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vol.204(2004年6月16日発行)

【杉山 茂】ワールドマスターズゲームズ招致失敗
【高田実彦】近鉄を潰したのは巨人の渡辺オーナーではないのか
【岡崎満義】イチローのコメントの深さ
【今城力夫】女性が強くなった日本オリンピック選手団

筆者プロフィール

vol.203 2004年6月 9日号「福士加代子の・・・」
vol.202 2004年6月 2日号「FIFAが、WADAが・・・」
vol.201 2004年5月26日号「五輪野球の暗雲・・・」
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ワールドマスターズゲームズ招致失敗
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 滋賀県による2009年の第7回ワールドマスターズゲームズ招致が不成功に終わった。
 
 19年前、61ヶ国8000人の参加で始まった中高年による国際総合スポーツ大会は、当初の不安を吹き飛ばし、4年ごとの開催のたびにふくらみ、前回、2002年10月メルボルン(オーストラリア)市を中心とする第5回大会には97カ国26000人が集まっている。

 日本でも日本体育協会による「日本スポーツマスターズ」や、中高年を対象としたスポーツイベントが盛んになり、滋賀県の名乗りあげは、タイミングがよく、初のアジア開催で有利、と思われた。

 ところが、6月14日エドモントン(カナダ)で開かれた国際マスターズゲームズ協会(IMGA、1995年設立)の理事会で、シドニー(オーストラリア)、コペンハーゲン(デンマーク)、滋賀県の候補3都市の中からシドニーが選ばれたものだ。

 この大会は、IMGAに対して開催権利金納入が必要で現行130万ドルが09年から200万ドルに引き上げられた。

 滋賀県は金額の据え置きを望み“差額”の70万ドル分はスポンサー収入の一部をあてるなどとしていたが、充分な理解を得られなかったようだ。県当局は次回以降に立候補の予定は今のところ無いとしている。

 権利金額をすんなり受け入れなかったのは落選の一因かもしれないが、滋賀県の熱気に比べて、外部の関心が低く、時代にあったこの大会をぜひ日本で、というムードが盛り上がらなかったのも気になっていた。

 立候補の動きどころか「ワールドマスターズゲームズって何?」という声を、スポーツ関係者の中からさえ聞いたほどだ。

 グローバルなイベントに、日本人(スポーツ界)は、すっかり慣れてしまったせいか、よほどでなければ“挙国的”なパワーを集められないのが昨今である。こういうことに外国のスポーツ関係者は敏感だ。

 2008年を目指していた「大阪オリンピック」でも、私は国内の熱の低さを感じた。 今回も、地元のエネルギーは「県内の経済効果60億円」などといった文言が躍るばかりで、スポーツ側のアピールが少ない印象を受けていた。

 地元財政の厳しさ、優先すべき社会課題の前にさらされると「スポーツ」は弱い。「スポーツ界」はもろい。気合が入るのは関係業界ばかりだ。

 これでは、いつまで経っても、コマーシャリズムに裏打ちされ、テレビ界の目にとまるイベント以外は、日本を会場とすることができなくなる。

 「開催が実現されなかった残念さより、県内の一般的な空気は、どこかホッとしたものがある」とは、滋賀県に住む友人からの“速報”だ―。

近鉄を潰したのは巨人の渡辺オーナーではないのか
高田 実彦/スポーツジャーナリスト)

 プロ野球の近鉄とオリックスが合併することになったが、近鉄の足を引っ張り続けていたのが巨人の渡辺恒雄オーナーだった。以下は、ここに至るまでの経緯と球界の内部での観測と私が感じた“点と線”だ。

 私は、去年の秋に巨人が発表した大リーグの日本開幕戦の日程を見てびっくりした。

 パ・リーグの開幕戦ともろにぶつかっていたからだ。松井凱旋の大リーグ初の日本での開幕戦がパ・リーグの開幕とかち合っている奇怪さ!私は東京中日スポーツのコラム「プロ野球プラスワン」(火曜日に掲載)で、「これはパ・リーグ潰しではないのか」と書いた。

