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ベルリンマラソン2004
渋井陽子(優勝)
ベルリン/ドイツ

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vol.219(2004年9月29日発行)

【杉山 茂】トップリーグ賑わす外国勢の「力」
【佐藤次郎】レースはレースらしく
【松原 明】プロ野球の大改革を
【岡崎満義】プロ野球の戦後民主主義2世たち



SPORTS ADVANTAGE EXPRESS 2004アテネパラリンピックレポート 最終回

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vol.218 2004年9月29日号「あの明るさを・・・」
vol.217 2004年9月22日号「ラグビーの・・・」
vol.216 2004年9月 8日号「ちょっと気になる・・・」
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トップリーグ賑わす外国勢の「力」
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 2年目の幕を開けたラグビー・トップリーグが面白い。期待どおりだ。

 まだ第2節が終わったばかり(9月26日)だが、例年は、シーズンが深まらなければ、完成度の高い内容に触れられなかったが今年は早々と火花を散らしている。歴史の長い学生界は、強豪校、有力校の顔合わせが終盤に組み込まれ、9,10月はどうしても緊迫感に欠ける。見る側はそうした流れに慣れてしまった。トップリーグは違う、違わなければおかしい。どうやらそうしたムードになってきた。これで半年近いシーズンをハナからたっぷり味わえる。各チームに散る外国人選手の室が高いのも見ごたえを増している。

 ところで、ボールゲーム(国内リーグ)での外国人選手の参加は、永遠のテーマといってよい。

 彼(彼女)らの多くは、そのスポーツの“本場”育ち、“本場”仕込み、だ。ワールドクラスの実力者も、盛んに来日している。

 Jリーグの初期は、世界のビッグネームによる輝きが、その人気の一端となった。

 アイスホッケー、バスケットボール、バレーボール、女子ソフトボールなど、トップレベルのテクニック、パワーがファンを会場へ誘ったが、一方で、外国人依存のポジションは国際レベルの日本人選手が育たない、というマイナスも生んだ。

 アイスホッケーでは攻撃の要(かなめ)となるセンターを旧ソ連やカナダ勢に頼り、女子バスケットボールは、アメリカ女子選手の長身を活かした“空中戦”が展開の軸となった。それはそれで“見る”楽しみが充分にあったのだが、日本代表の強化という点で、問題がのぞいたのである。

 アテネ・オリンピックに女子バスケットボールは久々の参加を果たしたが、関係者は日本リーグにおける外国人選手規制を“勝因”の1つにあげていたものだ。

 企業活動縮小のあおりで、外国人選手の加入を見送るケースも目に付く。

 男子ハンドボールは、オリンピックの金メダリスト、世界選手権優勝メンバーなどで賑っていたが、今シーズンは総てヨーロッパへ引き揚げてしまった。

 実力ある外国人選手の持つ“華(はな)”は、国内リーグに欠かせぬファクターだ。その参加を支持したい。

 トップリーグの各チームは、これまで以上に外国勢の力を巧く活かして、見応えのある試合をつづけている。これで、日本の力が引き上げられれば、ファンも増え、メディアも振りかえり、2011年のワールドカップ日本招致も現実味をおびてくるー。

レースはレースらしく
佐藤 次郎/スポーツライター)

 26日のベルリンマラソンを見て「ちょっとおかしい」と感じたスポーツファンは少なくあるまい。渋井陽子選手の日本新記録は確かに素晴らしかったが、彼女の周りを3人のペースメーカー兼ガードランナーが固めていたのには、どうにも違和感があったのだ。
 
 できる限り条件を整えて究極の記録に挑んでもらうという趣旨はわかる。しかし、3人もの男性ランナーがペースをつくり、周りをガードしながらレースを進め、うち1人はゴールまで付き添うというのはいささか行き過ぎではないのか。あれはレースというよりタイムトライアルという感じだった。
 
