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vol.193(2004年3月24日発行)

【杉山 茂】ヨーロッパのオリンピック放送権入札に
【早瀬利之】男子ツアープロたちよ、感情をむき出して全力で戦え
【佐藤次郎】スポーツの原点を忘れまい
【高田実彦】パ・
リーグ潰し
【角田麻子】パラリンピック出場をかけた、シビアな競技姿勢

vol.192 2004年3月17日号「アテネオリンピック、マラソン代表・・・」
vol.191 2004年3月10日号「ナガシマ・・・」
vol.190 2004年3月3日号「チャンピョンは全国リーグで・・・」
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ヨーロッパのオリンピック放送権入札に
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 国際オリンピック委員会(IOC)は、これまでヨーロッパ地域のオリンピック放送権といえば、まっさきに各国の主として公共放送機構から成るヨーロッパ放送連合(EBU、1950年設立、本格的な放送業務の開始は54年)と交渉するのが“慣習”であった。というより、ほかの選択肢はゼロに等しかった。

 ところが、2010年のバンクーバー(カナダ)冬季と、12年夏季両大会のヨーロッパ放送権の交渉は、いっさいをオープンにして入札で決めることを明らかにした。画期的といえる。

 いまのところ、EBUの反応を入手できていないが、冷静に受け止めているとされ、事前に、この動きを察知していたようでもある。

 12年夏季の開催地は来年7月、シンガポールでのIOC総会で決まるが、早くから本命とされていたニューヨークが、このところのアメリカをめぐる国際情勢の風向きで、予断を許さなくなった。名乗りをあげているヨーロッパのパリ、マドリード、モスクワ、ライプチヒ(ドイツ)などが意欲的だ。

 そのタイミングでの放送権オープン。IOCはこれまでのようなヨーロッパ一括にこだわらず、単独の国内でも複数国の連合でも、入札の交渉に応じるとしているが、4月末の期限までに、どのような顔ぶれが手をあげるか、興味深い。

 ワールドカップサッカーでは、96年に2002年と06年の2大会放送権を世界の公共放送連合と複数のエージェントの激しい争いの末、スイス・ドイツの企業連合が握っている(その後、このグループは経営破たんしてしまったが…)。

 オリンピックも同様の展開にならないとは云い切れない。

 仮に、ヨーロッパの放送権が国別、あるいは、いくつかのグループに分かれるようだと、日本の民放・NHK合体による「ジャパンコンソーシアム(JC)」方式が揺さぶられかねない。

 以前から、IOCは、日本国内各局の競り合いに持ち込めないかと、水面下で動いていたものだ。

 各局のスクラムが固い、というより、1局ではとうてい買い切れない額だけにJCは乱れない。

 放送権料だけでアテネオリンピックは1億5500万ドル、08年の北京オリンピックは1億8000万ドル。12年は2億ドルラインを越えるだろう。

 プラスされる制作諸費を考えれば、JC方式が日本のオリンピック放送を守る道、といえる。

 80年代、採算を見込んでアジア大会の放送権を握りかけた国内のエージェントがあった。成功すればオリンピックも、の狙いが含まれていたが、各局との交渉は不調、断念せざるを得なかったことがある。

 時代は確かに動き、変わっている。放送・通信の境も薄れ、ヨーロッパの決着しだいでは、今後の日本放送界のオリンピックをめぐる動きに何らかの影響を与えよう。注目していたい。

 なお、10年冬季と12年夏季のアメリカにおける放送権は、NBCがあわせて22億ドルの巨額ですでに合意に達している。

男子ツアープロたちよ、感情をむき出して全力で戦え
(早瀬 利之/作家)

 男子のプロゴルフツアーが始まる。

 今年の開幕戦は、三重県の「東建多度CC・名古屋」というコースでの東建ホームメイドカップ。12月の日本シリーズまでの30試合である。

 かつて40試合あった男子トーナメント界は、スター不足から人気が衰え、ついにはスポンサーが撤退した試合もあった。もっともイーヤマという冠スポンサー名がついた頃からおかしかった。冠とはその名の如く、輝くものでなくてはならない。錆びついた鉄の冠では見栄えもなく、人は振り向いてくれない。

 イーヤマを引きつれて5年間15億円というスポンサー契約をして、PGAから日本ツアー機構という任意団体をつくった頃から、何ともウサン臭いものを感じた。これがトヨタとかサントリーという知名度の高い企業が冠につくなら理解できるが、コンピューターのパーツ会社と知って、ショックを受けた一人である。

 当時、冠会社を連れてきた人たちは去っていったが、冠は歓迎される。これからは、知名度の高い会社が冠につくように、全選手は感情をムキ出して、全力で戦って欲しい。感動を与えずしてプロではない。サングラスで心の眼を隠すようではプロではない。不快感を与えるプロは、去っていくことだ。