 というのは、日本での開幕戦は大リーグ側の希望で実現したのでは無いからだ。ヤンキースのスタインブレーナーオーナーは「読売の渡辺オーナーの強い要請で日本へ行くまでだ。何を好んで17時間かけて地球の裏側へ行って開幕戦をやりたいものか」と語っているのだ。

 パ・リーグの開幕戦とぶつかることについて、一応、パ側に承諾は求めただろう。しかし、“松井凱旋”を誰が拒否できるか。球界の天皇の立場を背景にしたやり方である。

 今春、近鉄が苦し紛れに球団名を売る「ネーミングライツ」を言い出した。真っ向から反対したのが渡辺オーナーだった。これについても私はコラム「プラスワン」で書いて同オーナーを批判した。

 その前年に、近鉄がオーナー会議で「消費者金融会社に身売りしたい」といって承諾を求めたとき、大反対したのが渡辺オーナーで、「サラ金やパチンコ屋や外国のハゲタカに日本の球団を渡してなるものか」といった。パチンコ業界や外資系の会社の本格的な参入にもダメを出したのだ。

 さらにその前にパ・リーグ側が「セパの交流戦」を持ちかけたときにも、「自分たちが経営努力しないで、他人のふんどしで稼ごうというのはムシがよすぎる」といって、パ側の頼みをけっ飛ばしている。

 その逆に、率先して金のかかる自由獲得ワクをつくり、拡大して、経営難の球団を追い詰めていった。FA選手を次々に獲って“金満経営”を見せびらかした。

 ことほどさように渡辺オーナーは、ことごとく近鉄や経営難の球団の行く手に立ちふさがってきたのだ。同オーナーの言うことに一理があるといえば、ある。しかしいまプロ野球を一緒にやっている仲間を運命共同体と考えて、何らかの対策や代案を出したかというと、何も出していない。

 私はこういう専横ぶりを、やはり「プラスワン」で批判した。

 渡辺オーナーはプロ野球界を運命共同体とは考えていないのだ。むしろ、「やっていけないところは潰れればいいんだ。それが自由競争というものだ」と考えているのだろう。

 近鉄とオリックスの合併話が明らかになると、スポーツ新聞が一斉に「次はダイエーとロッテが合併する」と書きたてた。球界内部で、近い将来の話、として囁かれているからだ。

 渡辺オーナーは他人が言い出した1リーグ制には反対だが、巨人の人気が低落の一途をたどり始めた数年前から、1リーグ制にして人気挽回をはかりたい気持ちでいたのだろう。そこで、「死滅する球団が出てきて仕方なく1リーグになる」という形をとって1リーグにしたい、と考えていたとしか思えない。

 2リーグ制はプロ野球生みの親・読売新聞社の故正力松太郎社主がプロ野球発展のためにつくった制度である。だから、これを自分の手を汚して潰したという“汚点”を残したくないがために、経営弱体の球団の足を引っ張って死滅するのを待っていた、それがたまたま近鉄だった、ということになりそうなのである。

イチローのコメントの深さ
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 6月4日、巨人の清原和博選手が神宮球場のヤクルト戦で、みごと2000本安打を達成した。31人目だった。プロ野球に入って19年、2141試合目での達成は、3番目に遅いペースだが、何はともあれ立派な記録で、おめでたいことだ。

 長嶋茂雄さんをはじめ、いろんな人がお祝いコメントを出している。その中でもっとも目をひいたのは、海の向こうから届いたイチロー選手のものだった。「日刊スポーツ」に短いコメントが載っていた。

 「2000本という表に出ている結果よりも、4000とか5000とか、数字は分からないですけど、多くの失敗を繰り返してきたと思います。その数だけ悔しさがあったと思いますし、それに対して共感します」

 たしかに、清原の打数(6月4日現在)は7244だから、5000以上の“失敗”があることになる。2000回の成功よりも、5000回以上の失敗に目が向き、それに共感するところが、今後、4割打者が出るとすればイチローではないか、といわれるイチローらしいところだと思った。

