デビスカップのアジア・オセアニアゾーンで、日本が圧倒的な強みを見せた、といっても、同ゾーン1部で辛くも勝ち残ったに過ぎない(4月4、5日)。
2月の本戦(1回戦)では、インドに退けられ、桧舞台のワールドグループ入れ替え戦への道を今年も絶たれている。 オールドファンにしてみれば、今回のポジションくらいで勝っても、といったところだが、スポーツは、いちど転がり落ち始めたらブレーキをかけにくい。「上」を狙えるランクに踏みとどまれたのは、ひとまずよかったということだ。
日本のテニス(男子)の低迷には、さまざまな敗因が、指摘されてきた。 選手の海外キャリアが少ない、フルタイム環境が整っていない、ジュニア強化の方針が見えない、コーチングスタッフの不安定…などだ。
日本テニス協会は、そうした声を浴びながら、地道に問題解決に取り組んできていた。個々の結果は、かなり上がった部分もあるが、伝統の看板イベント、デビスカップにおける躍進になかなか、つながらない。
「いまの選手はチーム戦(団体戦)への取り組み方が甘い」という新たな敗因が浮上して、もう10年以上は経っているだろう。 テニスは「個人」重視のスポーツであり、それは、どの国も同じだ。
チームで戦う、というハートが、日本選手に欠けてしまったのは強化組織に弱点があるのではないか。 コーチたちは「どのような状況下、条件下でも“ニッポンテニス”のために勝とうとするスピリッツに乏しい」と首をかしげるが、デビスカップ戦の前に、心構えを突然説いても身につくものではない。
テニスに限らず最近の日本選手や日本チームは、自分の立っている状況への意識が低い。 トップゾーンで活躍する競技者は、そのスポーツの“伝道役”でもあるのだ。代表選手(チーム)はつねに素晴らしい試合を見せる義務がある。
今回の試合(対パキスタン)を観た人たちは、一様に「いつもこのような試合ができれば」と言っているそうだ。 相変わらずの甘い台詞(せりふ)に聞こえる。
デビスカップの重みと誇りと国内愛好者の期待を、選手たちに教えこむのも強化の一端だろう。 桜吹雪に彩られながら、満員の田園コロシアム(現在廃止)を沸かせたデビスカップ上位戦の風景は、ファンの前にもう甦らないのだろうか−。 |