 しかし勝負の心は、自然に生まれる。かつて青木功や、ジャンボ尾崎、杉本英世、河野高明たちは、心をのせてパットした。必死に戦う姿はガッツポーズに現れている。喜び、悔しさ、無念の涙は、遠慮なく出すが良い。

 そこには、生活をかけたプロの心が読めるからだ。選手諸君全員に、今年は全力で戦うことをお願いする。

スポーツの原点を忘れまい
(佐藤 次郎/スポーツライター)

 女子マラソンのアテネ五輪代表選考をめぐる騒ぎは、そうしたものを長年取材してきている身にも驚きの連続だった。なぜ、あれほどの大騒ぎになるのか。スポーツとはこのように取り扱うべきものなのか。社会全体や市民生活に直結する天下の一大事のごとき扱いは、かえってひいきの引き倒しになりかねないとさえ思える。選手たちにとっても迷惑な話であろう。
 
 一連の状況を見ていて、ふと連想したのは、テレビやラジオのスポーツ中継のアナウンサーの絶叫である。最近は、どんな状況でもひたすらオーバーに表現するのがスポーツ中継の特徴のようだ。今回の騒動は、なんでもかんでも大騒ぎにしないではすまない近年の社会の風潮をそのまま映し出しているようにも見えた。
 
 スポーツはスポーツである。それを、スタジアムやグラウンドを離れたところで重大な社会問題のように扱っては、スポーツの本質をそこないかねない。確かに、たくさんの人々が関心を持っているだろうし、論点の多い問題でもあったが、これほど沸騰させてしまっては冷静な議論もできまい。
 
 ところで、この騒ぎの核心である。高橋尚子選手を選ぶべきだったかどうかという論議に関しては、各メディアを見るところ、賛否半々といったところのようだ。いずれにしろ、どちらを選択しようと強い異論が出ただろう。高橋選手の存在はそれほどに大きかった。陸連にとって、これはまさしく難問だったに違いない。
 
 ただ、今回のケースに限らず、関係者が常に心に置いておくべきことがひとつあると思う。前にもこの欄で触れたが、もう一度言っておこう。
 
 「オリンピックは選手のためにある」「スポーツは何よりもまず選手個々人のためにある」。このことである。
 
 今回もいろいろな意見や論が登場したが、どうも気にかかるのは「日本がメダルを取るために」とか「世界で戦うためには」といった主張が目立つことだ。五輪の場で世界各国の強豪と競って、日本の陸上界にメダルをもたらすには、どのような選手が望ましいのかという趣旨である。これは確かに大事なことに違いないが、とはいえ、まず最初に「日本がメダルを取るために」という発想が来るのはどんなものだろうか。
 
 また「日本人の夢のために」といったような表現もあった。これもどうかと思う。主体はあくまで選手であって、陸上界全体やそれを取り巻くファンたちではない。
 
 スポーツは、何よりもまず選手たちのためのものである。メダル獲得もファンの夢も大事だが、それもこれもまずは選手のことを考えてからではないのか。
 
 代表選考も、あくまで選手ひとりひとりのために進められていくべきだろう。それぞれの選手がどう頑張ったのか。選ばれるにふさわしいパフォーマンスをやり遂げたのは誰だったのか。そのように個々の選手を主体として考えていけば、結論はおのずと出てくる。そこに最初から「メダルを取るため」だとか「陸上界のため」だとか「ファンの夢のため」だとかといった観点を入れることはない。
 
 まずメダルありきではない。選手ひとりひとりの頑張りや思いを大事にしていけばいい。それがスポーツというものの原点ではないか。

パ・リーグ潰し
(高田 実彦/スポーツジャーナリスト)

 近く大リーグのヤンキースとデビルベイズがやってきて04年の開幕戦(30、31日)を行う。その前に巨人と阪神のオープン戦をやる。

 これ自体は野球ファンには結構なことなのだが、その裏側には「パ・リーグ潰し」の意図が見えるような気がするのだ。誰の意図かといえば、巨人である。

 パ・リーグは27日に開幕するが、その開幕シーズンに来日両チームが巨人と阪神とオープン戦と、大リーグの開幕戦をぶつけているのだ。これはよほどのパ・ファン以外はパの試合に目をやらないだろう。

 パ・リーグが開幕をセより1週間早くしたのは、その間だけでもファンの関心を一身に集めたいと思ったからだ。その1週間のアドバンテージを殺すように大リーグが加わったのだ。

 この大リーグの開幕戦開催を、情報通は「いよいよ大リーグの日本マーケット侵略が始まった証」という。そういう意図もあるだろう。

 しかし今回の大リーグ開幕戦は、巨人・渡辺恒雄オーナーのたっての要請で実現したものである。

 ヤンキースのスタインブレナーオーナーがいっている。「何を好きこのんで17時間もかけて開幕戦をやりに日本へ行くものか。巨人の渡辺オーナーの強い要請があったから行くまでだ」

 巨人の狙いは、同系の東京ドームが日本ハムの札幌移転によって空いているのを埋めるイベントとして考えたのだろう。もちろん松井がいる現時点のヤンキースの日本興行は最高である。その意味では商売上手だ。

