例年2月はスポーツ用品の見本市で賑わいを見せる季節である。海外ではザ・スーパーショー(ラスベガス)、PGAショー(オーランド)、ISPO(ミュンヘン)などの定番見本市が例年通り盛大に開催された。 世界のトップブランドは勿論のこと、メジャーブランドに成り上がろうという新興ブランドが所狭しと商品展示し、バイヤーを待ち受けていて活気に満ち溢れ、国内はもとより世界中から、多くのバイヤー、生産・PR関係者、スキー場、ゴルフ場、スポーツ施設、団体、大会主催者、マスコミなど多数が詰めかけ、情報の受発信が行われる。 さて、世界で2番目のスポーツ用品マーケットと呼ばれて久しい日本はどうか? 恒例の東京スポーツビジネスショー(卸商組合主催)、ゴルフフェア(ゴルフ用品協会主催)、他にX−TRAIL(スノーボード協会主催)などが東京ビックサイト(お台場)で同期日開催される中、これらの目玉であるスポーツ・ジャパンはとうとう休止に追い込まれた。 主催者である(社)スポーツ産業団体連合会(JSIF)では、外部専門家を加えた検討委員会を設け、規模の縮小、運営方式変更など、継続開催に向け画策したが、理事会での議論、検討までには至らず、中止の止む無きに至り、折角の委員会答申は凍結されたままのようだ。 デフレ・スパイラルの日本経済下、一部の「見る」スポーツ市場を除き、スポーツ・レジャー市場も縮小に次ぐ縮小で見る影も無い有様、生活不安の中でスポーツどころではないといった風潮すら感じる。 そのような状況下では経済原則が優先され、赤字が見込まれるのに継続する理由は無いというのも当然であろう。ましてや面子など論外である。 しかし、本当に市場は無いのだろうか? いや、潜在市場も含めれば2兆円を優に超す規模なのだ。 では、何故見本市は成立しないのであろうか? 通説的に言われる理由として商慣習がある。つまり、欧米との大きな相違点は日本特有の複雑で長い流通経路(輸入、製造→代理店→卸→地方卸→小売店)にあるとされている。 小売店の多くはシーズン毎に自分の目で商品を検討し、顧客に何を売れば最大利益を上げられるのかを考えて仕入れ、販売計画を立てている。これをマーチャンダイジング(MD)と呼ぶ。 しかし、国内に約1万2千店(推定)あるといわれている小売店のうち、自主的なマーチャンダイジングが出来ているのは、その2割程度と推定される。全国展開の大規模チェーン店や競技用品専門店(プロショップ)を除き、殆どの零細小売店は仕入れ計画を卸業者に任せてしまうのである。つまり、彼らは自分で見本市へ出向き、仕入れ計画を立て、それを売り切ることを放棄しているのである。これではお金を掛け、見本市で展示ブース設け商談する必要が無い。 他方、メーカー側は、有力バイヤーを個々に集め、商品見本と取引条件を示して契約し、生産計画に反映すれば済む。その他の零細小売店向けについては問屋に任せるだけで、効率的、経済的である。 但し、自社で商談会が出来るメーカー、代理店ばかりではないのもまた事実であり、見本市でバイヤーの目に留まり、商談に結び付けたい業者も多い。実はここに将来の成長商品が出番を待っている。これらの目を摘んでしまうことは大きい損失である。 欧米でも同様に巨大ブランドばかりではなく、大部分は個人零細業者である。日本で欧米並みの見本市が定着しないのは商慣習という非関税障壁が大きく立ちはだかっていることは既定の事実ではあるが、それを理由に手をこまねいていると、変化する市場をリードし、スポーツ参加率を高めるような市場創造活力は生まれてこない。 経済原則の優先は理解できるが、目先の判断で将来の市場創造努力を怠れば、自らの首を絞める結果は明らかだ。 ここはスポーツ関係業界が団結し、経済産業省、文部科学省、厚生労働省、スポーツ団体、マスコミなどと連携して、生涯スポーツ社会へのリード役を果たすよう努力して欲しい。 |