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vol.210(2004年7月28日発行)

【杉山 茂】「ツール」6連覇の神業・アームストロング
【岡崎満義】プロ野球選手の“出ごと”のすすめ

【岡 邦行】25年目にして美酒

筆者プロフィール

vol.209 2004年7月21日号「プロスイマー時代・・・」
vol.208 2004年7月14日号「ドーピング、全米陸上・・・」
vol.207 2004年6月7月7日号「日本プロ野球・・・」
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「ツール」6連覇の神業・アームストロング
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 期待通りパリ・シャンゼリゼの表彰台に上がったのは英雄ランス・アームストロング(アメリカ、32歳)だった(7月25日)。

 7月4日、リェージュ(ベルギー)をスタートした今年(第91回)の「ツール・ド・フランス」は史上初となる彼の6連覇成るか、が最大の焦点だった。

 この過酷なレースは1回勝つだけでも、いや、1ステージ(区間)でトップを切るだけでも “偉業”とされ 祝福と賞讃に囲まれる。6年連続の総合優勝は“神業”と言えるものだ。

 レースは1903年に始まったが、6回優勝というのもアームストロングが初めてである。2004年の世界最高スポーツ選手の栄誉を、なんとか彼の頭上に輝かせたい。

 王者、名手、スターを語るとき、劇的な人生はつきものだが、アームストロングほど波乱にとんだストーリーの“主役”はなかなか居ない。

 トライアスロンの選手を経て自転車のロードレーサーに転向、21歳の1993年、世界選手権(プロの部)で初優勝 ヨーロッパ勢にショックを与えた。さらに、表彰式に現れた女性を誰もが“年上の恋人”と思ったが、実は17歳違いの母親であった。実力とこのエピソードでアームストロングの名は一気に広まった。

 2年後の「ツール・ド・フランス」でチームの1人がコース上で激突死、アームストロングは、直後のステージで鬼神のような爆走を見せて優勝、空に向かって吠えながら人差指を突き出しゴールインした姿は、またまた、彼の存在を強くアピールするものとなった。

 96年、プロの参加が解禁となったアトランタ・オリンピック個人ロードレース(221.85q)は金メダルを確信する観衆で17周のコースは熱気に包まれたが、トップに1分31秒遅れの12位、失望の声に包まれた。その直後、癌の宣告を受け、多くのファンは今度は悲痛の叫びをあげる。

 当時の外電によると、病状は悪化し、いちじは頭部にまで転移したと伝えられ、競技生活の続行は絶望視された。

 その苦境から再起し98年にレースへ復帰、99年の「ツール・ド・フランス」で、今回の快挙の出発となる初優勝を遂げたのだ。世界中のメディアが「奇跡の勝利」と報じたのはこの時である。

 今年のレースは、序盤の好位置から第15ステージ以降3ステージ連続1位で“神業”の達成を揺るぎなくした。

 アテネ・オリンピックには、アメリカ代表に選ばれながら「子どもたちとの時間を第一にしたい」との理由で辞退する意向だ。

 シドニー・オリンピック(239.4q)も1位と1分29秒遅れの13位で退いているだけに、アテネでの不屈の力走を見てみたかったが、彼はこれまで息つく間もなく戦い続けてきた。

 「ツール・ド・フランス」7連覇の夢に挑み、彼の信条である『強く生きよう〜Live Strong〜』が、来年も多くの人々を勇気づけてくれることを考えれば、オリンピックへの参加を無理強いはできない。

 自転車競技ファンの思いは、アテネを越えて、もう次の「ツール」に飛んでいるのではなかろうか―。

プロ野球選手の“出ごと”のすすめ
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 先日、大分県由布院温泉に行った。料理研究家・辰巳芳子さんと亀の井別荘主人、というより、由布院町おこしのリーダーとして全国に名の知れた中谷健太郎さんとの対談の仕事だった。

 その中で中谷さんの言葉が印象的だった。「由布院では昔から、“出ごと・家ごと・仕ごと”と言います。家ごと、仕ごとはふつうに使われている通りの意味。出ごとに特別の意味があります。お寺さんに行ったり、川掃除に出たり、山林の根払いをやったり、要するに由布院という共同体が成り立つための、男もおんなも同等に参加する共同作業なんです」

 主婦も狭い家の中に閉じこもらず、また男もワーカホリック的仕事だけでなく、外に出て共同作業をすることで、コミュニケーションをはかり、ムラの生活を維持する、と言うシステムである。この3つの「こと」をバランスをとって生きていく仕組みである。

 プロ野球選手会の方針もあるのだろうが、合併に合意している近鉄、オリックスをはじめ、横浜、中日、ヤクルトなども選手が球場の外に出て、署名活動を始めた。1リーグか2リーグかを性急に決めないで、選手やファンの声もよく聞いた上で、1年かけて研究しよう、という署名活動である。