 マラソンにもいろいろなタイプがあっていい。記録を狙うために有利な条件を整えるレースにも大いに意味がある。しかし、競技である以上、そこにはおのずと妥当な形というものがあるだろう。常識的に考えて▽レース全体に同性のペースメーカーをつける▽男女同時スタートは避ける−−といったあたりにとどめておくべきではないだろうか。
 
 高橋尚子選手が初めて2時間20分を切った時も同じような形だったと思う。記録への挑戦を売り物にするベルリンでは、有力ランナーが希望すればこの形をとることができるのだろう。他のレースにも同じケースがあるのかもしれない。だが、観戦者から言わせてもらえば、これにはどうしても違和感を禁じ得ない。自らの肉体だけを頼りに走り、投げ、跳ぶのが陸上競技であるのだから、個人的に手厚い便宜を受けて走るのはやはりおかしい。テレビ観戦していても、面白いマラソンを見たという感慨はまったくわかなかった。
 
 渋井選手も高橋選手も、あれがなくとも十分に2時間20分を切る力を持っているように見受ける。その方が彼女たちの充実感もより強いだろうし、見る側も感激するに違いない。主催者の狙いはわかるが、そのためにスポーツ本来の素晴らしさや、そこにある感動を薄めてはほしくない。そんなことではしだいにマラソン人気もさめてしまうかもしれない。
 
 それに近年のマラソンは、よりスピード化が進んで以前とはずいぶん違ってきている。スタートから積極的に速いペースに持ち込んで、そのまま押し切るというレーススタイルが、記録の大幅な進化を生んでいるのだ。牽制し合ってペースが上がらず、終盤の駆け引きだけで勝負がつくようなレースでは、せっかくのチャンスも逃げていく。そのことはことしの大阪国際女子マラソンで見せつけられた通りだ。
 
 日本のトップランナー、特に女子はみな力をつけている。おそれずに練習で培った力を最初から出していけば、誰もが好記録をマークできるだけのレベルにある。できれば国内のレースでは全体のペースメーカーもつけない方がいい。せっかくの力も、ペースメーカーに頼っていると、いざという時に出せなくなってしまうのだ。やはりレースはレースらしくあってほしい。選手側も思いは同じではないか。

プロ野球の大改革を
松原 明/東京中日スポーツ報道部)

 プロ野球選手会のストが中止され、来年も両リーグ6球団制度で進むことになった。だが、「プロ野球構造改革委員会」を設けて1年間を掛けてドラフト、年俸問題を審議する、というが、根本的な体質改造には全く
触れられていないのが不思議だ。

 昭和25年にセントラル、パシフィック両リーグに分裂してから、日本プロ野球は、コミッショナー事務局と両リーグの3権分立のまま、半世紀
を過ぎた。この3局を統一して、ビジネス・グループの機能的な体制にしない限り、今や、瀕死の状態にある、といってもいいプロ野球は立ち直れないのではないか。

 大リーグは、1999年9月15日、全30球団の総意で機構統一を決議、アメリカン、ナショナル両リーグ事務局を廃止し、コミッショナー
事務局にすべてを合体した。今の発展はこの統合決断にある。このきっかけは、前年に30球団に拡張されたが、1994年の長期ストから観客離れが続き、低迷が長い危機感から生まれたものだ。

 ナ・リーグは123年間、ア・リーグは98年間も続いた、大リーグを支えてきた事務局だったが、会長以下、職員は去り、現在は「クラブ・リレーション」の女性事務職(元副会長)が1人いるだけになり、すべての機能は、コミッショナーと、会長(COO)のコンビの下で運営されることになった。

 この画期的な統合には反対もあったが、「スポーツビジネスの団体にしないと発展がない」大胆な構想に賭けた大リーグの狙いは当たった。

 全権を委任された、バド・セリグ・コミッショナーと、右腕、ボブ・デュピーCOOは次々に改革案を打ち出し、2000年からの4年間で飛躍的に大リーグ全体の収入は増えた。

