、さいたま、横浜、静岡、長居(大阪)、大分などである。 専門家によれば殆どの施設が支出を1とすると、収入は0.3程度で大幅赤字決算であり、その支出は、巨大スタジアムの横浜、宮城各6億、静岡、長居各4億(何れも単年度、関係団体調べ)という状況にあるという。 その理由としては、まず、収入を度外視した建設、運営コストの為、支出に見合う収入が確保されていないこと。そして、公共施設利用に際して、幾つもの使用料減免措置が適用され、低料金で使用されるケースが多く、民間が営利目的にて使用するイベント(音楽コンサート、プロ格闘技大会など)でのみ、通常料金が適用されることなど、コスト無視の運営であることが挙げられる。 その結果、累積赤字が嵩み、税金が投入、補填されるのである。多くの市民は一度も利用したことのない施設の維持、管理の為に税の負担を強いられているのだ。 現在、地方自治法では公共施設管理は自治体若しくは自治体などが出資する第三セクターに限定されている。しかし、何十年に一回しか開催されないような国際大会の為に建設された巨大施設の維持、管理を自治体、三セクが効率的に運営できるであろうか?最初から諦めているのが実情だ。親方日の丸に長年慣れ親しんできた組織が、経営感覚を持ち、努力する土壌がないのである。 悲鳴をあげる自治体の現状に対し、総務省では民間委託が出来るよう、地方自治法改正に向け準備中である。首都東京では鈴木都政時代に巨大な箱物を建設したが、軒並み年間5億から10億の赤字という有様で、石原知事は非効率施設の閉鎖や、日本初のネーミングライツ(施設に冠企業名を付けること)を導入(東京スタジアムは味の素が冠企業契約した)するなど、大改革を断行中である。 また、特殊法人が運営する国立競技場においては、2年後の独立行政法人化を目途に、民間企業に委託するための検討に着手したが、スポーツのメッカである国立競技場でさえ、支出に対する収入比率は4割と推定されている。 先ごろ国立競技場のホームページを見て驚いた。民間企業の決算諸表(商法上、上場企業に義務付けら決算諸表の公開)以上に精密な経営分析資料が開示されているのである。これらの数字を精査しても、結果的にコスト無視の経営であることが随所に見られた。 さて、自治体経営の改善が今漸く始まったが、スポーツ、文化施設とて例外でない。パブリックサービスに名を借りた放漫経営のツケは全て納税者が負う事になるのだ。 民間企業委託と簡単に言うが、果たして利益が出ない事業を受託する企業が存在するであろうか?多くの市民が日常利用するスポーツジムやプールは、経営モデルが出来ているので、名乗りをあげる企業も多いと推測されるが、巨大スタジアムのような施設は容易ではない。 企業は生き残りを賭け、ひたすら利益指向に走っており、放漫経営の尻拭いをするほど甘くは無い筈、むしろ、自治体自らスクラップアンドビルトなどの自助努力を行うことが問題解決の道筋を示すことになるのではなかろうか? |