 選手たちの“出ごと”が始まった、と思った。プロ野球界というムラ社会の中で、長老たち(球団代表やオーナーたち)だけの一存で1リーグか2リーグかという大問題があっさり決められてしまってはたまらない、という抗議の気持ちも含めた“出ごと”でもある。

 プロ野球は公共財である、と野球協約の中に書かれている。それを認めている以上、その公共性をみんなで大事にしていくのが筋である。多分、これまで長老たちも選手たちも、この公共性ということを本気で考えたことはなかっただろうと思う。

 グラウンドで力一杯のプレーをし、熱戦をくりひろげるのはプロ野球繁栄の必要条件だが、1リーグか2リーグかという大問題に直面している今は、それだけでは十分条件ではない。十分条件のためには、今や“出ごと”が必要だ。選手の1人1人がいろんなスタイルの、ストライキも見据えた“出ごと”、葉書作戦やデモ行進…などをやってみる時期かもしれない。アテネ・オリンピックの野球のある期間など1週間ばかり試合を中断して、“出ごと”週間にしてみたらどうだろう。

 長老たちと選手たちのティーチインをやって、プロ野球は公共財であることをお互いに確認した上で、1リーグか2リーグかを討論してもらいたい。

 渡辺恒雄・巨人オーナーも「たかが選手」などといわずに、「一寸の虫にも五分の魂」の気持ちで、選手たちと話をしてもらいたい。

25年目にして美酒
岡 邦行/ルポライター)

「岡ちゃん、ありがとう!ホント、自分自身をホメてあげたいよ。プロ入り25年目にしてツアー競技初優勝だもんな。よく踏ん張ったと思うだろう、岡ちゃんよお」
 
 受話器から聞こえる声は震えていた……。
 
 私の好きなプロゴルファーの一人である佐野修一さんに久しぶりに電話をした。

 お祝いのためだ。

 先日行われたシニアツアーの今季第3戦PGAフィランスロピーリボーネストシニアオープンで佐野さんは、実にプロ入り25年目、56歳にしてツアー競技初優勝を飾ったのだ。
 
 佐野さんと私の付き合いは丸11年目を迎えている。11年前、ジャンボ軍団の取材の際に軍団の一人である佐野さんにも話を聞いた。

 埼玉県児玉郡の自宅を訪ねると「俺みたいな軍団の末席にいる超ニ流プロの話も聞きたいために自宅まで来てくれるのかよ」といって、あたたかく迎えてくれた。以来の付き合いだ。

「……岡ちゃんさ、俺はジャンボにさんざん怒られたことがある。ジャンボがいうんだ。『俺はゴルフをやるために生まれてきた。しかし、佐野はなんとなくゴルフをやるためにうまれてきたんじゃないか』って。だから、俺はいったよ。『冗談じゃない。俺の職業はトーナメントプロだ!』ってね。たしかに俺は、レギュラーツアーに挑戦していた時代は賞金獲得額ゼロのシーズンも多かったしね。ジャンボがいうのもわかる。しかし、岡ちゃんさ、俺には俺なりの意地もあるじゃないの?」

「うん、ある。佐野さんは、なんたって元自衛隊員だもん。プライドがある」

「また自衛隊の時代の話をさせたいのかよ。ま、自衛隊員でも銀行員でもいいけど、第一対戦車部隊に配属されてね。富士山麓をうろついていた。銃剣道3段で徒手格闘技指導員の免許も持っている。そういったプライドはあるよね。でもさ、岡ちゃん、調子の悪いときは思うよ。格闘技の場合は、瞬間の勝負じゃないの。その点、ゴルフはインターバルが長い。つくづく俺はゴルファーには向いていないんじゃないかと。そう考えたこともあったよねえ……」
 
 こんな調子で佐野さんは、自宅を訪ねる私にゴルフ人生を語ってくれた。
 
 そんな佐野さんは、7年前に念願のシード選手になった。出場年齢制限50歳まで、主に若手プロ育成に設けられたグローイングツアー全14戦に出場。獲得賞金ランク2位になり、プロ入り19年目、49歳7ヵ月にして初シード権を掌中にしたのだ。久しぶりに自宅を訪ねた私を佐野さんは、芳子夫人と3人の子どもたちと出迎えてくれた。家族とともに喜ぶ佐野さんの笑顔が印象的だった。
 
 昨年の9月。佐野さんの自宅を訪ねた。

「岡ちゃんさ、7年前に俺が初シード権を獲得したときはめいっぱいからかってくれたよな。シニア入り直前にしてのシード権獲得はマンガみたいだ、って。でも、特上のネタをありがとう、といって取材してくれた。嬉しかったよ。今回はネタを提供することはできないけど、近いうちに超のつく特上のネタを用意しておくからさ。約束するよ。そのときは、また佐野んちにきてくれよ……」
 
 あれから10ヵ月。プロ入り25年目、56歳の佐野さんは、ついにツアー競技を制した。私は、特上のネタを味わいに佐野さんちを訪ねることにしよう。 

 


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