 全米テレビ放送の巨額契約に成功、この全球団に利益配分し、インター・リーグの拡大、3地区制度の採用、国際化、ホームページに会見、ラジオ、テレビ放送を加えてアクセスを増やしドル箱にした。

 高額年俸球団から税金を取り、マイナー球団へ配分するやり方で均衡化を計った。

 組合とはストなしで2006年まで労協を結び、平和にビジネス拡張を進めている。

 大リーグ全体の収益は4億1000万j(約451億円)にもなり、10年前の156%増。今は法律の番人が必要だった初代コミッショナーの時代ではない。スポーツビジネスに腕をふるうセリグをリーダーにした判断は正しかった。

 日本の現在の組織が旧態のままなら、今に大リーグに飲み込まれてしまうのではあるまいか。

プロ野球の戦後民主主義2世たち
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 今回のプロ野球選手会と経営者の対立抗争は、私の予想とはかなりかけ離れた結果となった。現時点(25・26日のスト回避決定)では、古田会長率いる選手会側の圧勝といっていいだろう。

 私は球界の巨人中心主義、巨人天動説の時代があと2〜3年つづくと思っていた。長時間インタビューしたことのある巨人前オーナーの渡辺恒雄氏のパワーと責任感が、あと3年位は10球団1リーグで持続すると考えていたからだ。コミッショナー、両リーグ会長、球団経営者の中に、渡辺恒雄氏以上のパワーと責任感を持った人がいないように思えた。3年たてば、それでも結局は混乱→崩壊→新生…となると思った。

 ところが「たかが選手」発言で事態は大きく変わった。「たかが」の言葉のあとに「されど」がつづくのが大人の常識である。渡辺氏の発言にも当然「たかが選手」のあとに、かたちはどうであれ「されど選手」があったはずだが、取材者の耳に聞こえなかったのか、とにかく表には現われなかった。取材する側も「たかが選手」という言葉をキャッチして、鬼の首をとったように、それにつづくフレーズを取材することは放棄したのであろう。かくして「たかが選手」という言葉がひとり歩きして、局面は大きく選手側に傾いた。「たかが選手」は「たかがファン」と新たに意味づけされ、「たかが庶民(国民)」とまで拡大解釈されかねない流れになった。

 もし、「たかが選手」「されど選手」の古田会長と「たかがオーナー」「されどオーナー」の渡辺氏の対決(話合いもふくめて)が実現していたら、今のプロ野球のあり方とその本質がみごとにあらわになっていただろうと少々残念な気もする。

 それにしても、記者会見する古田選手の終始落着いた態度に、大いに感心した。労働組合、団体交渉とストライキ…といった、今や死語となりつつある古典的な言葉に、なお生命力を吹き込んで甦らせた古田会長をリーダーとする選手会はみごとだった。一寸の虫にも五分の魂、だ。9月27日付朝日新聞読者投稿短歌欄に「スーツ似合わぬプロ野球選手が初陣の武士らしき眉でスト宣言す」(東京・相川雅信)という作品が載っていた。選手会がファンの共感を得た証だろう。

 50年ぐらい前の映画「第三の男」(キャロル・リード監督)の中で、麻薬密売人に扮したオーソン・ウェルズが大観覧車の中で「スイスの永久中立・平和国家は何を生んだ?ハト時計だけさ」と皮肉な口調で喋ったのが忘れられない。名場面だった。

 最近は「戦後民主主義は何を生んだ?」とおとしめられることが多い。私は「公僕・長嶋茂雄を生んだ。それで十分」と言ってきた。古田会長は長嶋さんの息子に当たるジュニア世代だ。これからは「戦後民主主義の2段ロケット目が古田だ」と、言ってもいいかもしれない。戦後民主主義2世が確認できた、と言おうか。

 新規参入球団が決まり、セパ各6球団体制が来年も続くとしたところで、プロ野球が直面している経営危機は今までと変わらない。古田会長以下の戦後民主主義2世たちの力と知恵を前面に押し出して、まさにプロ野球構造改革の第1歩を踏み出してもらいたい。大いに期待している。

 


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