 イチローのマスコミに対する接し方は、ときとして取りつくシマもないような、無愛想なところがあって、マスコミ泣かせといわれることがある。松井秀喜がどんなに調子の悪いときでも、記者会見では丁寧にコメントするのとは大違いだ。

 それでもイチローのインタビューは、どんなものでもおもしろい。それは、イチローにはいつも正確な深い自己省察とでもいうべきものがあるからだ、と思っていたが、こんどの清原2000本安打コメントを読んで、もうひとつ特徴があると思った。

 2000回の成功があれば、5000回以上の失敗がある、ということを反射的に認識できるのだ。

 正と反、表と裏、陽と陰、遠心力と求心力、タテとヨコ、明と暗、光と影、プラスとマイナス…に自然に目が届くのだ。ある現象の全体像を瞬時に把握して、カンどころを表現できるのである。ふたつの焦点をもつ楕円形の視点、という感じだ。だから、コメントにふくらみがある。深さがある。

 目に見えている部分(2000本安打)を、言葉でもう一度なぞるのではなくて、見えていない部分、見過ごしてしまう部分(5000回以上の凡打)に、強い意識の光をあてている。そこがスゴイ。

 5000回以上の失敗の悔しさに共感する、とズバリ言い切っているところに、イチローの凄みを感じるのである。

 言葉の滲透度、透明度がすごい、といおうか。ものごとのすみずみにまで透明な光が反射されて、見る人の能力次第で、どこまでも見透かすことができる感じなのだ。

 清原だって、イチローのコメントを大いに喜んだはずである。自分で見えなかったところが、クッキリ見えたのではないか。それにしても、こういう野球選手を毎日のようにテレビで見られるのは、ほんとうにありがたい。

女性が強くなった日本オリンピック選手団
今城 力夫/フォトジャーナリスト)

 日本人として国際オリンピック委員会(IOC)の役員をされている岡野俊一郎氏を日本外国特派員協会にお招きして昼食会(6月16日)を開いた。

 当然目前に控えるアテネ・オリンピックへ向かう日本選手団についてお話を伺ったわけだが、非常に興味深く、またユニークなお話の部分をご紹介したいと思います。

 言うに及ばず今回の選手団の人数は過去最大となることは間違いないが、この最大の理由は女性が強くなったからとのことであった。選手団の男女の数も今回初めて女性が男性の数を上回るようだ。

 未だ最終決定の数字ではないが、6月16日現在で女性と男性の決定済み選手数を比較すると、男性選手135名に対して女性選手163名で、これから決定される陸上競技の選手などを加えても、女性選手が男性選手の数を超えることは間違いない、そうだ。

 今回初めて女性ドクターが本部役員の中に一人加わることになっているが、それも女性選手の数の多さからなされたとのことだ。

 女性選手の数の多さにはもう一つ次のような理由がある。それはチームスポーツが今回日本から男女合わせて7チーム参加するが、そのうち何と5チームが女性のチームで、その内訳はソフトボール、バレーボール、バスケットボール、ホッケー、それにフットボール(サッカー)である。

 男性の2チームはベースボールとフットボールだ。これだけ多くの女性チームの参加は、当然女性選手数に大きく貢献しているのは事実だろう。

 岡野氏は現在政治の世界でもご活躍の元女子オリンピック選手にあるパーティでお会いになり、女性選手の強さの秘訣を尋ねたそうだ。何と「日本の女子チームを引っ張っているのは男よ」との答えが返ってきたそうだ。

 女子は日本の男子を相手に試合やトレーニングをして強くなる。男子は外国のもっと強い選手やチームを相手にトレーニングをしないと強くならない、との説明だ。

 一方岡野氏の友人は最近韓国ドラマ「冬のソナタ」の主役が日本女性の人気の的だが、彼はハンサムのみに非ず非常に優しい。

 日本女性は優しい男を好むので、それに引きずられて最近の日本男性は優しくなりすぎている。これでは勝てない、との意見だったそうだ。

 そう簡単なことでもないだろうが、何となく思い当たる節がないでもない。

 


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