 しかし、その結果、日本の業界仲間であるパ・リーグを踏みつけることをいとわなかったということだ。いや、パ・リーグを業界の仲間と考えていなかったどころか、潰してしまえと考えているフシが感じられる。

 その傍証ともいえる発言をしているのが、阪神の久万俊二郎オーナーである。

 久万オーナーはこういった。「日本の職業野球は1リーグ制で始まって上手くいっていた。非難を恐れずにいえば、今はファンの数と球団数のバランスが崩れている。8から10球団くらいが適正な姿かな」

 去年の観客動員数で一人勝ちした阪神のオーナーが自球団の台所を心配して、また、いっちゃ悪いが、あの人が球界全体の将来を心配して語ったとは思えない。

 語るに落ちたとはこのことだ。巨人が考えている「パを失くして1リーグ制」に阪神が賛成していることを暴露してしまった。久万オーナーがその密約・極秘をポロッと漏らしてしまったのではなかろうか。

 1リーグ制にするのもいいだろう。しかし1リーグ制にするのなら、広く一般のファンの意見も聞いた上でやるべきだろう。

 大リーグの試合があること自体もとても結構なことである。しかし、パ・リーグが「何とか生き延びよう」と張り切っている鼻先にわざわざ“松井秀喜のヤンキース”をぶら下げて妨害することはないだろう。

 巨人のやり方はエゲツなく、また汚い。

パラリンピック出場をかけた、シビアな競技姿勢
(角田 麻子/ライター)

 いよいよアテネオリンピック開催まで半年をきり、同時に、パラリンピックの開催も近づいているわけで、パラリンピックの選手たちも、出場へ向けた予選や世界選手権が山場を迎えている。

 そんな中、前回のシドニーパラリンピックから正式種目となり、今度のアテネでは日本が初出場できる可能性のある種目に「ウィルチェアーラグビー」がある。

 ウィルチェアーラグビーとは、文字通り車椅子ラグビー。このスポーツは1977年にカナダで考案され、現在ではカナダ、アメリカ、オーストラリアといった国が世界ランキングの上位国にある。

 日本がパラリンピックで強豪国と「対等に戦うため」として、日本ウィルチェアーラグビー連盟がこの2月に日本代表選手を集め、メダル獲得経験のあるアメリカやベルギーのコーチを歴任し、現在ウィルチェアラグビー・オーストラリア・ナショナルチームのヘッドコーチでもある、テリー・ビニャード氏を招聘したクリニックが開催された。

 ビニャード氏の指導の根底にあるのはすべて「相手の弱点をつく」もしくは「相手の有利さをなくす」と言うこと。これは通常のスポーツでは当たり前のことなのだが、「障害者スポーツ」というものを、「障害者」のイメージ先行で考えると卑怯な気さえしてしまう。

 しかしビニャード氏は車椅子の選手たち相手に「相手が腕にも軽い麻痺があれば、ボールを正面には投げることができても横にはうまく投げられないはずだ。相手選手の投げられない方向をすぐに見抜け」。「接戦の中で障害が軽い選手が反則を犯した場合、自分がやったのではなくても障害が重くスピードのない選手は、チームに動きの早い選手を残すために、いかにも自分がやったかのように審判の判断をまどわそうとするくらいは、頭に浮かべろ」。

 車椅子でプレーする選手たちの障害レベルは本当にさまざまで、障害の重さによって決められたチームポイントの合計内でプレーする選手を選ぶ規定が設けられている。ビニャード氏の指導は、そうした相手の障害の重ささえも堂々と「弱点」ととらえていた。

 そんなことを言ったら選手は傷つくのではないか…。しかし考えてみたら野球などは、露骨に選手の役割や特性の優劣を明確化しており、そもそもそうした選手の特性の組み合わせで成り立つのがチームスポーツだ。

 スポーツにおいて「平等」はない。ただ「公平さ」だけが求められる。それは障害者が行うスポーツでも同じであるというというのが当たり前の姿勢なのだ。

 すでにプロで活躍する障害者アスリートが存在する欧米では、パラリンピックが「障害者が障害を乗り越えて」参加するレベルから、いかに勝って「メダル」を取るかにシフトしている。シドニー大会でスペインの知的障害者バスケットチームに、障害のない選手もチームにもぐりこませて問題になったり、オリンピックと同様のドーピング検査が実施され、ドーピングで失格となったりする選手が出るなどからしても、オリンピックと同様の「勝つ」ために起きる問題が生じていることでもわかる。

 しかし、日本ではまだパラリンピックは、障害者が「障害を乗り越えてがんばって」やっているスポーツ大会という、同情と感動の視線でしか報道されない。

 選手たちが、プレーの中でシビアに自分たちの変えようのない障害と向き合い、上を目指しているのである。

 そろそろメディアも、選手のレベルについていくべきではないだろうか−。



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